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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第四章-『回路(サーキット)』
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レポート

 翌日、エレナがレオンハルトの研究室に紙束をもって現れた。

 何かのレポートのようだ。


「これ。頼まれた情報収集の結果。」


「ああ、彼女の件か。」


「そう、結構な戦歴よ。」


 パラリ、と紙をめくり、目を通していくレオンハルト。

 その様子を確認しつつ、エレナは補足的に解説していく。


「『アルコスの殿』の一人、牡牛のミーナと言えば、その業界では泣く子も黙るネームバリューのようね。

 元々はツェッペンドルンの村に住んでいたけど、あの件で孤児に。

 そこを帝国騎士のオスカー・グリムって言う人に引き取られたらしいわ。

 あの斧はそのオスカーって言う騎士の形見みたい。」


 レオンハルトはレポートから目を逸らし、眉根を寄せて考える。


「帝国騎士か……。」


「心当たりは?」


「ないな。

 だが、褒賞か何かで『回路』が与えられるのはあり得る話だ。」


 エレナはレオンハルトの顔を見て、言う。


「どうする? そのオスカーって人も調べる?」


「いや、それは不要だ。

 ここまで解れば、あの『回路』の出どころは十分掴める。

 それより、彼女の身辺に魔法使いはいなかったか?」


 レポートを素早くめくりつつ質問を投げかけるレオンハルト。

 その目が、情報を記したページにたどり着いたのを確認して、エレナが答えた。


「いたわ。彼女の所属していた傭兵団に一人。

 魔導士、と呼ぶには少しばかり力不足だったけど、なかなか一流どころだったようね。

 恐らく魔法を覚えたのは、この魔法使いによるところで間違いないわ。」


 レオンハルトは、手元のレポートを片付けられた机の上にパサリと置き、椅子へと深く沈み込んだ。


「彼女は『神速』を使ってきた。

 基本的な低位魔法は全て使えると考えなければ、今後は危ういだろう。」


 天井を仰ぎ、瞳を閉じるレオンハルト。

 その様子を見たエレナは、レオンハルトに語りかける。


「それにしても……本当にどうするの?

 このまま命を狙われっぱなしじゃ、どうにも危険すぎるわよ。

 それに教授の件。これは学院長に報告したの?」


「報告はした。

 今、教授は学院長の下で査問にかけられているはずだ。」


「怒鳴りこんでくるわね、きっと。」


「今日は言い返すさ。」


 ニヤリと笑って答えるレオンハルト。


 その言葉に、エレナは肩をすくめて苦笑し、そのまま部屋を出ていった。


 一人残されたレオンハルトは、ゆっくりと考え始めた。

 ミナト・ライドウ――彼女をいかにして救うべきかを。


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