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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十三章-亡霊
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籠城

「遺跡について聞いておきたい。

 今回向かうのはクラレスでいいんだな?」


 翌朝、朝食の席でヒュウガが切り出した。


「その予定だ。

『転移』を利用して向かうため、あまり時間はかからんとは思うが……。」


 レオンハルトのその言葉を聞き、エレナが心配そうな声で割り込んできた。


「でも、大丈夫? 人間が一人増えてるのよ?

 存在量値の再計算は必須でしょう?」


「あー……その『そんざいりょうち』ってなに?」


 困った顔でミナトが口を挟む。

 ヒュウガもまた、同じような困惑した表情を見せている。


「存在量値とは、様々な物体の持つ固有の情報だ。

『転移』で生成する超空間の通路を確実に潜り抜けられるようにするため、魔導学的な方程式の下、その物体や存在の情報を線形に展開して……。」


「ま……まあ言ってみれば、その存在を示す暗号のようなものよ。

 人間を始めとする生物のような複雑な存在は、その暗号も複雑なの。

 だから、大荷物が一つ増えるより、人間が一人増える方が、『転移』の魔法を使用する術者の負担が大きくなるってこと。

 解ってくれたかしら?」


 エレナが焦った様子で助け舟を出す。


 ミナトもヒュウガも、向けている顔がレオンハルトからエレナへと移っていることから、流石にレオンハルトの説明は難しすぎたのだろう。


 レオンハルトは不満を湛えた表情を見せつつ、再び口を開いた。


「今までの感覚を考えれば、ヒュウガ一人を追加する程度なら、まだ問題ない。

 ただ、跳べる距離が短くなるのは避けられんな。

 休憩の時間も長く取る必要がある。」


「その辺は任せるが……。

 だが、次の遺跡、問題があるぜ。」


 ヒュウガが真剣な瞳でレオンハルトに語りかける。


「問題とはなんだ?」


「アルバーンの殿様が、クラレスの遺跡に籠城しやがった。

 俺らが何者だろうと、抵抗は間違いねぇな。」


「やっぱり……。」


 ミナトがヒュウガの言葉に大きくため息をつく。


「話してたんだよ。

 もしお偉いさんが籠城したらコトだって。」


「その不安は見事に的中しちゃったわけか……。

 どうするの? レオン。」


 エレナからの問いに、レオンハルトは静かに答えた。


「当然、まずは交渉からだ。

 武力による制圧は最終手段にしなければならない。」


「ソイツぁ無理な相談だ。

 連中も相当に殺気立ってる。

 交渉の余地なんざ、ないと見たが?」


「それでも、だ。

 交渉もせず、いきなり暴れまわるのは、双方ともに利が見えてこない。

 そこを解ってもらうための交渉だ。

 例え無理筋でも、やっておかねば話は拗れる一方だろう?」


 何かを言いたげなヒュウガに向けて、ミナトが声をかける。


「まあ、さ、ここはレオンのお手並み拝見といこうよ。

 ダメならダメでそこから改めて考えればいいし。」


「しゃあねぇな……。

 じゃあ、キッチリまとめてくれよ? 大魔導士さん。」


 レオンハルトは、どことなく困った色の見える微笑みを浮かべ、席を立った。


 残る三人もめいめい立ち上がり、皆、一旦部屋へと戻る。


 十分後、宿の前には、旅装を検めた四人と、物も言わずこっそり上空を浮かぶ一人が集合し、クラレスへと踏み出していった。


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