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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第二章-ミナト・ライドウ
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憎しみ

 ヒュウガの立ち去った部屋、ミナトはベッドに腰かけていた。


 膝に大斧を乗せ、寂しそうに撫でている。


「ゴメンね、お義父(とう)さん……。」


 彼女は大斧に語りかけるよう、つぶやく。


「あたし、悪い子になっちゃったよ……。

 この大斧で人をたくさん斬って、村のみんなの仇を討とうとしてる……。」


 彼女の手が刃の中心にはめ込まれている、大ぶりの『回路(サーキット)』に触れた。


「復讐なんて何の解決にもならない、ってお義父さんは言ってたけど、やっぱり気持ちの整理をつけたいんだ。

 あいつは今、昔の事なんか忘れて、学術師の位についてる。

 過去の罪を償うこともなく、のうのうと生きている。

 それが許せない。」


 瞳に怒りを浮かべつつも、ミナトは静かに語る。


「あたしのやる事は罪に問われるだろうし、返り討ちに遭うかもしれない。

 でもあたしは、あいつに後悔の一つでもさせて、恐怖に怯えさせられればそれでいい。

 命を奪われるってことがどういうことか、思い知らせてやりたいんだ。」


 気持ちを落ち着かせるように天井を仰ぐミナト。

 先のヒュウガの言葉が耳に残っている。


「『殺せるもんなら殺してみろ』か……、」


 彼女は真正面を向いて、両頬を二つばかり叩いた。


「よし! 仕事だ!!」


 正面の壁を見据え、誰に言うでもなく、口の中でボソボソとつぶやく。


「あのヒュウガって奴につけば、レオンハルトと戦うチャンスが作れるんだ。

 受けない手はない。」


 ミナトはベッドから立ち上がり、大斧を部屋の隅に立てかけた。


 シャワーを浴びるため、彼女はシャツとズボンを脱ぐ。


 その豊かな胸を締め付けるように上半身にサラシを巻き、下着も男物に近い物を穿いているのは、傭兵としての気概の表れだろう。


 サラシを解き、下着も脱いで、シャワーへと向かう。


「チャンスは必ずモノにする。

 それが一流だよね、姐さん。」


 蛇口をひねりながら、ミナトはつぶやく。


 彼女の胸の内では、かつて傭兵時代の恋人だった女性が、凛とした眼差しで優しく微笑んでいた。


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