黒衣の襲撃者
帝都外れの城壁近く、その茂みの裏に三人の男たちが集っていた。
皆同じ黒のロングコートを羽織っている。
そこにヒュウガがやってきた。
合計四人。真っ先に口を開いたのはヒュウガだ。
「スマンな。計画に狂いが生じた。」
「いえ、隊長のおかげで全員無事に脱出できたのは幸いです。」
先にいた三人の一人、金髪の美丈夫が答える。
「ですが、『時計塔の英雄』が相手とは厄介なことになりましたな。」
大柄な別の一人がボソリとつぶやく。
そのうつむいた顔を見て、ヒュウガが答えた。
「英雄がどうのと言う話は問題じゃねぇさ。
問題はヤツが絡んできたのが予想以上に早かったという点だ。
俺の計算では、この初手で任務を完了させる腹だった。
にも関わらずそれが失敗した……。
こいつぁ何か裏があるかもしれん。情報の出どころを探っちゃくれねぇか?」
「解りました。では諜報部に任せましょう。」
そう言うと、残る小柄な一人が茂みをかき分け駆けていった。
先につぶやいた大柄の男が怪訝そうに尋ねる。
「裏があるとは?」
「本来なら誰にも悟らせないはずの奇襲だった。
そいつが失敗したんだ。裏があるかも、と思わねぇか?」
「なるほど。」
しばらくして、再び茂みを揺らして伝令を買って出た人間が戻ってきた。
「諜報部に伝えるよう手配しました。
数日中には出どころがハッキリするかと。」
ヒュウガはその言葉に軽く頷くと、静かに口を開いた。
「よし。今日は散開だ。
諜報部の情報如何では襲撃計画の見直しも視野に入れる。
皆、お疲れだったな。」
そう言うと、ヒュウガは人懐っこい笑顔を見せた。
この笑顔で、その場の緊張が一気にほぐれた、そんな感じがあった。