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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十九章-慕情
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開かれた扉

 ギルベルトは再び情報管制室へと向かった。

 バルメスの遺跡について何か得られないか、そう考えたのだ。


 だが、その結果は……。


(情報は開示不可……か。)


 無言のまま、さらなるデータアクセスを試みるギルベルト。

 だが、その要求はことごとく跳ね返される。


 そんな通信内での押し問答を繰り返しているところに、管制室のドアが開いた。


「どうした? 調整は終わったのか?」


 ギルベルトは、入ってきたレオンハルトにそう言葉をかける。


「いや、どうにも気になった。

 バルメスの遺跡について、少しでも情報が欲しかったんだが……。」


「考えることは同じか……。」


 レオンハルトの言葉を聞いたギルベルトは、小さな笑いと共に言葉を漏らす。


「その様子だと何か解ったんじゃないか?」


「そうだな。どうもあの遺跡は軍事施設の可能性が高い。

 少なくとも、一般的に情報が開示されるような場所ではないということが解ってきた。」


「情報が開示されない……確かに臭うな……。」


「ミナト君の言う、軍用の巨人も視野に入れなければならん。

 少しでもいい。施設の概要を知りたいところだ。」


 そうやり取りしたギルベルトは、再びデータ通信を開始する。

 だが様々なクラッキング手段を駆使するも施設の情報は頑として開示されない。


「駄目だな。どうにも手が出せん。」


「ここの医療記録から手繰れないか?

 時間はかかるかもしれないが、何か手掛かりが得られるかもしれない。」


「やってみよう。」


 レオンハルトの提案を元に、ギルベルトは医療記録をピックアップしていく。

 ターゲットはバルメスからの傷病人カルテだ。


 膨大なカルテデータの中から、バルメスから運び込まれた患者の情報を拾い集めていく。

 やがて、その集まってきたデータから患者の傾向が見えてきた。


「どうやら当たりらしい。

 バルメスから運ばれてきた患者のほとんどが怪我人だ。

 何らかの工場、それも危険度の高い工場であるのは間違いない。」


「機械化の進んでいるはずの文明でも、工場で人が怪我をするんだな……。」


「どうやっても人間の労働力は必要なのだろう。

 だからこそ、ここの医療施設には多様な義肢が数多く存在している。」


「もしくは労働力として人間の方が安価だったのかもしれない、か。

 とにかく向こうの正体が少しでも掴めたことを良しとするべきかな?」


「そう考えよう。」


 わずかに間が空いた。


 レオンハルトは何か逡巡を見せたが、意を決し、ギルベルトへ尋ねた。


「感情的になってしまって、昨日は聞きそびれた。

 貴方と教授の関係を聞きたい。

 二十数年前に学術師だった貴方と、あのカウフマン教授の間に何もなかったとは考えられないんだ。」


 ギルベルトは、その問いになんのてらいもなくスラリと答える。


「学友だよ。一応ね。

 だが、次期遺跡工学部の学部長は私になることが有力だった。

 それを妬んで裏工作を仕込んでいたため、見限っていたがね。」


「そうか……噂は事実だった、か。」


 ギルベルトの言葉を聞き、レオンハルトは部屋の出口へと向かう。

 扉が開くと同時に、レオンハルトは思い出したかのようにギルベルトへ尋ねた。


「貴方はどうする?」


「私はここでもう少し情報を探ってみる。

 何か解ったら、昼食時に教えよう。」


「頼みます。」


 後事をギルベルトに任せ、レオンハルトは部屋を出て行く。


「頼みます……か。」


 ギルベルトはどことなく嬉しそうな声でつぶやいた。

 そして再びデータの流れの中に、『回路(サーキット)』内の意識を潜り込ませる。


 昼食までの数時間。

 データストリームの中ではまだまだかなりの時間が残っている。

 その時間を有効に活用するべく、ギルベルトは別方向のアプローチを開始した。


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