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鈴木クロニクル  作者: 海老名束咲
9/10

近藤 ③

お久しぶりです、先週は課題とスランプにより勝手ながらお暇を戴いておりました。最近は少し不調気味なので、しばらく二週に一度の投稿にさせていただきます。楽しみにしていただいてる方がいましたら申し訳ありません

「――強弓、シラハ」


 バチィンと空気を叩く音。これまでに見たどんな攻撃よりも力強い、強敵である近藤を打ち倒すにはもってこいのいわば必殺技だ。


「やった!」


 陰で勝利を確信した。やはりあの二人は強い、あの二人となら俺も強くなれそうだ。これからの戦いに少しだけ安心が見えた――


筈だった


「随分痛えじゃねえか、こりゃ俺もそろそろ本気で相手してやらなくっちゃあな」


 轟音を立てて鎖を破壊し、狂気じみた笑みを浮かべる大男。今感じているのは恐怖、屋敷に入った時、ドアを開けた時、それらがまるでお遊びだったかのような圧倒的な恐怖だ。あの近藤という男、さっきまでのは軽い準備運動。つまり、遊んでいたのだ。


「フィア、下がって」


 そう言うエレオノールの声は震えている。彼女もわかっているのだ、近藤がもう遊びをやめたことに。杖の下半分を引き抜き剣を取りだす。刀身はかなり細い。


「ほう、そっちの嬢ちゃんは剣を使うのか。なら俺も、剣で相手しないと失礼だよなっ」


 細身の剣で大剣を迎え撃つ、純粋な力勝負には到底持ち込めないだろう。それなら速さで……考える間もなく両者は動き出した。

 勝負に勝ったのは、近藤だった。圧倒的質量差、圧倒的スピード差。全てでエレオノールを凌駕していた。


「別に期待はしてなかったがよ、こりゃあんまりだぜ。剣術の『け』の字すらなっちゃいねえ」


 ただでさえ強敵だった近藤が遊ぶのをやめた。それだけでこうもあっさり負けてしまうのか。それほどまでに相手は強く、自分たちは無力なのか。膝をついたエレオノールに、近藤が優しく語りかける。


「残念だがもうおしまいだ、鈴木エレオノール。まずはお前から殺してやろう。心配するな、じきに姉貴も連れていく。何か言い残す事はあるか?」

「敗者にかける情けなど無用です、とっとと首をはねなさい。」

「なかなか肝が据わっているな。いいだろう、一瞬で終わらせてやる!」


 思い切り振り上げられた大剣、これが振り下ろされた時エレオノールの命はもうないだろう。アミフィアにあれを止める余力は残っていない、エレオノールももうあの場から逃げることはできないだろう。


 じゃあ、俺が行くのか?


 数多の漫画やラノベの主人公は、ここで仲間の少女を助け名声を手にしてきた。だが俺は違う、俺は主人公なんかじゃない。そんなのはアミフィアとの戦闘で嫌というほど分からされた。俺が行っても無駄死にするだけ、ならば今は逃げてもしかしたらいるかもしれない別の『鈴木』に思いを継いでもらおう。そうだ、何も俺までここで死ぬことは無い……


「お前は見逃してやってもいいと考えていたんだがな、あまり命を無駄にするもんじゃないぜ」

「命を無駄にするのは、お前の方だ」


 勝手に動いていた、身体も口も。大剣の振り下ろされる刹那うまく体をもぐりこませ、左手に嵌めたガントレットで受け止める。想像していたよりも重く鋭い、少しでも力を抜いたら両断されてしまいそうだ。


「感謝します、亮介さん!」


 そう言って持っていた剣を近藤の手首に突き刺した。流石の近藤でもこれは見切れなかってらしく、たちまち大量の血が噴き出した。


「最後の一撃に生じる油断。確かに、大きな隙ができる。亮介さん、後は任せてもいいですか?」

「ああ、任せておけ」


 とは言ったものの、恐怖で身体が動きそうにない。歯がガタガタなるのを無理矢理くいしばって抑える。脚の震えは武者震いということにでもしておこう。そんな間にも近藤は手首に刺さった剣を投げ捨てて俺の方を向いた。


「お前、確か亮介だったか。あいつらよりこの俺を楽しませてくれるか?」

「ああ、それに関しては保証するぜ。とっととはじめよう」

「違うな、もう始まっているんだよっ」


 上から振り下ろされる大剣、もう一度受けて反撃を加え――


 ゴンッ


腹部に強い衝撃が走る。大剣を振ったのはダミーの動き、元から近藤が狙ってたのはこの一撃だった。たまらず膝をついてうずくまる。


「おいおい、まだ倒れんなよ。さっきの威勢をもう一度見せてみろ!」


 そう言われて立ち上がったところを強く蹴られる。体が宙に浮き完全な無防備になる。一瞬見えた近藤は余裕の笑みを浮かべ腕を組んでいた。つい藝してくる様子は一切ない。


「まさかっ」


 落ちるポイントにも爆弾が仕掛けられている、何とか軌道をそらさなくては。指だけをついて床に接する面積を減らし、そのままの勢いで身体を無理矢理前に押して行った。何とか爆発は回避したが……


