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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
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屋根裏

「報告だ。」


 薄暗い酒場にて、ヒュウガは目の前にいる煙草をふかす女へと語りかけた。


「特急便ね? 顔に書いてある。」


「ああ。明日にはいけるか?」


「もちろんよ。」


 女はカウンターの横にある階段を昇っていく。

 ヒュウガがそれに続き、二人は屋根裏部屋へとこっそりと入っていった。


 屋根裏部屋には伝書鳩の他にも、大型の鷹や鷲、隼などが籠に入れられ飼われている。

 女は伝書鳩の籠の中から数羽を選び、小さな籠へ移し替えた。


「書簡は?」


「コレだ。」


 ヒュウガはそう言うと、胸ポケットからマッチ箱ぐらいの大きさに折り畳んだ紙片を取り出した。


「五枚もあればよかったか?」


「多分ね。この距離ならよほどのコトがない限りちゃんと届くわよ。」


 女は書簡を丁寧に丸め、小さな筒へと手際よく詰めていく。


「これでいいわ。

 さ、行っといで。」


 窓を開け放ち、五羽の鳩が飛び立つ。

 その様子を確認したヒュウガは、どさっと椅子へ腰かけた。


「お疲れみたいね。」


「アレはここにあったか?」


 にこやかに微笑みかける女に向けて、ヒュウガはぶっきらぼうな質問で答える。


 女は驚いた様子で返答した。


「あの筒? ええ、十本あるけど。」


「それを持っていきたい。全部だ。」


「相当ヤバいヤマみたいね……。」


 ヒュウガの真剣な眼差しを見た女は、それにつられてまた真剣な表情を見せる。

 そのまま女は、背後にあった戸棚の鍵を開け、中から人工心臓の調整機を十本取り出した。


「予備も残さないって相当よね。

 そんなにヤバい相手って何?」


「そんなコトは聞かなくていい。」


「それもそうか。

 知ってたらこっちもマズいかもしれないしね。」


 女はそう言うとあきれ顔できびすを返し、鳥たちに餌をやっていく。


 ヒュウガは十本の調整機を確認すると、それを小分けにしてポケットに突っ込み、屋根裏部屋から出て行こうとした。


「死ぬんじゃないよ?」


 背後から女が真剣な声で語りかける。


「そのつもりはねぇさ。」


 ヒュウガは振り向くことなくそう答えると、部屋の扉をそっと閉め、そのまま酒場へと降りて行った。


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