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図書室


「も、申し訳ございません!!せっかくスミト様に付き添っていただいたのに、私が先に眠ってしまって......毛布まで掛けて頂いて......」

「すみませんじゃない、この場合はありがとうだ」

「すみません!あ、ありがとうこざいます......」

「それに、昨日俺が付き添ったのは俺がそうしたかったからだ。俺の意思で、俺が勝手に付き添っただけだ。謝ることじゃない」

「しかし......」

「まぁそんなこと些細なこと、気にするな。本当に気にするべきは......」


俺は目覚まし時計を片手に持ち、それをロメリアに見せる。

短い針は9、長い針は30の所を指していた。

つまりそれは、遅刻を意味する。


「ッ!?」

「気付いたかロメリア。だがもう遅い......手遅れなんだ。既にホームルームは終わって、一限目が始まっている頃だろう」

「す、すみません!私が......眠ってしまっていたばっかりに」

「いや、いつもロメリアに起こしてもらっている俺が悪い。ロメリアばかり頼るなという俺への罰が下ったのだ。気にすることは無い」

「し、しかし......」

「もう過ぎてしまったものは仕方ない。次から気を付ければいいだけの事だ。そんなこと誤っている暇があったら、さっさと着替えて行くぞ!」

「は、はい!」


結局、俺達は一限目の途中に学校へ着いた。

ここで発生した大きな問題は、俺とロメリアが全く同じ日に全く同じ時間で遅刻し、さらに同じ時間に登校することになるという事だ。

つまりこれは、「同じ理由で遅刻した」ということになる。

たまたま、偶然、そんな可能性もゼロではないが、ほぼありえない事だ。

よって、同居しているとまでは考えられていないにしても、何かしら俺とロメリアの間に関係があるということは確実にバレてしまう。

それは非常にまずいことだ。

だから俺は、昇降口でロメリアに言った。


「俺はしばらくそこら辺をブラブラしてから教室に入るよ」

「......?何故ですか?」

「俺の方がもっと遅く入れば、ロメリアとの関係性を疑われる要素も薄くなるはずだ。全くの同着でなければ、偶然だと言い張ることも出来る」


いっそ俺は休んでしまった方が確実なのだが、ロメリアのみ学校へ行かせる方が心配だ。

心配というか、危険だ。

ということでロメリアにも納得してもらって、俺はもう少し遅れて教室へ入った。

俺が入った時には、二限目が始まっていた。


「何だ、琴代海も遅刻か。授業中にはよく眠るくせに、遅刻だけはしなかったのにな」


はははと教室で笑いが起こる。

俺は、苦笑しながらすみませんとだけ言って自分の席へ座った。

どうやらロメリアとの関係性は、疑われていないようだ。

まぁ、俺の遅刻の理由は寝坊で、ロメリアには家の事情だと言わせたからな。

転校生というレッテルを、まだまだ利用出来るだけ利用させてもらう。


「まぁいい。で、どこまで言ったっけか──────」


とりあえず危機は去った。

これからは遅刻しないように気をつけよう。

次に同じような事があれば、今度こそバレてしまうだろうからな。


──────────


「よぉ琴代海(ことよかい)。朝居なかったらどうしようかと思ってたが、ちょうど良かった」


休み時間。ロメリアと一緒に歩いていると、廊下で先輩に会った。

先輩は上の階だから、普通こんな所には居ないはずだが。


船引(ふなびき)先輩。図書室から出られたんですね」

「俺を引きこもりか何かだと思っていたのか」


てっきり、図書室に封印でもされているから出てこないのかと。

それか、もはや図書室に住んでいるかのどちらかだ。


「んなわけあるかよ。そうだ、連れの嬢ちゃんも一緒で良いから、昼にでもウチに来い。他の友達も連れて来ていいぞ」

「ウチ?」

「あぁ悪い、図書室だ」


実際に嬢ちゃんって言う人、初めて見た......というか、この人「図書室」のことを「ウチ」って言うのか。

やっぱり住んでるんじゃないか。


「前と違う女だな。こんな堂々と浮気するなんて、隅に置けねぇ奴だな」

「違います。ロメリアには学校を案内していて、図書室で会ったのも友達です。で、何の用ですか?」


うざいジジイのような弄り方をしてくる先輩だ。

本当に一個上か?実は留年していて、年齢はもっと上なんじゃないのか?