「馬鹿が、もともとそこに爆弾は仕掛けちゃいねえんだよ」

「何っ」


 近藤の突進、どう受けようとしても力の入らない今の体勢では効果のある受け身が取れない。フラフラとだが立ち上がった俺に重い一撃がのしかかる。そのまま近藤は持っていた大剣を握りしめる。


 近藤の大剣が放つ大剣の連撃、目の前には無数の剣の軌道が残像になって残っている。目に追えないほどの速さ、まるでアミフィアの使っていたナイフの様だ。それを可能にしているのは近藤の圧倒的なパワーだろう、鍛え上げられた腕の筋肉、大剣ですらナイフのように扱ってしまうのは圧巻の一言だった。


「でも、読める」


 ナイフのように軽やかな連撃、何もなかったころの俺なら諦めて死を決意していただろう。だが、読める。近藤の技術は確かに凄い、しかしやはり大剣はナイフにはなれない。アミフィアの『乱影』に比べればこの程度、簡単に隙が見つかる。チャンスは一瞬、近藤が打つ五回で一セットの連撃の中で一度だけ、四回目は必ず軌道が直線になる!


「今だっ!」


 四回目の振り下ろし、軌道は予想した通りまっすぐなものだ。その隙をついて俺は駆ける。完全に読み切れた大剣の軌道はまるでスローモーション再生しているようだ。唖然とした表情の近藤に向け打った渾身の左アッパーは、近藤の顎に命中した。


「ふん、なかなかいい一撃だ。打ったのが俺じゃなければな」


 剣を持っていない方の手で俺の左腕を払う。叩きつけられまいと無理に引き上げた腕がビリビリと痺れる。何とかこらえ、必殺の一撃を近藤に叩き込んだ。


「い、痛え!この糞餓鬼、調子に乗りやがってぇ」


 初めて近藤が痛みを口にした。それもそのはず、俺が狙ったのは近藤の右手首、エレオノールに剣を刺された傷口に指を食い込ませたのだ。今までの俺なら絶対に使わなかったような残酷な手、今でも目の前の現状から目を背けたいくらいだ。だが、ここで手を止めるわけにはいかない。ここがあの近藤に一泡吹かせるチャンスかもしれないのだ。俺は一層力を込め、傷口に入れた手を振り下ろした。もしかしたら、手首を引きちぎれるかもしれない。近藤の手首の肉がニチャニチャと、嫌な音を立てながら切れていく。


「やめ、ろ。亮介、てめえは絶対に許さ、ねえ」


 あまりの痛みに顔を歪める。見てるだけで痛くなってくるこの状況、当人の痛みは想像に難くない。だがここで手を止めるわけにはいかない。今やめたら確実に殺される。俺が殺されたら、アミフィアとエレオノールの命は無いだろう。だから、俺が近藤を倒さなくては。


「いい加減にしろっ!」


 近藤が叫ぶと同時に俺の身体は横に強く吹き飛ばされた。大剣の側面で殴られた、いや違う。大剣の側面で爆発が起きたのだ。近藤の右手は俺が押さえていた、左手は柄の部分を掴んでいた。近藤は剣の側面に触れていない。


「そういう、ことかよ」

「ばれちまったか。まあ、あそこで手を引きちぎられなかっただけ良かったと言うべきだな」

「お前が一度に作れる爆弾の数は一個まで、そして何らかの細工をした大剣で床に触れることで爆弾を作っている。大剣で触れたところに相手を追い込んで爆発させていたから、手に触れるという情報を聞いている人間は騙される……」

「説明ご苦労。俺の剣は少し特殊でね、俺の手の骨を砕いて少し混ぜてるんだ。どうやらそれでも能力は発動するようでな、ここまで見抜いたのは亮介、お前が初めてだ」


 痛みと能力を看破された悔しさで若干顔を歪めている。しかし目の中に宿る闘志もまた本物だ。近藤はまだ、戦いをあきらめちゃいない。


「だがな、能力が看破されたから何だ?片手を潰されたから何だ?俺はまだ倒れてねえぞ。いいだろう鈴木亮介、お前は強い、俺にとって史上最大の敵だ。だがな、俺も佐藤様に忠誠を誓う者としての意地がある。覚悟しろよ、お前は必ずこの俺が、殺す」

「ああ、いいぜ。その勝負受けてやる」

初めて書く戦闘シーンなので少しだれてきちゃったかな?どなたか詳しい方いましたらアドバイスいただけると嬉しいです

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