正体
「『回路』か……。」
月明りが煌々と部屋の窓を照らす。
そんな夜の研究室。エレナとコムの二人を目の前にし、レオンハルトが沈黙を破ってつぶやいた。
「どうしたの? 藪から棒に。」
「いや、疑問に思った。
ここまで『回路』があり溢れているとはどうにも思えん。」
エレナの返答に対し、レオンハルトがさらに答える。
「ミナトの大斧に埋め込まれた『回路』はかなりのものだった。
加えてあのシュヴァルベだ。あの女、『転移』の『回路』を持っている。
市井の錬金術師が『回路』を持っていること自体驚異的にも関わらず、まさか高位魔法の『転移』が使用できる物を持っているとは恐れ入る。」
「さらに言うなら、あの銃です。
あれ、魔導器でしたよ?」
コムが会話に割って入ってきた。
その言葉を聞いたエレナが、小首をかしげつつ口を開く。
「『回路』に魔導器、か。一筋縄ではいかないわね。
唯一考えられる線はあるけど、それは考え難いし……。」
どこか遠くに視線を投げかけていたレオンハルトは、エレナに目を向ける。
「考えられる線とは?」
「彼女も学術院の関係者の可能性よ。」
「成程な。十分検討に値する。」
真剣な表情でレオンハルトは答える。
それに驚いたかのように、エレナは声を上げた。
「ちょ……ちょっと待って!
もしそうだとしたら誰だって言うの?
『回路』を利用する人間は結構いるわよ?
その人間一人一人に、『お前はシュヴァルベか?』なんて聞いて回るとでも?」
「だが女性に限れば話は変わってくる。」
「確かに女性で『回路』を利用する研究者は限られてるわ。
でも、その中であそこまでの女丈夫がいたら、それこそ口に上らないわけがなくてよ?」
「そうだな……。
だが、切り捨ててはいけない意見だと俺は考える。」
「理由は?」
「直感さ。」
レオンハルトは月を見上げつつ、つぶやくようにそう答えた。