「まぁ、とにかく来てくれ。そんな重要な事でもないからさ」


重要じゃないのなら、別に今言っても良いだろうに......本当によく分からない人だ。

ボケてるのか、天然なのか、ただのイカれた人なのか。

この人、友達とか居るのか?何だか心配になって来てしまった。

要件だけ言った先輩は、すぐさまどこかへ行ってしまった。

今度は図書室ではなく、教室へ向かっていることを願う。


「まぁ、行くだけ行ってみるか」

「はい」

「どっか行くのー?」

「うおっ」


文恵だ。

いつも驚かせやがって、相変わらず眠たそうな目をしてこちらを見ている。


「図書室だ」

「またぁ?好きだねぇ図書室」


まぁ嫌いな訳では無いが、好きだから図書室へ行くって訳でも無い。

料理本が置いてなければ、恐らく図書室へ行くことは無かっただろう。


「私も行こ。ロメリアちゃんと二人だけってのは、ちょっとねー」


ジトっとした目でこちらを見てくる。

この俺がロメリアに何かするとでも?

今更だ。逆に、一緒に住んでいながら何もしていない俺を褒めて欲しいね。


「別に良いが。そんな面白い事はないと思うぞ?」

「いいよ。ずっと教室で寝てても暇たし。たまには運動しないとね」


図書室まで行くことを運動と捉えている所が文恵らしい。

相変わらず運動嫌いの面倒臭がりだ。

しかし、行きたいというのなら別に連れて行っても構わない。

という事で昼休み。

俺達三人は、先輩に言われた通り図書室へと来ていた。

ロメリアにとっては初の図書室。あぁでも、校内を案内する際に一度だけ来たか。

ロメリアの世界にも本くらいある。ただ、文字や図ばかりの魔術本だったり、歴史の記述された分厚い本だったり。娯楽用の本と言えば、過去の英雄を物語った小説しか無いと聞いた。

まぁ、まだ文字の読めないロメリアにとっては、どれも意味不明な文字を羅列した紙の束に過ぎない。それも最近では、結構読めるようになって来ているようだがな。まだ一人で本を読むには難しいのだ。


「どうだロメリア」

「はい、色が......いっぱいですね」

「当たり前じゃん」


なるほど。確かに古い本というのは色が暗めのが多いかもしれない。この時代は、雑誌やラノベなどの表紙がカラフルに彩られているようなものが多い。

そんな所から違いが出て来るのか。


「お、居るな」


先輩が入って来た。

どうでもいいが、先輩はロメリアにあまり興味が無いようだ。

ロメリアを見る人全員がそうという訳では無いが、殆どの人は男女関係なく見蕩れてしまう。

それほどに美しく、そして魅力的だからだ。

それに転校生だしな。

だが先輩は、ただの俺と一緒にいる人としか見ていないように思える。

人に興味が無いのだろうか。


「おいおい琴代海、両手に花とはいいご身分じゃねぇか」


うるせぇ。


「で、お前らに来てもらったのは頼みたいことがあるからだ」

「はい」

「好きな本を、1冊づつ持ってっていいぞ」

「......え?」

「もう図書室も要らなくなってしまったみたいでな。全部片付けて物置にするそうだ」


先輩は、突然そんなことを言い出した。

図書室が要らない?

