光と影
深夜にも関わらず、カッツバルの町は騒然としていた。
月明かりの下、遠く森の中で、巨人らしき影と光に包まれた球体が争っているように見えていたのだ。
ある者は悪魔と神が戦っているのだとつぶやき、またある者は何処かの遺跡から出た怪物たちだと囁いた。
そんな中『影の兵士隊』の定宿からエルマーが双眼鏡で様子を窺っていた。
確かに巨人と光に包まれた人間が戦っているのが見て取れる。
倍率をさらに上げ、光に包まれた者が何者なのかを見極めた時、彼は直感した。
レオハルト・フォーゲルが、全力で戦っている、と。
エルマーは大急ぎで部隊長の元へ向かい、進言した。
「部隊長! 急ぎ進軍を!
それが無理でも、せめて斥候部隊を!!」
「軍曹、それはできん。
この夜半では状況が解らず全滅の可能性がある。」
「アマギ少尉の安否が気になるのです。
連中の来た道を遡る形で斥候部隊を送るよう、提案いたします!」
「むぅ……。」
部隊長は唸った。
確かにエルマーの言う通りではある。
ヒュウガは本作戦の要になる存在だ。あの巨人の出現に関係しているのなら、安否が気になって当然だろう。
熟慮すること数分。部隊長は重たい口を開いた。
「よし……斥候部隊の編成と指揮を貴君に任せる。
ただし、決死隊になることは覚悟してもらう。」
「はっ!」
エルマーは引き締まった面持ちで敬礼を行うと、急ぎ階下へと降りていく。
そこには非常招集をかけられた兵士たちが、ざわざわと現状について語り合っている真っ最中だった。