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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
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交錯

「すみませんね旦那方。

 今日はロクな仕入れができてなくて、こんな物しか出せませんで……。」


 宿屋『大鷲亭』の酒場で夕食をとろうと集まった四人だったが、給仕の男から差し出されたのは手書きのメニューだった。

 それも、かなりの数を削ったような風が見え隠れしている。


「ま、これだけの大騒ぎじゃ仕方ねぇさ。

 ソーセージと黒パン大目に見繕って、あとはシチューだな。」


 ヒュウガが状況を判断して、すぐに用意できそうなものをメニューの中からササッと決めていく。

 レオンハルトも苦笑いしながら、その注文に賛同し、ミナトからもエレナからも反対意見は出てこなかった。


 給仕が下がったところで、レオンハルトは小声でヒュウガに尋ねた。


「そっちの用件は完全に片が付いたようだな。」


「ああ。とりあえず十本追加だ。

 これで少しは余裕が出る。」


 続いてレオンハルトはエレナに尋ねた。


「友人のご様子は?」


「ええ、少し不安そうだったけど何とかするって言ってたわ。

 ねえ? ミーナ。」


「え? あ……うん……。」


 何やらはっきりしない返事をするミナトを、レオンハルトは訝しく思い、さらに声をかける。


「どうした? ミーナ。」


「ゴメン、なんか頭がボーッとするんだ。

 疲れてるのかな?」


「かも知れん。

 今日は食事をして、早く休むようにした方がいいだろうな。」


「うん……。」


 やがて注文した品がテーブルの上に並び、夕食の支度が整った。

 めいめいが黒パンを取り、ソーセージを取り分けて、シチューに口をつける。


「おっ、結構イケるぞ。

 なあ、レオン。『青龍亭』のシチューを思い出さねぇか?」


「え? ああ……そうだな。」


 スッと暗い影を落としつつ、曖昧に返答するレオンハルト。

 ヒュウガが何か気付いたような顔をして、さらにレオンハルトへ尋ねる。


「どうした? お前ぇさんも疲れてるクチか?」


 それを見たミナトがレオンハルトへフォローを入れる。


「ねぇ、ヒュウガ。『青龍亭』のシチューってどんなの?」


「ああ、それはな……。」


 ヒュウガはミナトの言葉に、気分良さげに答えてきた。


 レオンハルトはただ無言でシチューを口に運んでいく。


 エレナはそんなレオンハルトを、皆に悟られぬよう冷徹な視線で見つめていた。


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