限界
「うおおおおおおっ!!」
憤怒の雄叫びと共にヒュウガが『教授』に挑みかかる。
だが、次々と繰り出される連撃は、大げさな、それでいて正確な動きで躱されていく。
「どうしたね、狼君。」
背後から『教授』の一体がヒュウガに拳を突き立てた。
「この間の力は出さんのかね?」
左横から別の教授が殴りかかった。
「それとも出し惜しみかな?」
右斜め後ろから回し蹴りが飛んでくる。
四方八方から叩き込まれる攻撃に翻弄されつつ、ヒュウガは少しずつ呼吸を整えていった。
気功術だ。
(使える時間は三分。その間に全てケリをつけなきゃならねぇ。
一分でこの木偶どもをぶっ壊し、一分であの外道を叩く!)
目算を整えるヒュウガ。
全ての『教授』が一斉にヒュウガに攻撃を仕掛ける。
その瞬間、ヒュウガの姿は忽然と、全ての人間の視界から消え去っていた。
「破ッ!」
六体の頭上から、気の衝撃波が叩きつけられた。
狙いは最も先走っていた一体の頭部。
頭部の中身をグシャグシャに破壊され、一体は崩れ落ちる。
それを皮切りに、先ほどとは打って変わっての反撃が始まった。
連携の速さは、『神速』でも捕らえられるか解らぬほどの速度となり、あらゆる攻撃が『強力』もかくやと言う重さへと変貌する。
ヒュウガは正確に、そして確実に関節部を狙い、一撃一撃を叩きこんでいった。
「くっ……ここまでとは……。」
シュヴァルベの表情からは、もはや余裕が消え去っていた。
気づくたびに、一体、また一体と『教授』は斃されていく。
だが、残り一体となったところで、異変が起こった。
ヒュウガの動きが、急激に鈍ってきたのだ。
(バカな!? まだイケるはずだ!!)
ヒュウガの内に焦りが生じる。
そこへ『教授』の拳が襲ってきた。
避け切れず、心臓の真上に拳が突き刺さる。
この一撃で、ヒュウガの意識は失われた。
ただ、シュヴァルベの安堵のため息を最後に聞いて。