孤児院
「どうも、シスター・ローザ。」
レオンハルトは、目の前にいる老シスターに挨拶する。
「これは少ないですが寄付金です。
子供たちに美味しいお菓子でも買ってあげてください。」
「いつもありがとうございます。
ユリアンは、あの義足を大変気に入っていますよ。
他の子もあなたのおかげで希望を持てるようになりました。
本当に感謝の言葉もございません。」
シスターは半ば涙ぐんだ声でレオンハルトに感謝の言葉を述べる。
シスター・ローザ――レオンハルトの母と同じ名のシスター。
彼女は孤児院の教師だ。
孤児院では、戦災や反体制のテロリズムによって孤児となった少年、少女が数多く育てられている。
その子たちの多くは様々な形で身体の一部が失われていた。
腕のない子、足のない子、視力を奪われた子や声を失った子もいる。
五年前。レオンハルトはこのシスターと知り合い、そんな子供たちに何かできることはないかという苦悩の中にいた。
遺跡工学の知識を総動員し、様々な義肢を作ってみた。
失われた視覚を補佐するための眼鏡も作った。
声を肩代わりする発声装置も作った。
だが、どれも重すぎたり、大きすぎたりと使い物にならなかったのだ。
二年前――そんな彼に望んでいた物が与えられた。
最大級の遺物。最高の性能を持つ義手だ。
彼は二年間、研究に没頭した。
何を動力とし、何がどう動くのか。
それを徹底的に解析し、その複製品をいくつも作り続けた。
ようやく満足のいくものが作成できた時、何人かの子供たちへと試験的に与えて様子を見てもらった。
結果は成功を収め、レオンハルトにも自信がついた。
自分にも人は十分救えるのだ、と。
だから、彼は生きている。
多くの人に希望を与えるために。