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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第二十章-真実
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敵陣突破

「強襲は成功のようだな。」


 曲がり角でいったん立ち止まり、ヒュウガが皆に話しかける。


「ここの見取り図は出せるか? 父さん。」


「今出す。待ちたまえ。」


 ギルベルトの胸部にある立体投影装置が起動し、何もない中空に立体の見取り図が出現した。


「この遺跡は、軍需工場のようだな。

 軍事基地ではないため、防衛機構などはそんなに厳しいものではない。

 恐らく問題の巨人は、この広大な空間。

 倉庫か、組み立て工程のエリアだった箇所だと思われる。」


 ギルベルトの言葉に連動して、赤く光るマーカーが灯り、施設外れにある広い空間を指し示した。


「ここからは一直線だな。

 父さんに先行してもらい、フィールドを盾に突っ切るのが一番と見たが?」


「それが良い。

 全員『神速』を利用してくれ。そうすれば、自分も全速力を出せる。」


「了解。早速出番だよ。」


 ミナトはそう言うと、大斧の『回路(サーキット)』を軽く叩いた。


 魔導球(サーキットスフィア)が二つ輝き、力を導き出していく。


 隣では、ヒュウガが呼吸を整え、気功術を発動していた。


「行けるか? ヒュウガ。」


「ああ、何一つ問題ねぇ。半分忘れかけていた感覚を取り戻したぜ。」


「質点定義開始……疑似質量一アルロムトに設定……フィールド出力七十五%……。

 良し、安定した!

 残る距離は約七百クラム! フィールドの展開可能時間は八分だ!

 行くぞ、諸君!!」


 ギルベルトの号令と共に、一同は一斉に曲がり角の向こうへと躍り出た。

 その目の前では非常用のシャッターが正に下りようとしている。


「父さん。」


「解っている。」


 レオンハルトの声を聞き、ギルベルトが一気に加速する。


 下ろされてくるシャッターはフィールドに阻まれ、ギリギリと金属音を立てて卵形の歪みを見せていく。


 三人はその様子を見ても眉一つ動かさず、一気に次のブロックへと飛び込んだ。


 その一団を飛び越し、再び前方へ出るギルベルト。


 シャッターを三つ処理して進んだところで、両開きの扉が見えた。

 扉の前では、銃を構えた黒い鎧の兵士たちが待ち構えている。


「死にたくなくば道を開けたまえ!!」


 今までにない程の大声で叫ぶギルベルト。


 兵士たちは一瞬怯んだようにも見えたが、そのまま銃撃を開始した。

 弾丸は、全て魔力によるもの。魔導銃だ。


 だがそんな魔導弾も、ギルベルトのフィールドに阻まれ、全て一瞬の閃光へと掻き消えていく。


「すまないが……罷り通る!」


 ギルベルトが突撃する。

 そのフィールドの見かけの質量は一アルロムト――数十トンの重さが設定されている。


 それだけの質量を持つ強靭無比な壁が、一気に叩きつけられるのだ。

 扉のあった壁と共に、全ての兵たちはバラバラになって扉の向こうの空間へと吹き飛んでいく。


 空間への突破口が開かれ、四人はその入り口の瓦礫に中に隠れた。

 眼前には壁面に架けられた通路のあちこちで魔導銃を構えた数多の兵が、入り口に銃口を向けて待ち受けているのが見える。


 そして地上階にいるのは……『教授』たち、十数体。


「一気に踏み込む?」


 ミナトの言葉を聞いたレオンハルトはギルベルトに尋ねた。


「父さん、フィールドの効果時間は?」


「残り約四分だ。」


「よし、俺が上にいる銃を潰す。

 二人は『教授』の相手を頼む。」


「ではその間、私が銃撃を防ぐ傘になる。

 だが、広域展開のフィールドだ。

 銃撃を完全に防ぎきることはできない。

 それだけは了解してくれ。」


「OKだ。」


「わかった!」


 ヒュウガとミナトの真顔での返答を聞き、レオンハルトは敵陣へと目を向ける。

 同時に四人が潜む瓦礫に向けて、銃撃が始まった。


 魔導弾による銃撃は止むことはなく、連続的に襲いかかってくる。

 ギルベルトを先頭に、縦列陣で突撃する一行。

 ギルベルトのフィールドは、数十クラムを進む間、魔導弾を無力化し続ける。


 敵陣まで残り数クラム。そのタイミングでギルベルトが一気に上昇した。

 反射的にギルベルトに銃口を向けた兵たちへと、『天翔』で跳び上がったレオンハルトが襲いかかった。


 同時に階下では『教授』たちと、ヒュウガ、ミナトによる乱戦が始まる。

 目算が完全に狂わされた敵陣営では、混乱に拍車がかかった。


 接近戦での銃撃は、同士討ちになる。

 だが、急ぎ抜刀しようにも、その前にレオンハルトの攻撃が飛んできて、自身が薙ぎ払われてしまうという繰り返しがあちこちで起きていく。


 総勢三十名ほどの銃兵も、わずか数分で半数近くに減っていた。

『教授』相手の二人は、人外の速度で攻撃を振るう相手にも冷静に戦っている。


「確かにこいつらは早ぇ……だがな!」

「腕前がテンでダメなのさ!

 動きを見切るなんて余裕だよ!」


 今までの鬱憤を晴らすかのように、ミナトもヒュウガも『神速』とそれに見合うだけの速度を出す気功術を駆使し、人形を次々にスクラップへ変えていく。


「何ということだ……。

 これが奴らの本気だと……!?」


「そういうことだよ。」


 高架の上に立つシュヴァルベの背後に、気付けばギルベルトが浮かんでいた。


「ギルベルトか……?」


「その通りだ、姉さん。

 貴女にはいくつか聞きたいことがある。

 まず一つ目だ。なぜ私を殺した?」


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