自決
「リーマン先生。」
管制室の研究員が、コンソールに映るエレナに向けて語りかける。
恐らく巨人の操縦席には、彼の顔が小さく映し出されているだろう。
『どうした?』
「熱線砲の状態があまりよろしくありません。
発射可能な弾数は、最大出力で一発だけです。」
『それだけでも十分よ。
帝都を焼けば私たちの勝ちなんだから。』
「解りました……ご武運を!!」
通信を終えた研究員は満足げに微笑み、椅子へと深くもたれかかる。
その瞬間、ガァン! という凄まじい音と共にドアが叩き割られた。
管制室にいた研究員全員が入口へと目を向ける。
「全員動くなぁっ!」
突入と同時に一喝を浴びせるミナト。
そんな彼女を研究員たちは冷ややかに見つめていた。
「ここのリーダーは誰だい?」
「僕だ。」
先ほど通信をしていた研究員が立ち上がり、ミナトの元へやってきた。
「覚悟を決めたって顔だね……。」
「無論だよ。この計画に参加した以上、覚悟はとうに決めている。」
ミナトの真剣な眼差しにも負けぬ気迫をもって、研究員もミナトを睨む。
「君たちには、今回の件の証人になってもらう。
無論、弁護士は付けた上で、裁判は厳正かつ公平な……。」
ギルベルトが口上を述べている最中、周りの研究員が苦しみだした。
見れば、ミナトの目の前の研究員も、口から泡を噴き出して膝から崩れている。
「毒!?」
ミナトが慌てて研究員の肩を掴み、大きく揺さぶる。
「なんで……なんでこんなっ!」
「どうせ……捕まっても……反逆罪で死罪は免れない……。
なら、僕たちは……名誉ある死を選ぶ……。」
「死んだところで名誉などない!
ただ罪人として名前が残るだけなんだぞ!!」
ギルベルトの怒号が響く。
それに対し、研究員は最期の声で一言遺して逝った。
「リーマン先生……頼みます……。」