表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第三章-襲撃
21/171

研究

(周辺の状況は?)


(周辺の状況、現在異常なしです。探査範囲を広げますか?)


(そうだな。周囲二百クラム四方に範囲を広げてくれ。)


(了解です。)


「どうしたい、先生? 押し黙っちまって。」


「いや、少し考え事だ。気にしないでくれ。」


『チャンネル二番』。


 魔法使用時に発生する『思念波』を利用した、精神感応式通信システム。

 コムにはこの能力が備わっており、レオンハルトと内密な、そして距離によらない通話が可能となっている。


 今現在、コムは馬車の上空五クラムほどを飛行しながら一行に随伴、周辺警戒を担当している。


 ただし、内密に、だが。


 一方、馬車の護衛として、四人ほどの傭兵が雇われていた。

 ただ、この一件、最後の最後までレオンハルトにも伝えられていなかった。


(教授はよほど差し迫っているようだな……。

 俺たちを信用しないのは勝手だが、下手な手合いを掴まされると、あとで大火傷になりかねん。用心しなければ。)


 馬車の中では、教授とエレナが差し向かいで座っていた。

 教授は落ち着かない様子で、窓の外をぎょろりと見まわしている。


「少しは落ち着いたらどうです、教授……。」


 エレナは呆れたように教授へと話しかけた。

 そんな言葉に激昂したのか、声を荒げて教授は叫ぶ。


「落ち着けだと!?

 私は命を狙われてるんだ!! 落ち着いてなどいられるか!!」


「なら、どうしてレオンの意見に従わなかったんです?

 彼の言う通り、問題が解決するまで学術院に籠城していれば、ここまで恐れることもないでしょうに。」


 エレナの語調はますます呆れたようなものになっている。


 まるで、駄々っ子にうんざりしている母親のような、そんな雰囲気だ。


 中腰で外を窺っていた教授は、ドカッと座席に腰を下ろし、エレナの顔を見据える。

 対するエレナは、表情まで呆れ顔で瞳を薄く閉じている。


 ガラガラという馬車の車輪の音が数秒響いたところで、教授が不意に口を開いた。


「研究のためだ……。」


「え?」


「研究のパトロンが必要なのだ!

 そのためにも話し合いが必須なのだよ!」


 エレナの顔にわずかではあるが困惑の色が浮かんだ。


「なぜ、パトロンが必要なんです?

 研究費用なら学術院で賄えるはずでしょう?」


「そこまで君に教える義理はなかろう?」


 教授は敵意を込めた目でエレナを睨みつけた。

 その視線を受けたエレナもまた、敵意ある視線で答える。


 一触即発の空気が流れていく……。


 いきなり、ガクン! と馬車が揺れ、スピードが一気に落ちていった。

 レオンハルトが馬上から馬車に向けて叫ぶ。


「教授! 待ち伏せです!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