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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十四章-兆候
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 崖下の遺跡から数十ロークラム程、かなり離れた森の中で、『リューガーの亡霊(ガイストフォンリューガー)』たちは自軍の現状を確認していた。


あの女(・・・)はどうした?」


 隊長である装飾のある鎧を身に付けた騎士は、脇に控える副官へシュヴァルベの所在を尋ねた。


「はっ……用件があると、魔法で……。」


 副官の報告を受けた騎士は、渋面を作って言葉を漏らした。


「腕は立つ。情報も正確だ。

 そして『回路(サーキット)』による魔法を使えるのは何物にも代え難い。

 だが、こうも勝手をされると、こちらの統率にも影響が出る。」


「仰る通りです。

 なお、損害ですが……。」


「芳しくないか?」


「はっ……。」


 副官の報告では、今回の襲撃に割いた人員は六十四名。

 うち、帰投できたのは重軽傷者含みで三十三人だったという。


「半数か……。」


「加えて、先のクロウフでも、先走った兵が十名近く戦死しております。

 合わせれば全兵員の約四割が、この二件の作戦で損耗しているのが現状です。」


「だが、好機であることは間違いない。」


 不安げな表情を見せる副官に、断固とした表情で答える騎士。


「今回、我々は仇敵である三公爵のうち、二人を討ち滅ぼした。

 残るはザウアーラントのみ。

 これにあのバルメスの遺物を用いれば、帝国の転覆も十分可能だ。」


「しかし、それをあの小癪な英雄たちが黙って見ているでしょうか?」


「それはあの人形(ひとがた)に任せる。」


「教授の置き土産……ですか?

 皮肉なものです。公爵閣下を亡き者にした男の研究結果で復讐を成すのは。」


「だが、魔法の威力は、今回の襲撃で十分に味わったはずだ。

 それに加えて、気功術の狼もいる。

 人外には人外をぶつけるしかない。」


 水筒に口をつけ、水を流し込む騎士に向け、副官が再び口を開いた。


「隊長……どうしても一つだけ、気になる問題があります。」


「何だ?」


「あの人形に意思はあるのでしょうか?」


「それについては以前姫君ご自身が話された通りだ。

 ただ模擬的に人格と記憶を用意したに過ぎない、とな。」


「そうですか……ただ、自分にはどうしても、それが信じられないのです。」


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