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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十六章-父子
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増援

 城壁内での攻防は続いていた。


 黒い鎧の一団は一様に皆精鋭で、腕前は確かなものだった。

 警備の兵はかなりの数が討たれ、敗色は濃厚となってきている。


「隊長! これは撤退準備をした方が……。」


「馬鹿を言え! 閣下がまだ城内に残っているんだぞ!」


 弱音を吐く部下に対し、喝を入れる隊長。


(せめて、あと十人の兵がいれば……。)


 警備兵の隊長がそう思っていたところに、切り立った山道を馬で駆ける一団が見えた。


「敵の増援か!?」


「いえ、鎧の形が違うようです。

 あれは……帝都の正規兵では?」


 騎兵の一団は、そのまま跳ね橋を駆け抜け、黒い鎧の兵を急襲していく。

 挟撃を受ける形となった亡霊たちは、自らの退路が断たれていることを知り、攻撃の手が鈍ってきたようだ。


 ここぞと攻撃を盛り返す警備兵と、それを補佐する騎兵たち。

 騎兵のサポートは的確で、警備兵の邪魔をすることもなく、かといって無意味な牽制ばかりでもない。

 よくできた連携で、亡霊たちは次々と討ち倒されていく。


 そんな中、警備兵の隊長の元に騎兵を率いていた者が駆け寄ってきた。


「貴君が隊長か?」


「貴様たちは?」


「『影の兵士隊(シャッテンクリーガー)』十五番隊だ、

 一命を受け助力に参上した。」


「『影の兵士隊』だと!?

 皇帝の飼い犬に恩を着せられる覚えはない!」


「今回の助力は貴君の言う飼い犬ゆえだ。

 連中は帝国を転覆させんと企てる叛逆者だからな。

 表立って叛意を示していない以上、まだ貴君らは帝国の臣民だろう?」


 騎兵隊の隊長の言葉を受け、考え込む隊長。


「何を考えこんでいるんだ?

 いずれ俺とお前は敵になるかもしれんが、今はこのまま奴らを潰す。

 それの何が悪い?」


 警備隊の隊長も腹を決めたらしい。騎兵隊の隊長からの言葉に苦笑いを浮かべ、顔を上げた。


「それもそうだな……。

 自分はダニー・ファルコ少尉だ。

 貴君の名、聞いておきたい。」


 少尉の言葉を聞き、騎兵隊の隊長もまた返答する。


「クリストフ・マイヤー曹長だ。」


「かたじけない。

 では貴君ら騎馬隊は右翼を頼む。

 我ら歩兵で左翼を叩く。」


「心得た。」


 クリストフが右手に握る片手半剣を大きく頭上へとかざし、敵陣右翼へと鋭く振り下ろした。

 騎兵隊はその剣の動きを待っていたかのように突撃し、黒い鎧の敵兵たちを次々と蹴散らしていく。


 左翼に突撃した歩兵隊も、この増援のおかげで戦意を盛り返したのだろう。

 今までは五分以下の戦いしかできなかった兵たちが、皆人が変わったかのように攻撃的に敵兵へと攻め始めたのだ。


 騎兵隊到着から数分後に、趨勢は決まった。

 およそ八十人ほどいた黒い鎧の兵たちは七十有余名が斬り斃され、残る数名すらも自刃して果てた。


 残る闖入者は一人……。


 城を振り仰ぐ少尉の目に、日を浴びて落下する人影が映った。


 続いてその目には、応接室のベランダから下を覗き込み、大きく口を開いて叫ぶエドガーが見えた。


 少尉の胸の中に嫌な予感が沸き上がった。

 急ぎ、落下した人影に駆け寄る。


 そこには、胸を抉られ瀕死となったアウグスト・ザウアーラント公爵が、苦悶の表情で倒れ、天を仰いでいた。


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