物置になる?そんなことがあるのだろうか。


「えっと、つまりこの図書室は潰れる......という事ですか?」

「そうらしい。まぁ元々、ただ本が置いてあるだけの公開された倉庫みたいなものだったからな。本を片付けるだけでも、随分と綺麗になる」

「いやいや待ってください。初耳ですよ」

「だろうな。俺も昨日知ったばかりだ」


俺は驚きを隠せない。別に図書室に思い入れがあるとかそんなんしゃないが、こんな大きめの施設が学校から無くなるという事があるんだと驚いているのだ。

学校に図書室があるのは当たり前。そう思っていた。


「利用する人が本当に数人しか居ないそうで、だったらもっと有意義に使おうと話が、先生達の間で出たらしい。多目的室や物置。これだけ広い部屋なら、どうとでも使える」


そう淡々と答える先輩は、思っていたよりも事実を簡単に受け入れているように見えた。

あの年中無休で常に図書室に居る先輩が......だ。

誰よりも図書室を愛し、もはや図書室の一部と言っても過言ではない程に通い詰めていたあの先輩がだ。

俺はそんな先輩に、違和感を覚えた。


「本は全部寄付するってよ。だから、今のうちに好きなのを取っていけ。少しでも通ってくれた事の、せめてもの礼だ」

「そんな......」


正直言って、図書室が無くなることだけに関しては俺は構わない。

確かに少し寂しいとか思うが、それは恐らく人間として本能的な感情だろう何かを失うということは寂しい事だと、そう認識しているからというだけに過ぎない。

図書室だから寂しいとか、そういう訳では無いのだ。

だが......。


「仕方ないだろう。利用者が少ないのは事実だ。だったらもっと、価値のある使い方をして欲しい」

「......」


それは本心だろうか。

そう言う先輩の表情は、どこか寂しげに見えた。

だが今の俺にはどうすることも出来ない。

ただ言われた通り、好きな本を手に取るだけだった。


「要件はそれだけだ。さっさと教室へ戻れ」

「なんでそんな命令口調なのか分かりませんが、ありがとう......ございます」


で、いいのか......?

