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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十七章-強襲
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火葬

 遺体を火葬にするべく、三人は麓の森で丸木を調達していた。


 ミナトの大斧、ヒュウガの拳脚、レオンハルトの魔法。

 薪にするべき丸木はあっという間に集まった。


「火葬って言うのもかわいそうだね……。」


 ミナトがポツリと言う。


「でもな、そのまま埋めちまって、熊やら狼に食われるよりはずっとマシだぜ?」


 ヒュウガはそんなミナトの言葉を打ち消すように言う。


 レオンハルトが無言で『紫焔』の魔法を発動させ、遺体を囲む丸木組みへと一気に火を付ける。

 丸木は瞬時に燃え上がり、その炎が遺体を覆いつくした。


「で、おかしいってのは、何だ?」


 ヒュウガがコムに向けて尋ねた。

 一方のミナトはどことなく虚ろな目で、あらぬ方向を見ている。


「はい。まず遺体の位置関係です。

 エレナ様の遺体は、一番奥の制御卓に突っ伏していました。

 銃創は右側頭部から左側頭部へ向けて、となっています。

 でも、エレナ様の右側にはすぐに壁があったんです。

 そんな狭い隙間にわざわざ潜り込んで銃撃するでしょうか?」


「確かにそれは妙だな。

『転移』を利用したとしても、そんな隙間に潜り込むような真似をすれば、大失敗の可能性が一気に跳ね上がる。」


 コムの提示した第一の問題に、レオンハルトが補足するようにつぶやいた。


 コムの解説は続く。


「第二に銃創そのものがおかしいんです。

 シュヴァルベの魔導銃は、面を破壊する威力の高い銃です。

 でも、エレナ様の銃創は、貫通銃創……もっと威力が低く、穿つような銃弾である必要があります。

 従って、エレナ様を撃った銃は、別の銃であることが考えられます。」


「別の……銃?」


 コムの言葉に、ミナトがぼんやりと反応した。


「どうした? 何か心当たりがあるのか?」


「え? あ……エレナ自身が持ってたよ? 婦人用の小さいの。

 でも、あんなオモチャの銃じゃ、貫通なんてできないんじゃ……。」


「魔導銃なら可能だろう。

 小型の婦人用に偽装した物もあり得る話だ。」


 ミナトの言葉にレオンハルトが険しい顔で答える。


「そして最後になりますが、エレナ様が持っていた全ての『回路(サーキット)』がなくなっています。

 今まで一緒に行動していた限りでは、合計七つの反応がありましたが、全てなくなっているんです。」


「『回路』はあるに越したこたぁねぇ。

 シュヴァルベが掻っ攫ってったんじゃねぇか?」


「かも知れん。だが、彼女の持つ『回路』のほとんどは低級魔法を発動させるものだ。

 あんな魔導銃を持ち、『転移』の『回路』を使いこなす手合いに、その程度の物が必要とは思えんが……。」


 ガラン! と丸木組みの崩れる音がする。


 炎の奥の遺体は、もう灰になりつつあることだろう。


「エレナ……ゴメン……ゴメンね……。」


 ミナトが涙を流して、エレナへ謝罪した。


 初夏の昼下がり。

 その日差しの向こうへと、弔いの煙はもうもうと立ち上っている。

 レオンハルトとヒュウガは、そんなミナトに哀しみの視線を投げかけていた。


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