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せっかくだから、お茶を頂こう。
「おいしい」
以前にランドルフ様からいただいたダ-ジリンに味が似てる。でも、そのときよりも深みのある味わい。やっぱり、王室は何でも高級なのね。
温かいものが胃に入ると、なんだかほっとした。
いくつか用意されたお菓子の中からスコーンを手に取ると、あたたかった。
シェフは一体いつ休んでるだろう。
本当はハーブティーだけでなく、紅茶にも手を出したい。でも、お茶の生産は1人では大変だし、繊細と聞いたから…………。
もし、王室にもハーブティーがあるのなら、ぜひ、飲んでみたい。王室でよく出るハーブティーの種類がわかれば、それを中心につくれば、売り上げ伸びそうだし。
私ったら一体何を考えているの。この状況を何とかしないといけないのに。
……そういえば、貴族って髪の色、金髪が多いのね。庶民は大抵茶髪で目の色も黒か茶色。
先ほどのパーティーではほとんどの令嬢が金髪でたまに銀髪やピンクがかった髪、青みがかった髪で、私みたいな茶髪は片手で足りるくらいだった。
目の色は本当に様々だったけど。
身近な貴族はランドルフ様しか知らない。
そのランドルフ様も私と同じ、茶髪、目の色は黄緑色だから、みんなそんなものだと思ってた。
黄緑色っていうと、違うよ、ペリドットみたいな色だよ、ってよくおっしゃっていたけど。
そうこうしている間にだいぶ時間が経っていたようでジゼルさんが大量の荷物を抱えて戻ってきた。同時にイ-サン様まで部屋に入ってきてしまい、2人で話ができなくなってしまった。
「エイミー様の数日分の服をお持ちしました。
イ-サン様、エイミー様の服を着替えたいのですが…………」
「し、失礼いたしました」
イ-サン様は足早に部屋を後にする。
「それでは、エイミー様、普段着に着替えましょう。
それからこちらは、旦那様よりお預かりした手紙です」
たくさんある旅行鞄から手紙を取り出して渡される。その間にジゼルさんは服を取り出して、ソファにそっと置く。
手紙を開くと急いで書いたような印象だった。
『アメリア、君をこのような事態に巻き込んですまない。
申し訳ないが、なるべくオースティン王子に関わらないよう頼む。
それしか、今は方法が思いつかない。
もし、何かあったらジゼルに声をかけてくれ。
本当にすまない。
あと、エイミーの服は気にせず着てほしい』
いや、迷惑をかけたのは私なのに。
ふぅとため息をつくと、手紙はふわっと消えてしまった。
証拠が残らないよう、魔法がかけてあったようだ。
ジゼルさんがドレスの締め付け、コルセットの締め付けを緩めていく。先ほどまでお腹が苦しかったのに、まだお菓子が食べられそう。
普段着なら自分でも着れそうだったけど、着せて貰うことにも今は慣れてくださいと言われて、お人形みたいにぼーっとしていた。
私と同じ目の色のペリドットみたいな色のワンピースだ。
部屋には別室がいくつかあり、衣装部屋にジゼルさんが服やドレス、宝飾品をしまいにいく。
手伝おうかと思ったけど、また制止されて諦めた。
こんなに至れり尽くせりだと、元の生活に戻ったら大変そう……。