二人の神子8
一同は馬車に乗っていた。
「んー!歩かないで済むの凄く楽!」
「そうだな、まさか馬車を手配してもらえるとはな」
「オルロージュにありがとうって、今度会ったら言わないとね」
遡ること約1時間前、ノエル達は街を出ようとすると
「あんたら神子様御一行だろ?オルロージュが、西の街まで馬車で連れてってやれって言われてんだ!乗ってけ」
アレンは遠慮しようと思ったが折角の好意を無下にするのも……と悩み五人で相談して馬車に乗ることにした。馬車は広く立派な造りで、一般人がそう簡単に乗れないような高級な馬車だった。一同は緊張し、キュッと縮こまって座っていた。
1時間後、馬車に慣れたのか一同は普通に座るようになり、外の景色を楽しんでいると、広い湖が見えた。青く綺麗な湖に一同は感嘆の声を漏らす。
「わぁ……綺麗」
しばらくすると馬車が止まり
「着きましたぜ、それでは良い旅を」
「ありがとうございました」
一同は馬車を降り街に入っていく。街を歩いていると噴水が多いことにノエルが気付く。
「綺麗な噴水がたくさんある」
「ほんとだ……綺麗だね。そういえば湖の乙女ってどこにいるの?」
「それがわかんないんだよねー……ってこおでお願い!みんな情報集め手伝ってくれない?」
マイラがパンッと手を合わせてお願いした。
「構わないぜ」
一同は解散し精霊の情報を集めることにした。
マイラは商店街に向かい商人に話を聞いて回った。
「お嬢ちゃん、湖の乙女と契約する気かい?」
「湖の乙女は気まぐれわがままだからなぁ」
「といっても人間の俺たちには見えないから、どこにいるかわからんな!ガハハ」
「もー未契約の精霊は人間に見えないから、情報が全然集まらないよ……」
「人ならざるものが見えるなんてマイラは呪いの子だ」
そんな言葉が脳裏によぎる。
「っ!!今は忘れてたかったな……」
マイラは渋い顔をしてため息をつく。
一方ノエルは、瞑想をして精霊の居場所を試みようとするが、人が多く賑わっていて集中ができず、街を歩いて回ることにした。
商店街にはマイラがいるのを発見し、野生の動物にはダグラスが話しかけてるのを見て、どこを探そうかノエルは悩む。すると以前マイラが生身の人間には未契約の精霊が見えないことを言っていたのを思い出した。ノエルは人間じゃない人を探し始めた。
「ここも人間……あっちも……」
ノエルは噴水を一周回って次の噴水に向かっていく。全部の噴水を見終えて集合場所に戻ろうとした時、
「よぉノエル、昨日ぶり」
「カルタ……?」
「なんで疑問形なんだよ。正真正銘カルタだよ」
「こんなところでどうしたの?」
「手紙配達だよ。ところでノエルは何してんの?」
「湖の乙女探し……」
「なんだそんなことか。場所知りたいか?」
「うん、教えて欲しい」
「そうだな……気まぐれで動いてなければ、湖の側の祭壇にいるぞ」
「そっか、ありがとう」
「じゃあ俺もう次行かないとだからじゃあな!」
「うん、またね」
カルタは駆けて人混みに紛れて消えていった。ノエルは集合場所に戻る。
「湖の乙女の情報掴めた人挙手!」
アレンが言うと誰も手を挙げない中ダグラスが挙手する。
「すっげーわがままで契約を諦めた精霊使いがごまんといるらしいぜ!」
「居場所は……?」
「ごめん、そこまではわからなかった」
「他には誰かいる?」
ノエルが小さく手をあげる。
「えっとね、カルタがいて……湖の近くの祭壇に挙手普段はいるって言ってた」
「ナイス情報!早速向かおう!」
マイラがグーサインをして喜んだ。
一同が祭壇に向かうと1人の少女が座っていた。
「貴方が……湖の乙女?」
「なんじゃ、其方ら我が見えるのか……ふむ、神子御一行か。何の用じゃ?」
「契約を……結んで欲しいです」
「ふむ、契約か……そうだな……我もそろそろこの地に飽きてたとこだしな……」
「じゃあ契約を……」
マイラが一歩前に出ると湖の乙女はクスクスと笑いこう言った。
「もちろん嫌じゃ!」
「えぇ!?今のは契約する流れでしょ?もぉ!!」
マイラはわなわな震えだし少女はそれが面白いのかさらに笑った。