味覚
「申し訳ありません。」
食事の後、書斎に戻ると、コムが急に謝罪の言葉をレオンハルトへと投げかけてきた。
「何の話だ?」
「まさか施術ミスがこういった形でクローズアップされるとは想定外でした。」
「ああ、味覚の話か。」
レオンハルトは何事もなかったかのように言う。
「あの時、俺は言ったはずだ。全ては仕方のないことだと。
命が再び与えられたことだけでも奇跡なのだとも、そう言ったはずだ。
だからこの件はもういい。済んだ話だ。」
執務机の椅子に座り、卓上の情報端末を起動する。
瞳に映像盤の光が照り返す。メモに目を通しつつ、端末を操作し、データを精査していくレオンハルト。
冷静に処理を行う彼に、コムはさらに言葉をかける。
「でも、もう少し我々が注意深くやっていれば、こういった事態は……。」
「コム!!」
力ない声を発するコムを、レオンハルトは怒鳴りつけた。
「もういいと言っている……。」
レオンハルトは、怒りと苛立ちを秘めた瞳をコムに向ける。
コムの瞳から光が消える。
張り詰めた空気をノックの音が破った。
「レオン、お客さんだよ。エレナさん。」
どことなく不機嫌そうな顔で、ミナトがエレナを連れて書斎の扉を開く。
エレナは明るい顔をして、いかにも楽しそうに軽く手を振っていた。




