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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第四章-『回路(サーキット)』
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直感

「コム。」


 夕暮れの書斎にて、レオンハルトはコムに向けて話しかけた。


「義手の『回路(サーキット)』は、やはり本格的に研究させてはくれないのか?」


「ダメです。『遺跡の意思』が禁じていますので。」


「やはり、な……。」


 レオンハルトの義手、その手の甲には、大ぶりの『回路』が埋め込まれている。


 昼、研究室であったエレナとのやり取り。その時に気付いたのだ。

 ミナトの大斧に埋め込まれた『回路』、それに匹敵する物を自分も持っていたことに。


 能力そのものがどれほどの物かはよく解らない上に、使うことができたのは一度きり。それでも遜色がないのは疑いない。


 この『回路』は義手と共に持ち帰ったものだが、全く研究できていない。


 使用には、コムによる制限解除が必要だと『遺跡』は言っていた。

 だが、その制限解除が行われたのは、デモンストレーションとしてのただの一回のみとなっている。

 なぜ制限が必要なのかという問いに対しては、コムが短く答えてくれた。


「あの『回路』は危険すぎますから。」


「解っている。」


 レオンハルトとて一流の研究者だ。

『回路』の能力(ちから)も、危険性も、重々承知している。


 恐らく『遺跡』も、その危険性を知っているからこそ、制限を加えてレオンハルトにこの義手を与えたのだろう。


「コム……お前は、あの大斧の『回路』に心当たりはないか?」


「あの『回路』からの波動パターンは、合致する記録が存在しています。」


「何だと!?」


 レオンハルトは冗談のつもりでしかなかった。

 だが『瓢箪から駒』。まさかの返答がコムから返ってきたのだ。


「あの『回路』は大出力エネルギー発生用の汎用型です。

 主に大型の建機や兵器など、出力と同時に信頼性が要求される機械に導入するタイプですね。」


「成程な……彼女は魔力の変換に不慣れだった。

 それにも関わらず、あそこまでの『神速』が扱えたのは、供給する魔力を『回路』で大きくブーストさせたからということか。」


「恐らくは、そういうことかと思います。」


「その『回路』は汎用型と言ったな?」


「はい。『回路』の作りとしては非常に簡素なものです。

 純粋なエネルギー抽出、それだけのものです。」


「だが、出力は大きい。」


「その通りです。」


 レオンハルトは考える。

 この『回路』は、大型の建機や兵器に使用されていたという。


 大型の……兵器!


 レオンハルトの頭の中を、閃きが走った。


 まさか! まさか!? まさか!!


「ツェッペンドルンの遺跡か……!!」


「どうしたんです? 顔色悪いですよ?」


 レオンハルトは大股で書斎の出口に向かう。

 ハンガーにかけた上着をひっ掴み、勢いよく袖に腕を通した。


「コム。今から朝まで留守にする。

 ミランダの婆さんが来たら、食事は不要だと伝えてくれ。」


「え? ええ。でも今から朝までなんて、どこへ行くんです?」


「彼女と俺の原点だ。もう一度検め直さねばならん。」


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