承諾
「レオン様! 果たし状ですよ、これ!?」
レオンハルトがミナトからの封書を受け取ったのは、その翌々日のことだった。
他の様々な手紙などの内容を見ながら、それぞれ分別していく作業中、まだ分別が行われていない、封を切っただけの手紙を見たコムが突然叫んだのだ。
そんな叫びを聞いたはずのレオンハルトは、静かに、そして鷹揚に、その手紙を取り上げた。
差出人はミナト・ライドウ。
内容は確かに果たし状だ。
『仇敵 レオンハルト・フォーゲル。
来る五月廿日午前五時、帝都リヒテンベルグ外れ、クラスの丘にて待つ。
此処で全ての決着をつける。
如何なる結果に相成ろうとも承知の上で来られたし。』
短い文ではあるが、知性を感じさせる美しい文字で記されている。
(意外だな。どうやら彼女、教養は高いらしい。)
うすぼんやりとそんなことを考えていると、コムが耳元で声を荒げてきた。
「受けるんですか!? 受けませんよね!?
警備隊に連絡して捕まえてもらいましょう!
今から行けばきっと動いてくれますよ!!」
「コム!!」
まくしたてるコムを窘めるように、レオンハルトは叫んだ。
「俺はこの決闘、受けるつもりだ。」
「え? ええっ!?」
レオンハルトの返答を受け、驚きの声を上げるコム。
「彼女の恨みは、適当に誤魔化して終わらせることはできんだろう。
だからこそ、こちらも全力で相手をせねばならん。
無論殺すつもりも、殺されるつもりもない。
必ず良い方向に結果を導き出す。」
真剣な表情でレオンハルトはコムに向けて言った。
その言葉を聞いたコムが心配そうな声を上げる。
「でも……それって根性論で何とかなるものなんですか?
向こうはあんな大きな斧を振り回す人ですよ?
本当に上手くいくんですか?」
「向こうには悪いが、戦えば必ず勝てる相手だ。
だが、今回は戦わずして勝たねばならない。」
「そんなの理屈が通じてないです……。」
「『活人拳』というものだ。
概念まで理解しろとは言わん。」
それだけ言うと、レオンハルトは、カレンダーを見た。
二十日まで、あと三日。
それまでにどうするのかを考えなければならない。