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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第二十章-真実
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砕かれた宝石(いし)

「残る警備の兵はあとどれぐらいか?」


「はっ、シュヴァルベ様が総動員をかけましたため、結果、残る兵は十人もおりません……。」


「成程……。」


 エレナはその言葉を聞くと、コンソールを操作する研究員たちへ静かに命じた。


「あなたたちは裏口からお逃げなさい。」


「しかしそれでは!」


 エレナの言葉に、研究員の一人が強く反発した。


「それでは……何?」


 冷徹な目で睨みつけるエレナに対して、席から立ち上がった研究員が、強い視線で言葉を続ける。


「それでは例の遺物を起動する人間がいなくなります!」


 呆気に取られた表情を見せるエレナに向け、その場にいる研究員たち全員が熱い視線を注いでいる。


「どうして……そこまで?」


「私たち、遺跡工学者は日陰者です。

 研究のほとんどは接収され、碌な手当ももらえず、皇帝どころか市民にさえ何をやっているのかと白い目で見られる。

 確かにフォーゲル先生のように達観して、人のために生きられるならまだ救いもあるかもしれません。

 でも、私たちは違います!

 あんな……あんな風には生きられません!」


 もう一人の研究者が立ち上がり、叫ぶように語る。


「見せてやりたいんですよ!

 今まで蔑ろにされてきた者が何をするかを!

 我々の怒りがどれほどのものか、見せてやりたいんです!」


「そうね……あなたたちの言葉、良く解るわ。」


 エレナは静かに目を閉じて、少しの間考えた。

 その後、強い意思を込めた表情を見せると、その場に居合わせた全ての研究員に対し、号令をかけた。


「起動シーケンス開始。十分で可能か?」


「十五分ください。完璧に行ないます。」


「解った。十五分だな。搭乗者は私自身だ。

 起動終了後、急ぎ退避。夜陰に乗じて逃げろ。」


「リーマン先生!」


「諸君らは無理矢理協力させられたのだ。

 それを忘れるな。」


 それだけ言うと、エレナは管制室の出口へとまっすぐ向かっていった。


 途中、彼女の手から輝く何かがキラキラと散り落ちていく。

 彼女の過ぎたその場所には、砕かれたイヤリングの欠片が、蒼く輝いていた。


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