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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十三章-亡霊
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撤退

 数分前……。


 レオンハルトの指示を受けたヒュウガは、ミナトとシュヴァルベの戦いを取り巻いている一団へと躍りかかった。


 狙うは鎧に覆われていない生身の箇所。


 幸い黒い鎧の連中は、動きやすさを重視しているからか、比較的軽装だ。

 頭部、脚部、上腕に手首と狙える箇所も多い。


 数人いた敵のど真ん中に飛び込んで、顔面を割り、手首を砕き、脚を、腕をへし折っていく。


(クソっ……!!)


 地に臥せり痛みに身悶える敵を見て、ヒュウガは心の内で、自らの『弱さ』に歯噛みしていた。


(今の俺じゃ、アイツの足手まといにしかならねぇ。

 せめてコイツがまともに動いてくれりゃぁ……。)


 服の胸、心臓の辺りを強く握りしめるヒュウガ。


 剣戟の音が耳に響いた。

 ヒュウガは我に返り、ミナトとシュヴァルベの戦いに目を向ける。


 ミナトは斧の柄でシュヴァルベの剣を受け、斧の腹で銃撃を防いでいる。

 その一方で、シュヴァルベはミナトの攻撃を華麗に躱し、お互いに決め手に欠けている状態だ。


 だが、そのシュヴァルベの動きも、徐々に鈍り始めている雰囲気がある。


 疲労か? それとも……。


 大振りの剣が斧の柄で受け流される。


 ミナトは、あえて大きい逆袈裟で、探りを入れた。

 シュヴァルベの躱し方は今までと違い、見切るような直前の動きではなくなっていた。


(間違いない!)


 ミナトは確信した。


(向こうの動きは鈍っている。

 それも誘いをかけているんじゃない。限界が近いんだ!)


 そう考えたミナトは、刃による斬撃から、スパイクによる刺突に切り替えた。

 槍の要領で次々に繰り出される攻撃が、シュヴァルベの顔から余裕を削り取っていく。


 そこへ凄まじいまでの爆音が轟いた。


 レオンハルトの『轟雷』が炸裂したのだ。


 一瞬動きを止めたミナトをシュヴァルベは見逃さず、大きく距離を取る。


「くっ!?」


「流石ですね、牡牛のミーナ。

 今回は負けを認めましょう。」


 そう言うと、シュヴァルベは後ろに控えた隊長に目で合図をした。


 隊長が剣を大きく掲げると、どこからともなくラッパの音が響いた。

 無事な兵、軽傷の兵は、それを合図に撤退を開始していく。


 ラッパの音が響く崖下。

 レオンハルトの目の前の人形(ひとがた)は、よろりと立ち上がり、ノイズ交じりの声で彼に語りかけてきた。


「レオンハルト君、今回は君の勝ちだ。

 だが、これで色々と情報を得ることもできたよ。

 我々(・・)はいつか君を殺す。

 震えて待っているがいい。」


 レオンハルトの背筋に、悪寒が走る。


 さらに大きく飛び退く彼の前で、人形は大きな衝撃波と共に、粉々に爆散していた。


 全ての証拠と共に。


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