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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十三章-亡霊
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力の在処

 数回の『転移』の後、人通りもなくなった街道筋で、レオンハルトは不意にコムへと呼びかけた。


「コム。ここならいいだろう。

 一回姿を見せて、ヒュウガに挨拶しておけ。」


「あ、そうでしたね。

 今、姿を見せます。」


 そんな声が聞こえたかと思うと、レオンハルトの顔の横辺りに、コムが遮蔽フィールドを解いて姿を現した。


 その様子に少なからず驚いた様子のヒュウガを見て、ミナトからもエレナからも笑いが漏れてきた。


「なんなんだ? コイツぁ一体……。」


「僕、コムと言います。

 レオン様の相棒です。」


「俺の仕事の上での相棒だ。

 様々な検査器具の代わりになる機能が満載された、自律稼働の機械になる。

 疑似的ではあるが人格もあるんでな。一緒にいても退屈はせんよ。」


「ああ……そういや教授の家でも見たな。

 あン時は世話になった。助かったぜ。」


「いえ、それほどでも……。」


 どことなくはにかんだ風の声を発するコム。

 そんな様子を見たヒュウガは、またどこか驚いた表情を見せた。


「慣れてくると、結構かわいいんだよ、この子。

 ちゃんとしたお話もできるし、相談相手にもなってくれるから、あんまり『機械だ』なんていう偏見は持たない方がいいよ?」


 ミナトはニコニコ顔でヒュウガに語りかける。


 ヒュウガは少し何かを考え、改めてコムに質問した。


「なあ、お前ぇさん何ができる?」


「いえ、検査や探査機能は一通り充実してますが……。」


「いや、そうじゃねぇ。戦闘用の機能さ。

 この間見せたのは、防御用の障壁だったな。

 他にはどうだい?」


「大したことはできませんよ?

 相手を電撃で一時的に戦闘不能にしたり、目くらましの閃光を発したりするぐらいです。」


「ナルホドね……。」


 ヒュウガはさらに考えこみ、ややあって再び口を開いた。


「あと、レオンの義手をどうにかした……ありゃぁ、なんだ?」


「あれはこいつが義手のセーフティシステムだからだ。

 客観的に見て、状況が危険、もしくは大きい問題があると判断された場合のみ、俺の左手に埋め込まれている『回路(サーキット)』を起動させられる形になっている。」


 コムの代わりにレオンハルトが答えた。

 その答えに納得がいかないような表情を見せ、ヒュウガがまた疑問を口にする。


「そんな判断を、お前ぇが他人任せにしてるってのは信じられんな。

 以前なら、手前ぇの力は全て手前ぇが制御する雰囲気だったぜ?」


「そうしたいのは山々なんだが、なにせこの義手はブラックボックスの塊だ。

 この二年でようやく基本機能をコピーした複製品(レプリか)を作るところまできたんだ。

 この『回路』の解析はこれから始める形になる。」


「フ……ン?

 ま、それがお前ぇの方針なら文句は言わんが、あの力はできるだけ制御下に置いておいた方がいいぜ?

 イザって時に『使えません!』は致命傷だ。」


 ヒュウガはそれだけ言うと、コムへと鋭い視線を流した。

 コムはその視線を受けて、若干後ずさるような動きを見せる。

 それを見たレオンハルトは、重い表情でヒュウガの言葉に一言だけ答えた。


「そうだな、その通りだ。」


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