暴かれる陰謀
「オルセン公だな。」
レオンハルトは、コムの映し出した人物の立体映像を改めて確認し、そのように断定した。
レオンハルトの研究室。彼の傍らにはエレナが腕を組み壁にもたれている。
「それにしても全くの秘密にしておくなんてずるいじゃない。」
エレナが口をとがらせて抗議する。
「ましてそんな覗きなんて最低だわ。
私の着替えとか記録させて一人でコソコソ見てるなんてことないでしょうね?」
半笑いの表情でエレナが言葉を続けた。
そんな彼女に視線すら向けることなく、レオンハルトはコムの映し出す立体映像に見入っている。
「これは……事だな。」
「そんなの見ればわかるじゃない。」
「そうじゃない。予想以上に問題が根深いということだ。
ここにある話を再確認すると、何かの活動期限の延期を、既に二回は行っていることになる。
教授の行う活動となれば、当然?」
「遺跡、もしくは遺物の発掘……。」
「そうなる。加えてそれにかかる期間を考えてくれ。
発掘調査には最低でも半年から二年以上はかかるものだ。
その延期を願い出ているということは、教授はもう数年近く、連中と手を組んでいることになる。」
「数年はもうズブズブか……確かに根深いわね……。」
ふぅ……と、レオンハルトはため息をつき、深く椅子にもたれかかった。
上質なクッションを持つ椅子がレオンハルトの身体を受け止める。
「だが、そこまでして連中の探している物は何だ?
オルセン公と、残る二人の三公爵が求める何かとは何だ?
連中の目的が解らんのでは、教授をどうすべきか判断がつかん。」
天井を仰ぎ、目を閉じる。
考えるレオンハルトの耳に、エレナの声が届いた。
「どうすべきかは簡単でしょう?
この件を学院長に話して、おしまい。
どうせあなたのことだから、学院長から教授のお目付けを押し付けられて困ってたんじゃなくて?
面倒事を一気に片付けるチャンスじゃない。」
レオンハルトは椅子に座り直し、大きく天井を見上げて答えた。
「いや、今、報告するべきかどうかが問題なんだ。
もう少し教授を泳がし、様々な証拠を握った上で報告するべきか、それとも今、このコムによる情報のみで教授を捕縛するか、それが問題になる。
襲撃者の連中は、教授を泳がしたがっているようにも見える。
そうでなければ、拘引するなり暗殺するなりで決着をつけるだろう。」
「向こうも方針が定まっていないという線はなくて?」
「十分に考えられるな。
だが、現在一番に考えられる線は、三公爵の息の根を止める算段を図っている可能性だ。
そのための包囲網の一環……教授の妙な反骨心を利用して、三公爵の計画に対する揺さぶりを狙っているのかもしれん。」
「いずれにせよ、その判断はあなたがするべきじゃなくてよ?
揃った情報を持って、学院長へ報告。
それがあなたの今できるベスト。違うかしら?」
エレナの視線は、机越しにレオンハルトの顔へと注がれている。
レオンハルトは閉じていた瞳を開けた。
「君の助言に従うとするか……。
コム。立体映像のデータを『回路』に焼き付けてくれ。
学院長への報告書を作成する。」




