闇の中
深夜、夜が白む頃。安宿のベッドでミナトがムクリと起き上がった。
「まただ……。」
彼女の頭の中で声が響いていた。
『許すな! 殺せ!』
トップレスの下着一枚という姿で、彼女はテーブルの前までやってきて、その上の水差しに手を伸ばす。
これまでは、その声を聞くたびに新たに怒りを燃やし、レオンハルトを憎むことができた。
だが、今は違う。
彼を憎む理由など何もない。
彼も巻き込まれ、必要以上に自らを責め苛み続けた、いわば被害者だ。
十年間、どうすればいいのか解らないまま、闇の迷宮の只中を彷徨い続けていたのだ。
彼を救いたい……そう思った。
だが、どうすればいいのかが解らない。
そんな懊悩が彼女の頭の中で渦巻いている。
グラスに水を注ぎ、ひと息に飲み干す。
心を落ち着かせ、彼女はベッドに腰かけた。
「まずは全力でぶつかろう。それで全部なかったことにして彼を許せばいい。
それが彼を救う道なら、もうあんなことは忘れてもいいじゃないか……。」
誰に言うでもなく、ポツリとつぶやくミナト。
夜が明ける。
朝日が窓から差し込んできた。
決闘の日まで残り二日。
ミナトもまた、苦悩の只中にいた。




