レオンとミーナ
昼にはミナトの用意したサンドイッチが出てきた。
「なあ、ミナト。」
「ミーナ。」
「え?」
「ミーナでいいよ。その方が呼びやすいでしょ?」
「解った。なら俺もレオンでいい。」
「で、なに?」
「これはなんだ?」
改めてサンドイッチを手に取るレオンハルト。
挟んである具は、薄切りのチーズにハム、それに葉野菜。
見るからに美味しそうなハムサンドだ。
「傭兵部隊の時によく作ったんだ。手軽に食べられるし、簡単に作れるから重宝してるんだよ?
まあ、少しは目先だけでも変えてみたらどうかなって。」
「ああ……そういうことは考えもしなかったな……。」
手にしたハムサンドを口に運ぶレオンハルト。
シャクシャクと葉野菜の小気味良い咀嚼音が聞こえてきた。
「どう? やっぱり余計なお世話だった?」
心配そうに尋ねてくるミナトに、レオンハルトは答える。
「そうだな。たまには悪くないかもしれん。
だが、頻繁にされると少し気が滅入ってくるから、忘れたころにまた何か変わった物を頼む。」
「やっぱり、滅入っちゃうんだ……。」
「すまんな。そっちの好意は解るし大変ありがたい。
だが、どうしても自分の壊れた部分と向き合う形になって、辛くなってしまう。
俺も一応、人間……。」
レオンハルトはなぜか口ごもった。
瞳を閉じ、眉根を寄せて何かを考え始める。
「レオン?」
「……いや、何でもない。
とにかく、適度に変化をつけてくれると助かる。
ありがとう、ミーナ。」
ミナトに笑顔を贈るレオンハルト。だが、その笑顔は間違いなく作り笑いだったと、ミナトは感じていた。