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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十九章-慕情
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決行直前

「昨夜はお楽しみだったのかい?」


 食堂で、ヒュウガがニヤリと笑って二人に話しかけてきた。


「お生憎、そこまで進みませんでした。」


 口をとがらせてミナトが抗議する。

 そんな彼女の様子を見たヒュウガは、呆れた表情でレオンハルトに尋ね直す。


「本当に何もしなかったのか?」


「ああ。」


 レオンハルトは食事を口に運びながら答える。

 ヒュウガはそんなレオンハルトへ、ますます呆れた声を出した。


「据え膳食わぬはなんとやら、だぜ?

 そもそも据え膳用意してくれた相手にも失礼だろ?」


 ひとしきり食事を終えたレオンハルトは、スプーンを置いてヒュウガの言葉に答えた。


「考え方の違いだな。

 俺たちはこれから死地に向かう。

 無論死ぬつもりなどないが、生き残ろうとする理由は一つでも多い方がいい。」


「違いねぇ……。」


 レオンハルトの答えに、ヒュウガも同意する。


「諸君。朗報だ。」


 食堂に入ってきたギルベルトが、明るい声を上げた。


「どうしたんだ? 父さん。」


「バルメスの遺跡近くに道標が存在することが確認できた。」


「ってことは!?」


「遺跡の転移装置が使えるってこと!?」


 ギルベルトの言葉に、ヒュウガとミナトも喜びの声を上げた。

 レオンハルトも微笑みながら、ギルベルトへ話しかける。


「これで負担が一気に減ったな。

 多分予想以上に大きい影響があると見た。」


「いい意味で、だな。

 四人分の存在量を運ぶとなると、少なからず消耗は避けられん。

 それを回避できるとなれば、戦力を維持したまま敵陣に乗り込める。」


 レオンハルトはヒュウガとミナトに向き直って言った。


「決行は今夜半だ。

 時間は十分にあるから、しっかり休息を取っておこう。」


「わかった。

 俺はトレーニングルームで少し調整しておく。

 ミーナはどうするんだ?」


「じゃあ、あたしも付き合う。

 新しい『回路』にもっと馴染んでおきたいからね。」


「二人ともやり過ぎは厳禁だ。

 十分な休息を取っておかなければ、ここ一番で危険を招きかねん。」


 やる気満々の二人に、ギルベルトが釘を刺す。

 そんな言葉に、ヒュウガは苦笑いで答え、ミナトは決まりが悪そうに視線を逸らした。


 そんな二人を見たレオンハルトは、微笑んで語りかけた。


「俺も少し義手の調子を試したい。

 まあ、昼食までに軽く動く程度にしておくのが良さそうだな。

 そこから睡眠をとり、起床後目覚まし程度に再び軽く動く。

 そんなところだろう。」


「了解だ。

 んじゃ、早速始めますか。」


 ヒュウガはそう言うと、大きく伸びをしながら食堂を出ていった。

 それに続いて残る三人も食堂を後にする。


 一歩廊下へ出たと同時に、ヒュウガも、ミナトも、そしてレオンハルトも、その顔は戦士のものへと切り替わっていた。


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