コム
「大変ですね……僕も手伝いましょうか?」
自宅の書斎で、レオンハルトは紅茶を飲みながら、コムと話をしていた。
一口カップを啜り、レオンハルトは口を開く。
「確かにお前の防御フィールドは無敵だ。
だが、恐らく今回の襲撃は少人数となる。
俺とエレナだけでも何とかなるさ。」
苦笑しながら語るレオンハルト。
それに異議を申し立てるかのようにコムが話しかけてきた。
「なぜ少人数とわかるんです?」
「まず一つ。前回の襲撃が少人数だったからだ。
本格的な暗殺なら、初手から十人単位で命を狙ってくるだろう。
それを考えても、ただの暗殺とは考え難い。」
紅茶をもう一口啜り、言葉を続ける。
「もう一つは相手の練度だな。
先も言った通り、前回は少人数だった。
これは人を集められないか、もしくは集める必要がないかのどちらかだ。
襲撃者は四人。皆かなりの手練れではあった。
そう考えると後者だが、同時にそれだけの手練れをより多く集めるのは一苦労だろう。
となれば結局前者だ。人手は集められない。」
コムの瞳が少し暗くなった。まるで何か考えているようだ。
再び瞳が緑で明るくなり、発声装置が声を出す。
「向こうの規模の事を考慮から除外してますよ。
相手が手練れを多数揃えた何者かだったら、相当数集めるのも容易なのでは?」
レオンハルトは苦笑しながら、紅茶のカップを皿に置いた。
「先にも言ったはずだ。本格的な暗殺なら、初手から十人単位だと。
恐らくこれは、教授に対する警告の類だ。
だとしたら、もう十分に役目は果たしている。
もしこれ以上襲撃があるとしたら、それは教授の行動に対する妨害だろう。
問題は、その妨害を受けるような行為を教授が行っていること、これに尽きる。
せめて何者との会談なのか、それが解れば……。」
背もたれに深くもたれかかり、目を閉じて考えるレオンハルト。
コムは滑るように宙を移動し、その前に進んできた。
「やっぱり僕も行きますよ。
遮蔽フィールドを使えば、人間の目は欺けます。」
レオンハルトは小さくため息をついて、ボソリと言った。
「覗きというのは、どうも、な。」
「でも、今後の事を考えればやむを得ない措置とも考えられますが?」
コムの言葉を考えるレオンハルト。しばしの後、彼は目を開けてコムに言った。
「確かにその通りだ。
ただし、遮蔽フィールドは絶対に外すな。
お前は最後の切り札にする。」