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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第三章-襲撃
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待ち伏せ

 林の隘路、そこに三人の男が立ち塞がっている。


 クリストフ、エルマー、そしてヒュウガ。


 気が付けば、背後の道も、二人の男女に塞がれていた。


 テオとミナトだ。


「ヒュウガ!」


 レオンハルトが馬から降りながら呼びかける。


「なぜ教授を襲う!?」


 そんな言葉を意にも介さず、ヒュウガは視線でクリストフとエルマーに指示を出した。

 二人は小さく頷くと、一気に馬車へむけて馬を走らせた。


 それを見たテオは大ぶりの戦鎚を投げ飛ばした。

 車輪が破壊されバランスを崩した馬車を見て、テオの馬も駆ける。


 馬車を守る四人と襲撃者の三人の馬上での戦闘が始まった。

 どうやら傭兵たちは金の持ち逃げをする最低レベルの連中ではないらしい。


 報酬分の仕事はしてくれよ……と、レオンハルトは考えつつ、急ぎ馬車へと向かおうとしたところ、行く手を塞いだ影があった。


 ミナトが巨大な戦斧を大きく前へ突き出してレオンハルトを牽制している。


「邪魔だ!」


「だったらどけてみな。」


 ミナトは短くそう言うと、鋭い振りでレオンハルトの動きを制していく。

 前の時とは違う冷静な攻撃は、レオンハルトも躱すのが精いっぱいだ。


(やむを得ん!)


 覚悟を決めたレオンハルトは、魔法を準備する。

 直径数十クランほどの複雑な紋様を刻み込んだ蒼い球体『魔導球(サーキットスフィア)』が、彼の右掌の上で輝きを増していく。


 それを見たミナトが、にやり、と笑った。


「その紋様、見覚えがあるよ。」


 そう言うや否や、ミナトは大斧を地面に突き立て、瞳を閉じ、静かに息を吐き出した。

 大斧の中心にある、蒼い宝石がぐんぐん輝きを増していく。


 レオンハルトの手にあった蒼い球体の輝きは限界に達し、『魔導球』は弾けるようになくなった。


 レオンハルトが動く。だが、その速度は人間の出せる速さを大きく超えている。


 魔法『神速』――人間の筋肉の収縮速度、そして神経の反応速度を、魔力で補う高速化の魔法。これを最大限利用すれば、文字通り『目にも止まらぬ動き』も可能になる。


 この魔法を利用して馬車へと向かおうとしたレオンハルトの眼前に、ミナトが同じく踏み込んできた。


「『回路(サーキット)』かっ!」


 普通ならばこのレオンハルトの動きを捕らえられはしない。

 だが、同じ『神速』を使えば話は別だ。


『魔導球』の紋様は、同一魔法ならば基本的に似たようなものになる。


 そう、ミナトは知っていたのだ。『回路』による『神速』の使用方法を。


 人外の速さによる高速戦闘が始まった。


 とは言うものの、レオンハルトは防戦一方。ミナトの攻撃に押される形でしかない。


「どうした? 魔法は使ってこないのかい?」


 大斧が、レオンハルトの目の前を右に左に振り回される。


 限界まで引き付けて、紙一重で見切る。


(こんなことを繰り返して体力を温存しても、攻撃しなければ意味はない……。)

 レオンハルトは考える。


 どうすれば、彼女の心の鍵を開けるのか。

 どうすれば、彼女の凍てついた心を融かすことができるのか……。

 そんな迷いがレオンハルトの動きを一瞬、だが確実に鈍らせた。


 その瞬間を見逃さず、ミナトは大斧を大上段に振り上げる。


 直後、金属同士が派手に叩きつけられたような耳障りな音が周囲に響き渡った。


 襲撃者の三人と馬車の護衛とが、その音に驚き、目を見張る。

 そこにはミナトの大斧を、魔法と左腕とで防ぐレオンハルトの姿があった。


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