ドンマイですとか、元気だしてくださいとか、そう言った方が良いのではないだろうか。

そんなことも思ったが、俺達はそれ以上何も言わずに図書室を離れた。

教室への帰り道になって、ロメリアは一息着くように話し出した。


「先輩さん、良い方でした」

「そうだな。わざわざ俺達に本をくれるなんて。あれ多分、先生に許可得てないぞ」

「え!?わ、悪いことって事ですか!?」

「悪いことっちゃ悪いことだけど、私達に感謝しての行動な訳だし。優しさのある行動だよね」

「優しさもある悪......ですか......む、難しいです」


まぁ、心優しきロメリアには理解しにくい事だろう。

別に理解する必要はないと思うし、むしろ今のままのロメリアでいて欲しい。


「しかし、先輩さんは寂しそうでした」

「ロメリアにも、そう見えたのか?」

「え?そうだった?」


上から目線にはなるが、ロメリアは中々の洞察力だ。

文恵はいつも通りだ。安心した。

俺は元々、先輩が図書室を好きだということを知っているからこそ、それが嘘だと見抜けたのだが......ロメリアは初見で見抜いた。

まぁ、本心から図書室は要らないと思っている可能性は抜きにしてだが。


「先輩さんのことは詳しく存じておりませんが、恐らく図書室が無くなってしまうという事実を受け入れられていないのでしょう」


今の所、ロメリアと全くの同意見だ。

だが、そんな事が分かった所でどうすることも出来ない。

もう決まったことだ。先輩を元気付けることぐらいしか......。


「.....スミト様、私に一つ提案があります」

「提案?」

「はい。私達で、あの図書室を守りましょう」

「守る?」


ロメリアは立ち止まり、俺の方を向いた。

至って真剣な表情。

ふざけて言っている訳では無いようだ。


「方法は......まだ決めていません。ですが、先輩さんの為にも、図書室は無くなってはいけないと思いました。それに、私もまだ本を借りられていませんので」


そうだな......本が好きな人は先輩だけでは無い。

人数が少ないとはいえ、図書室が無くなって悲しむ人は他にも居るはずだ。


「俺達で図書室を守る......か。ふっ、何だか漫画みたいな話だな」


子供のような発想に思わず、鼻で笑ってしまった。

それを見てロメリアは、少し恥ずかしそうに言った。


「変......でしょうか?」

「いいや、面白そうだ。乗ったぜ」

「この流れだと、私も手伝う感じ?」


.....そりゃあそうだろう。

これだけ話を聞いておいて、文恵だけ参加しないというのは許されない。お前も手伝うんだ。


「えー、面倒くさ」

「まぁ無理にとは言わない。色々と、付き合わせて悪かったな。ここからは俺とロメリアの二人で解決しよう」

「二人で.....」


すると文恵は、何故か少しムッとして。


「やっぱ私も手伝う」

「急にどうした?」

「お前ら二人じゃ心配だからな。私が一肌脱いでやるよ」


ニッと、自信ありげな笑顔を見せる文恵。どういう風の吹き回しかは知らないが、手伝ってくれるのならありがたい。

だが、方法が決まっていないのではどうしようも無い。


「まずはどうやって図書室を守るかだ。方法を探ろう」

「はい!」

「りょうかーい」


俺達は話し合いを一旦終わらせ、教室へと戻った。



──────────



文恵は、小さい頃から面倒臭がりだった。

運動が苦手だからとか、動くの嫌だとか、そういうことでは無い。

本を読むのも、ゲームをするのも、何かに集中することを嫌うようだった。

まるで、本気になるのが嫌かのように。

ダラダラと過ごしている事が多かった。


「文恵」

「何?」

「何か良い案は無いか?」

「無い」


即答だった。


「一肌脱ぐんじゃなかったのか?」

「まぁそうは言ったけど、私は手伝うだけだから。私が何か案を出したり、仕切ったりすることは出来ないよ」


ふむ。なるほどな。

確かに、その手のことが文恵は苦手だ。

だが今は、手伝うと言ってくれただけでも嬉しい。


「別に図書室がどうなろうと、正直私には関係無いしなぁ」

「まぁそうかもしれないが。やはり、今まで当たり前のようにあったものが無くなってしまうというのは、寂しいだろう?」

「それも仕方ないんじゃない?だって、図書室が無くなる要因ってのは、利用者が少ないからでしょ?」

「あぁ、恐らくな」


それが一番の理由だろう。

だが、本好きを一気に増やす事なんて出来るわけない。


「利用者が少ないって事は、興味無い人が多いって事だよ」

「そうだろうな」


実際、今目の前にいるこの文恵もそうだ。

図書室というか、本そのものに興味が無い。読書が好きでは無いのだ。


「どうすれば興味が出るんだ?」

「んー.....例えば、もっと本の種類を増やすとか?」


確かに。

置いてある本の種類を増やせば、その分面白い本に出会う確率は高くなる。

種類が少なければ、選ぶものも選べないという訳だ。


「だが、そもそも本に興味が無いんじゃ、面白そうな本があるかどうかなんて、読まない人からすればどうでもいいんじゃないのか?」

「んー、じゃ興味を持つようにする」

「どうやって?」

「分からん」

「まぁそれが難しいから、今考えているんだけどな」


うーん......と、俺達は頭を抱えた。

するとロメリアが口を開く。


「本を紹介するのはどうでしょう。私が通っていた場所では、友人同士で本を薦め合うということをやっておりました」

「ほう?」

「信頼出来る知人から薦められるのなら......という人も、結構居らっしゃるかと」


紹介か。

例えば、有名人なんかが薦めている本なら、興味が湧く人もいるだろう。自分の好きなアイドルとか、アーティストとか。『これで人生が変わった』なんて言われれば、興味が出るのではないだろうか。

それもジャンル別に紹介することにし、役立つ本から面白い本まで豊富に揃えよう。


「それだ!」

「だな。だが、問題はそれに気付かないということだ」

「......というと?」

「例えば、図書室内に『○○のオススメの本!』と称して配置するとしよう。だが、そもそも図書室に来ない人達には、それを知る事が無い」

「あー、確かに......」


宣伝の仕方が大切になってくるな。

いくら良い商品だったとしても、宣伝をしなければ誰にも知られることはない。

逆に言えば、宣伝によってはその商品の価値以上の売上を得ることだって可能だ。


「多くの人に伝えられる手段を考えないとな」

「多くの人かぁ......苦手だな」


知っている。

文恵は、人が多いところが苦手だった。

話しかけられたり、何かに誘われたりするのをとても嫌っていた記憶があるな。

例えば、学園祭なんかでも.....


