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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第二十一章-巨人
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起動

『くっ……ちょこまかと!』


 巨人は腕を振り回しながら、飛び回るレオンハルトを捕まえようとしている。

 対するレオンハルトは、小技の魔法を閃かせながら、巨人の周りをひらりひらりと飛び回っていた。


(どうやら、あの散弾は一箇所につき一回で打ち止めのようだな。

 さらに向こうの意図で発射するのではなく、自動で制御されていると見た。)


 レオンハルトは散弾の仕様を分析し、同時に弱点がないかを魔法で探っている。

 だが、さすがに軍事用の巨人とあってはそうも容易く弱点が見えるはずもない。


 レオンハルトは、方針を切り替えることにした。


(狙いを本体から……熱線砲に切り替える。)


 巨人が右脇に抱える熱線砲。その弱点を狙って攻撃を開始するレオンハルト。


 その様子に気付いたエレナは、その腕を盾にするよう、巨人を操作し始めた。


(熱線砲の弱点は、その砲口だ。

 砲口を破壊することで、全体を無力化できる。

 問題は……高エネルギーを収束させる砲口を破壊するだけの魔法をどう練り上げるか。

 奴の攻撃を躱しつつ、攻撃目標を気取られないまま強力な魔法を練らなければならない。

 難題だぞ、これは……。)


 同時にエレナも焦りを感じ始めていた。


(巨人ということで気が大きくなり過ぎたわね……。

 こちらは小回りが利かない分、レオンの方が有利かも知れない。

 それに熱線砲を狙ってきた以上、これを防衛する必要がある。

 できれば一撃で彼を叩き潰せる兵装を使いたいけど……どうかしらね。)


 エレナは操縦室のメインコンソールを操作する。

 そこには巨人の身体のあちこちに装備されている兵装が映し出されていた。


(対歩兵用の散弾はかなりの数が減らされた……。

 でも、これは彼に効かないから問題ない。

 他は何?

 対飛翔兵器用の光線砲、熱線による刀、それに焼夷用の実弾兵器四発。

 焼夷弾はここで使うべきではないわね。

 刀と光線砲……これか。)


 エレナはそう考えると、二つの兵装を起動した。

 胸部にある光線砲のロックが解除され、レオンハルトを追いかけるように砲口が動く。

 やがて、レオンハルトの速度が遅くなったところを見計らって、光線砲が発射された。


「ぐうっ!?」


 光線を『防壁』で弾くレオンハルト。

 だが、その出力は決して低いものではない。


 自らを守っている『防壁』の効果がかなり薄くなったことを、レオンハルトは感じ取っていた。


 その隙に、巨人の左手首の辺りから短杖のようなものが滑り出た。

 先端から熱線が迸り、刃を形成している。


(あの刃、相当の出力だ……今の『防壁』では防げんぞ……。

 待てよ? 『防壁』?

 そうか、いけるかもしれん……。)


 考えをまとめたレオンハルトは、魔法の練成を始めた。

 だが、動きがわずかに鈍くなったところを、光線砲が狙撃する。

 この一撃を受けた『防壁』は完全に消滅し、レオンハルトは魔法の練成を中断、別の魔法を用意し始めた。


『慌てて『防壁』を張り直すなんて、らしくないわね? レオン。

 さあ、もう一撃で蒸発なさい!』


 光線砲がレオンハルトを狙い、発射される直前、レオンハルトは『飛翔』の魔法を解除し、急降下を仕掛ける。

 そのまま地上を『神速』で駆け抜け、下に向けられていた熱線砲の砲口へと、練り上げていた『穿孔』を解き放った。

 凄まじい衝撃音が周囲に轟き、熱線砲の砲門部には、抉り取られたかのような球面の破壊痕が残された。


(なんてこと……。

 まさかあの高さから降下して一気に詰めるだなんて……。)


「青褪めたか!? エレナ!」


 レオンハルトがエレナに向けて叫んだ。


「悪いが、戦闘経験はこちらが上だ!

 伊達に鋼鉄龍(シュターレドラッヘ)と相討ちになった訳じゃないんでな!」


 ガクンと熱線砲が傾ぎ、抱えていた巨腕から滑り落ちてきた。

 同時にスピーカーからエレナの声が響いてくる。


『悔しいけどその通りね、レオン。

 でも、まだこちらには帝都を焼くに十分な弾薬があるわ。

 この巨人を破壊しなければ、あなたの負けは確実よ?』


 再び背面のノズルに噴射の兆候が現れた。


(このまま帝都まで一気に行くつもりか!?

 だとしたら、カッツバルにも大きな被害が出る……。)


 レオンハルトは意を決し、精神を集中させた。


「いくぞ!!」


 左手の『回路』が開いた。


 凄まじい勢いで展開される扇状の『回路図(サーキットイメージ)』。


 魔力の奔流が、レオンハルトの全身を駆け巡る。


(これだ!

 これが問題だ……!!)


 先の試験で得た危険性をレオンハルトは反芻する。


(恐らくこの強大な魔力に、人間の肉体は耐えられない。

 コムが……いや、父さんが『危険だ』と言っていたのは力が危険と言う訳ではなく、莫大な魔力の奔流によって肉体が限界に曝されるから危険だと言ったんだ。

 一気にケリをつける必要がある……迷うなよ、レオンハルト!!)


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