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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
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推論

 翌朝。


 朝食の席で、レオンハルトが昨夜の件を切り出した。


「皆聞いてくれ。コムによる施錠は完了した。

 これによって、実質的に遺跡の封印は完了したと言える。」


「鍵深度は?」


 エレナが真剣な眼差しでレオンハルトに尋ねる。


「十六だ。これだけあれば間違いなく外敵を弾くことができる。

 問題は、コムが既に『リューガーの亡霊(ガイストフォンリューガー)』たちを発見したということだ。」


 レオンハルトの言葉に今度はミナトが反応した。


「思ったより早い……。」


 ミナトもまた、真剣な表情を見せ、うつむいて考えこむ。

 それを見たヒュウガが、昨夜聞いた話を思い出し、口を挟んだ。


「そうだな。正直、俺も聞いて驚いた。

 だが、そうなってくるとわからんコトがある。」


「なんだ?」


「敵の規模さ。

 先だっての遺跡襲撃は、罠を仕掛けるために五十人以上の兵をつぎ込んだ。

 その前の遺跡でも十人ほどやられてたんだろう?

 だとしたら全体規模でどれぐらいになる?」


「ざっと百人は見ないといけないわね。

 いえ、それとももっと?」


 エレナが自らの見解を述べたところで、再びレオンハルトが口を開いた。


「難しいところだな。

 百人では少ないが、二百人では多いかもしれん。」


「んー……でも、敵の規模は大きめに見ておかないとまずいよ?

 侮るのとは違うかもしれないけど、できないだろうとたかをくくっていたら、火傷しかねないからね。」


 ミナトの言葉を聞き、レオンハルトは真剣な表情で頷いた。


「君の言う通りだ。

 まず次のヴェルミナでは、ほぼ間違いなく二正面作戦を取ると見た。

 だとしたら、遺跡にしても、ザウアーラント公暗殺も、各々それなりの兵数を割いてくるだろう。

 最大規模で考えれば、各々に百の兵となる。」


「それに『教授』とシュヴァルベだな。」


 ヒュウガの言葉に、レオンハルトが瞳を閉じる。


「どうした? レオン。」


「いや、『教授』の総数がまるで解らないのが痛い。

 恐らく十数体という所だと推測はできるが、断定できないのがな……、」


「どちらにしても多くはなさそうだとは思うけどね……。」


「どういうこと? エレナ。」


 ミナトの質問に、エレナは真剣な表情を崩すことなく答え始めた。


「いい? ミーナ。

 残る数が一体だったら、そもそも『我々』なんて言葉は使わないでしょう?

 じゃあ、数体だったら? その場合は、貴重な一体を囮にするような真似は、勿体なくてできない。

 逆に数が多かったら? それだったらわざわざ遠慮して一体一体で攻めることなく、一斉に数で押してくるわ。

 そのどちらでもないということは、おおよそ十数体前後ということになるんじゃないかしら?」


「ま、こいつぁエレナの言う通りだろうな。

 なあ、レオン。あまりごちゃごちゃ考えても始まらんぜ?

 どうあったとしても、ザウアーラント公まで助けられはしねぇんだ。

 コイツばかりは割り切るしかねぇし、そもそもお前ぇの仕事じゃねぇ。」


 ヒュウガの言葉に、ミナトも頷いた。


「そうだよ。

 できないことまでやろうとするのは、レオンの悪い癖だよ?

 あたしたちの仕事は遺跡の探索と封印。それ以外の何物でもない、でしょ?」


 この言葉にようやく納得できたのか、レオンハルトはため息交じりに答えた。


「その通りだ。

 無駄だとは思うが、公には何らかの形で危険を通達しておこう。

 次の関所で、学術院の通信回線を利用して連絡するのが一番だろうな。」


「ザウアーラント公も馬鹿じゃないわ。

 既に二人の公爵が殺されているのを聞き逃すはずもない。

 手は打とうとしてるわよ。きっと。」


 エレナの言葉に皆が頷いた。

 レオンハルトはコーヒーを啜り、さらに考えた。


 ヴェルミナの遺跡にて最も重要視される要素(ファクター)は何か?

 シュヴァルベの思惑はどこにあるのか?

 そして『教授』の真の意図は?


 全ては闇の中だ。

 何はともあれ、まずは遺跡へと向かうしかない。


 ミナトの言葉通りに。


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