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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十五章-暗雲
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怪物

「んじゃ、そうなると、今日は登山かな?」


 朝日が昇ったばかりのアーカナスの町。


 身体をほぐしながら、ミナトが意気揚々と声を上げた。

 そんな彼女にレオンハルトは荷物を掴みつつ答える。


「その必要はないだろうな。

 コムがいなくなったことで跳躍距離が大幅に伸びる。

 負担も減る形になるから、麓から一気に跳べるさ。」


「へぇ。そうなるとどれぐらいの時間節約だ?」


「少なく見積もっても二時間は縮められる。

 少し仮眠を取る時間もできるだろう。

 連中がそれを許してくれれば、だが。」


「ちょっと待って。二時間って本当?」


 ヒュウガとレオンハルトのやり取りに、エレナが訝しげに尋ねてきた。


「ああ。コムの存在量値は皆が考えている以上のものになる。

 多分内部の『回路(サーキット)』が関係するんだろう。

 だからあいつがいなくなると、人ひとりがいなくなるのと変わらないぐらいの負担軽減になるんだが?」


「そう……二時間ね……。」


 どことなく悔しそうな表情をするエレナに、ヒュウガが不可解そうな声で話しかける。


「どうした? まるで何かマズそうな顔してるぜ?」


「え? ええ。

 その後の調査がどれぐらいかかるか考えたのよ。

 あの子がいないと色々と面倒じゃない?」


 そう言ったエレナに、レオンハルトが答える。


「その点は問題ないな。

 向こうの結果がどうあったとしても、コムを回収してくればいい。」


「どういうこと?」


 不思議そうに尋ねてくるミナト。

 レオンハルトはさらに答えた。


「別に戦闘と同時に調査する訳じゃないんだ。

 確かに急いではいるが、現在は前倒しで進んでいる。全部終わってゆっくりしてから調査を行えばいい。

 その気になれば、向こうの状況に俺が介入する事だってできるだろう。

 そうなればコムの回収はさらに早くなるはずだ。」


「理屈ではね……。

 ただね、レオン。あなた一つ大きな読み違いをしてるわ。

 私たちが全滅した場合はどうするのよ?」


 エレナは苛立った様子を見せつつ、レオンハルトに食ってかかった。

 それを脇で見ていたヒュウガが口を開く。


「全滅はしねぇさ。」


「その根拠は?」


「俺とレオンがいる。

 それだけでも十分な上に、牡牛のミーナがついてんだ。

 余程の戦力を用意しなきゃ、突破はできねぇよ。」


 ニヤリと笑って答えるヒュウガに向けても、エレナは食ってかかってきた。


「過大評価じゃなくて? それは。」


「そう思ってるんなら、それは過小評価だ。

 俺もレオンもミーナも、まだ底は見せちゃいねぇ。」


「そう……。

 だとしたら、あなたたちもあの人形(ひとがた)に負けず劣らずの怪物よ。

 力を持たざる者からすれば、ね。」


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