プロローグ
時代背景が近未来なのでリアルでもSF要素があります。
「大当たり~!!」
向かいにいる男の声と振られるハンドベルの音が大きく響き、思わず耳を抑える。
これは偶然だった。いつもの様にスーパーで必要な物を買い、数千円毎のお買い上げで貰える福引券を偶々1回分手に入れたので。そのまま抽選会場に行き、店員の指示の元に目の前のタブレットを操作して抽選を始めた結果がこれだ──
「特賞です! 一点ものの大当たりです!」
「ソウデスカ……」
テンションの高い店員に棒読みで答えてしまう。
周囲からの賞賛の視線もあるが、店員の後ろにある『特賞』と貼られている大きな箱に目が行く。
壮大なイラストと共に大型の思念操作デバイスが載っている大きな箱に『Far World Online』とあるゲームのタイトルが箔押しで書かれていた。
「今話題のVRMMO『Far World Online』を同梱しあの有名な端末会社の最新機とコラボした限定デザインのゲーミングデバイスです!」
「サイシン……コラボ……ゲンテイ……」
なんとも人が食い付きそうな単語の並びに呆然としていると。店員かテキパキと景品を袋に詰めて目の前に持って来た。しかも『Far World Online』ときたか…
「おめでとうございます!」
「ハイ……」
店員から景品を受け取り、その場を後にする。とりあえず帰って落ち着こう、しかし……
「荷物、増えたな……」
くじ引きで良い物が当たっても自分にとって需要がないと一気に損した気分になる……
ここで真っ先に台所用品が欲しいと思ってしまうのは主夫何だよね……
――これはとある主夫が今流行りのVRMMO始めるお話――
「お〜!」
そして今、その景品を目の前にして驚きの声を上げる奴が1人……
予定以上の荷物を持って帰宅。何時もの様に食料を冷蔵庫に手早く入れて、アレは部屋の隅に置いておく……が、それを放置してしまったのが運の尽き。
夕飯の支度の最中にこの家のもう1人の住人が帰って来る。同い年の奥さんである。
でそいつがリビングに放置した大きな荷物を発見、脇目もふらず一直線に向かい袋から件の景品を手に取り今に至る。
「なに? なに? あんたもやるの!?『F.W.O』」
「ただの景品だよ、予定は無い」
「え〜? やろうよ〜」
「すり寄らないの。今、ご飯作っているから」
「今日のおゆはんは?」
「豚バラの野菜の肉巻きに大根の煮物、味噌汁の具はわかめとお揚げ」
「またご飯が進むメニューを……腹が鳴る」
すり寄ってる奥さんから小さく腹の虫が聞こえてくる。
「早く食べたかったら、それ元に戻してテーブル拭いて」
「了解!」
返事と共に行動を開始。うん、素直なのは良い事だ……