テロリズム
爆発音のあった場所へ、ミナトは駆け付けた。
爆発の衝撃にはかなりの人数が巻き込まれ、それぞれ怪我を負っている。
消火作業は消火隊が必死になって行なっているが、その周りの瓦礫の下には、まだ多くの人が残っている事だろう。
「できる事ないかい?」
火の回っていない場所での瓦礫を撤去することをミナトは願い出た。
やや大きなレンガの壁、漆喰の塊、絡み合ったパイプなどを、力自慢の彼女は次々と撤去していく。
額の汗をぬぐい、ふと視線を上げると、道の上で何かをしているレオンハルトを見つけた。
蒼い光が見える。どうやら魔法を使って、怪我人を治療しているようだ。
横たわっている人間に対し、次々に魔法を使っていくレオンハルト。
『治癒』の魔法は高位魔法の一つだ。そんなに連発できるわけじゃない……。
ミナトの頭の中にノイズが走った。
火災……怪我人……魔法……?
何かを忘れている……何かを思い出そうとしている……。
そんな感覚が彼女の頭の中で巡りまわる。
「姐さん、そろそろコッチは良いぜ。
具合悪けりゃ休みな。」
どこぞのゴロツキ風の男が、蒼白となったミナトの顔を怪訝そうに見ている。
彼女は無理に笑顔を作って、ふらりとその場を離れると、レオンハルトを取り囲む野次馬の中に紛れ込み、手近な人間にそっと尋ねた。
「あれは、なに?」
「知らねぇのかい? 偉い学術師の先生よ。
こう言ったヤバいことが起こると真っ先に駆けつけて、怪我人を治してくれるのさ。」
ミナトは、改めてレオンハルトの方を見た。
だが、その顔色は青白くなってきている。
魔法の使い過ぎなのは明白だ。
「先生、もう結構です……。」
その場にいた医師らしき人間がレオンハルトに声をかけた。
その声を聞き、彼は我に返ったような表情を見せる。
まだ処置をしていない人たちへと顔を向けた。
そこに横たわっていた人間たちは、皆一様に呼吸が止まっている。
「く……っ!!」
レオンハルトは何かをこらえようと、瞳を強く閉じ、歯を食いしばる。
「後の処置は我々が行います。
先生はお休みになってください。
魔法を乱発したのは、素人目でも解ります。」
それを聞いたレオンハルトは無念と悔恨が混ざった表情でため息をつく。
「では、お願いします……。」
喉から絞り出すような一言を残し、レオンハルトはその場から立ち去っていく。
ふらついた足元で向かっていったのは、彼の自宅とは別の方角であることを、ミナトは不思議に思った。




