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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
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混乱

 フルシエンの関所は、大変な混乱にあった。


 なにせ直轄ではないにせよ、領地を治める大領主がいきなり殺害されたのだ。

 逃げ出そうとする者、潜り込もうとする者。混乱が混乱を生み、さらにそれに乗じようと人が集まり混乱を広めていく。


 いきおい人は殺気立つ。些細なことで騒動が起こり、それがまた混乱の種になってしまう悪循環が、関所の雰囲気を険悪なものにしていた。


「ひどいわね、これは。」


 検問所に人が殺到し、あちこちで罵り合いが起こっている状況を見て、エレナが暗澹たる表情でつぶやいた。

 そのつぶやきを耳にしたヒュウガが忌々しげに口を開く。


「これがテロってヤツだ。

 下らねぇワガママを力ずくで他人に押し付ける。

 結果、一番割を食うのは何もできねぇ善人だ。

 今だって逃げられるヤツぁ逃げ出そうと躍起になっちゃいるが、その裏じゃどれだけの人間が泣き寝入りだと思ってる?」


「そうだね……それがあるからやりきれない……。

 やっぱりアイツらは放っておいちゃいけないよ。

 頼むよ、ヒュウガ。『影の兵士隊(シャッテンクリーガー)』の本気ってのを見せてやってよ。」


「わかってる。

 だから、ここで少しばかり個人行動だ。」


 ヒュウガが旅装を肩に担ぎ直しながら言った。


「何をするんだ?」


 レオンハルトの問いに、ヒュウガがニヤリと笑いながら答える。


「なに、仲間に連絡を、な。

 ここなら手段も豊富だから、今日中に本部へ連絡も取れる。」


「時間はかかるのか?」


「いや、半日もありゃ十分だ。」


 ヒュウガの言葉に考えこむレオンハルトを見たエレナが、いかにも面倒そうな様子で語りかける。


「レオン。どうせこの混雑は一日、二日じゃ捌き切れないわよ?

 覚悟を決めて、しばらくは長逗留しかないんじゃなくて?」


「それしかないな。

 そうなると、学院長へ現状を詳細に報告して裁断を仰ぐしかない。

 場合によっては軍が動くかもしれん。

 その時の折衝は、ヒュウガ、君に任せるぞ。」


「了解だ。」


「宿は……そうだな。

 ここにある『大鷲亭』にしよう。

 夕方にここで落ち合う。

 それでいいか?」


「ん、わかった。」


 ヒュウガはそれだけ言うと、右手を軽く上げて雑踏の中へと入っていく。

 続いてエレナがレオンハルトに言った。


「私も別行動いいかしら?」


「何かあるのか?」


「ええ、近くに友人がいるのよ。

 さすがにこんな状況では心配になってくるわ。」


「だが、一人では……。」


「じゃあ、あたしが一緒に行くよ。

 一応体術も心得があるし。」


 ミナトが微笑んで名乗りを上げる。それを見たエレナとレオンハルトは、安心した表情で頷きあった。


「じゃあ、ミーナ。護衛よろしくね。」


「OK。まかせてよ!」


「なら俺は学術院支部で報告だな。

 コム、お前も付き合え。」


「解りました。」


 中空から小声で返答が返ってくる。

 それを見て女性陣はクスリと笑い、その場から離れていった。


 残されたレオンハルトたちもまた、市街地中央へと向かう。

 目的地は学術院支部だ。


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