表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
111/171

洞窟

 暗黒の洞窟の中、緑の光が瞬いている。


 コムの目だ。


 そのコムの前には、半分土に埋もれた遺跡の扉の制御盤が存在している。


 コム何一つ言うことなく、施錠処理を行っているようだ。

 コネクタを展開している胸の制御盤に、明かりの明滅が繰り返されている。


 作業は滞りなく済んだらしい。


 コムはコネクタを扉の制御盤から取り外し、胸の中へと格納した。

 同時になぜか遮蔽フィールドを展開し、その中へと隠れていく。


 その理由はすぐに明らかになった。


 数分と経たぬうちにカンテラの灯りがちらちらと見え隠れし始めたからだ。


「ここでいいのか?」


 闖入者は男の声で、そう仲間に告げる。


「その通り。

 ここが遺跡に通じる洞窟で間違いありません。」


 女の声――シュヴァルベの声だ。


 角を曲がり、やや小広い空間に遺跡の入り口はある。

 カンテラの灯りに照らされたその空間に入ってきたのは、合計四人。

 シュヴァルベ、黒い鎧の男二人、そして……『教授』だ。


「どうやら、何か隠れているな?」


『教授』はそう言うと、肩から光線砲をせり出させ、何もない空間に向けて、光線を射出した。


 遮蔽フィールドが破られ、コムが姿を現す。


「コイツは!?」


 驚く鎧の男たちに対して、『教授』は冷静に口を開く。


「ふん、レオンハルトに付きまとうお坊ちゃんか。」


「その呼び方はやめてもらえませんか?」


 コムが不平そうに発声する。

 コムは続けて『教授』に声をかけた。


「『教授』、あなたはあと何体いるんです?

 そもそもあなたは、本当にランドルフ・カウフマンなのですか?」


「その質問に答える義務はあるのかね?」


 嘲笑うかのような『教授』の声に、コムの目が青く(・・)光った。


「それはもっともだ、ランドルフ。

 では今ここにいる君を破壊しておこう。」


 コムはレオンハルトの声(・・・・・・・・)でそう言い放つと、自身の身体の前に魔導球(サーキットスフィア)を展開した。


 その魔導球の紋様を見たシュヴァルベは、慌てた声で叫ぶ。


「いかん! 下がれっ!!」


 魔導球が収斂し、魔法が発動した。


 その瞬間、『教授』の上半身が抉られたように消滅し、そのまま制御を失った身体が、ドサリ、と倒れこむ。


 高位魔法『穿孔』。


 空間そのものを穿ち、あらゆる物質を消滅させる魔法。

 レオンハルトでもかなりの集中力を必要とする魔法だ。


「こいつ……機械の癖に魔法をっ!?」


 鎧の男の一人が驚愕のあまり声を上げる。

 そんな男の叫びに、コムは再びレオンハルトの声で答えた。


「君は勘違いをしている。

 本来魔法は機械が使うものなのだ。

 むしろ人間が魔法に適応してきたといっていい。

 魔導士とはそういった『人を超え始めたもの』なのかもしれないな。」


 それだけ言うと、コムは再び遮蔽フィールドを張り、その中へと姿を消した。


「では……また会おう、姉さん(・・・)。」


 洞窟の中に、コムの最後の言葉が響く。


 取り残されたシュヴァルベの表情は、憤怒とも、恐怖とも取れるものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