「学園祭.....」

「ん?」

「学園祭みたいに......何かイベントをやったらどうだ?」

「イベントですか」


大きなイベントなら注目させることは出来るかもしれない。

それこそ、学園祭並に大きなイベントなら尚更だ。


「具体的には?」

「......まだ考えてない」


そこまですぐに考えられるほど、俺の頭は優秀では無かった。

アイデアを出せただけでも褒めて欲しいくらいだ。


「図書室にある本を、生徒全員に配るなんてどうでしょう?」

「いや、それだと興味の無い本が渡って来た人は読まないだろう」


相当真面目な人でもない限り、興味の無い本を渡されても読まない人がほとんどだろう。

そもそも極端なアイデアだ。生徒全員に配れるほどの本は、この学校の図書室には無い。


「「「うーん......」」」


再び俺達は考え込んでしまった。

これは結構な難題だ。

まぁ解決できるアイデアがそんな簡単に出るようなら、消されてしまうような危機には陥なかっただろう。


「なら、これなんかどう?」


と、今度は文恵が口を開いた。


「イベント内容は、一人一冊オススメの本を持ってくること」

「......ほう?」


その文恵のアイデアを詳しく聞き、三人で話し合った。

ロメリアは意外と発言をしてくれるもので「自分なんかがおこがましい」などと言っていたが、謙遜し過ぎだ。

しかしロメリアはとても協力的で、ちゃんと意見を言う時は言う子だった。

しばらく話し合い、遂に出た案。

それは───────


「一人一冊オススメの本を持参。期間中、その本は他人に貸さなければいけない。許可を得た人からは、期間中に図書室にて本を展示。期限付きで貸出可能。その中で、一番票が多かった本10冊を図書室で購入......で、合ってるか?」

「合ってる」

「良い案です!」

「その名も『他人の好きを読もう!』なんてどう?」

「......」


ま、まぁイベントの名前は何でもいいのだが。

話し合いの結果、そういう案に決まった。

ほとんど強制的に本を読ませるようの仕組みだが、別に二週間ぐらい貰っても構わないだろう。

それに、他人のオススメの本を読む機会なんて中々無いものだ。


「正直、自分で言っといてなんだけど面倒臭いな.....」

「そうか?意外と楽しいかもしれないぞ?」

「そ、そう.....?」


文恵は、自分の案が褒められて少し嬉しそうだった。

単純で可愛いやつだ。普段あまり褒められ慣れていないせいだろうか。


「期間は二週間。オススメの本がない場合は、読んで作る」

「あぁ、了解。で、一番の問題は......」

「これを学校に通さなくてはいけないということ......ですね」


そう。

こんな案が決まったところで、実行出来なければ意味は無い。

ただの一般生徒である俺達三人がコソコソと言っていても、始まらない事なのだ。


「まずは先輩に相談だ。明日、朝から話してみる」

「ん。お願い」

「私もお供します」

「え?あ、い、いいよそんな.....それくらい俺一人でも出来るし」


ロメリア。

メイドとしては正しい反応かもしれないが、ただのクラスメイトとしてはおかしな発言だったぞ。そんな事で、朝からお供する必要は無い。いくらなんでも、優し過ぎる。そういうことに付き合ってくれるのが友達だと言うのならそうなのかもしれないが、少しでも疑われるようなことはしたくない。

ロメリアには悪いが、あまり一緒に居られないのだ。


「ろ、ロメリアは優しいな......」


何やら睨んだような目で、俺達を見つめてくる文恵。

何だ?疑っているのか?

俺とロメリアが、何か密接な関係にあるということを。

察しているとでも言うのか?


「じゃあ、よろしく」

「おう」


何とか誤魔化せたようだ。

まぁそんな訳で俺は、先輩に作戦を伝えるというミッションを受けた。

このまま順調に進められれば、良いのだがな。

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