第3話「付きまとっていた子にに彼女がいたことが分かったストーカー」
おはこんばんにちは!
どうぞ第3話もお楽しみ下さい!
あれから少し時間が経ち、ハルくんは今、人通りが極端に少ない街の路地裏にいる。
街の喧騒からかけ離れたこの場所でハルくんと一緒にいるのは、ハルくんに怪我をさせかけた張本人である女盗賊。
いや、正確には盗賊かどうかははっきりとは分からないが、服装を見れば大体分かる。
動きやすそうな黒のタンクトップとショートパンツ、そして極めつけは体全体が隠れるようなねずみ色のマント。恐らく、石造りの建物が多いこの街の風景に馴染むためだろう。実際私も、人通りの多さも相まって、こいつを見つけるのには苦労したし。
こんな効率を重視した服装は、生活苦のためにスリを行う少年少女ではありえない。こいつは明らかにスリに慣れた盗賊だ。
え、顔?とっても小さくて整ってて、青くて大きな瞳に後ろで1つにまとまった髪も合わさってとってもかわい…
いやいやいや、ブスよ!ブスブス!
もういい!盗賊だろうがブスだろうが、こいつが私の愛しのハルくんに尻もちをつかせたのは変わらないし!ハルくん、やっちゃえ殺っちゃえ!
「君は私を…どうするんだ?憲兵に突き出す?それとも殺すか?」
先に口を開いたのは盗賊。てかもう口開くな黙って死ね。
「えーと…あなた、僕に何かしました?ぶつかってこられたのは分かるんですけど…」
そっか。ハルくん、まだあいつがスったってこと知らないのか。
「は?私は盗ったんだぞ?お前の金貨を。だから追いかけてきたんじゃないのか?」
何開き直ってんだゴミクソカスうんこたれ殺すぞ。
「え!?お金盗られてたんですか!?ていうかお金なんて持ってたんだ僕…。あ、追いかけたのはなんかあなたが青く光ったから何かがあるなと思って…」
え、待ってハルくんの天然可愛いんだけど。
おっと、流石に私情を入れすぎた。私の悪い癖だ。ここは黙って見守るとしようか。
「めちゃくちゃだ…私はスピードはかなり速い方だし、潜伏魔法も使っていたから簡単には見つからなかったはずなのに…」
「スピード…潜伏…まあ、どうでもいいですよそんなの」
「ん?あぁ…これから罰せられる私がそんな説明を求めることは些か傲慢だったな」
よし!いけいけハルくん!あっやべ、私情入った。
「何言ってるんですか?罰なんてとんでもないですよ」
「「え…?」」
あ、あの盗賊とハモった死にたい。
「生活に困ってやっちゃったんですよね?それは仕方がないですよ」
「それでは済まされないんだ。私は今まで沢山のものを盗んできた、今更後戻りなんてできない!」
「沢山盗んだなら全部返せばいいんです。難しく考えないでください!」
「それで済まないものも沢山あるし、もう無いものもある!手遅れなんだよ!」
「取り返しがつかないなら償えばいいです!そうだ、それなら僕とーーーーっ!?」
ハルくんの言葉を遮ったのは、暗闇から現れた巨大なネズミ。
と言ってもネズミ要素は、ハルくんの2倍の高さはある体躯のみ。
裏路地の暗闇でひときわ目立つ、キラリと光る目。裂けたように大きく開いた口に、本来雑食であるネズミがどうやって発達させたのか分からない、長く鋭利な歯。
そんなモンスターが突然出てきたのだ。ハルくんが言葉を失うのも無理はない。とにかくハルくんだけ権限行使で逃がしてついでに盗賊をネズミに殺してもらーー
その時映像上に現れたのは、一筋の閃光。
私は一瞬にして現れたそれが何かが分からず、先ほどまで考えたことそっちのけでそれの正体を考えた。
魔水晶の劣化で映像が乱れた?誰かが私の監視を妨害している?
その答えは、すでに映像に出ていた。
あの巨大ネズミの頭部は丸ごと切断され、切断面からな血が溢れ、滴り落ちる。そしてその近くには、刃が真っ赤に染まった短剣を持った盗賊。
まさかあいつーーあのネズミを倒したのか?あの一瞬で?あの粗悪な短剣で?
ベクトルは違えど、驚いているのはハルくんも同じのようだった。
「え…あ…モンスター…?こんなの聞いてないよ…あ、助けていただきありがとうございます!!」
ハルくんは腰を抜かして地面に手をつき、ガクガク震えている。可愛い。
「怪我はないか?すまない、こんなことでは償いにはならないよな。私は所詮盗人だから…」
ハルくんはすぐに震える腰を上げ、立ち上がる。そして笑顔でこう言った。
「だから、そんなに難しく考えないでくださいよ!僕はあなたに助けてもらいましたし、僕はもう気にしてません!」
そ、そうね!ハルくんもそう言ってるし、許してあげよう!よく考えたらハルくんにやったことも仕方ないとこあるしね!さあ、どこへでも行きなさい!
「でも、他の人にした罪に関してはちゃんと償うべきです。ビビってた僕が言うのはおこがましいと分かってるんですがーー」
え?ちょっと待ってまさか…
「僕と一緒に、人の役に立つことをしませんか?さっきみたいなこと!」
おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
「ほ、本当に…いいのか?」
「もちろんです!お金に関しては不安ですけど…一緒ならきっと何とかなります!」
「あ……ふふ、面白いな、君は。いいよ、付き合ってあげよう。」
や、やめろ!断れ!断ってくれ!
「これからよろしくお願いします!あ、そうだ、僕は一樹春哉と言います、あなたは?」
「……ティーラだ。気安く呼んでくれ」
「はい、よろしくお願いします、ティーラさん!」
あ、あぁぁぁぁああああああああぁぁぁ…
私は情けなく椅子にもたれ掛かり、そして泣いた。泣きじゃくった。
何が償うだ。私からハルくんを盗りやがって…スってる時と何も変わってねーじゃねーかよ…。
こうして私には、不本意ながらもう1つの目標ができた。
私のハルくんを奪う者には容赦しない。あいつは絶対に潰してやる…!!
今回も読んで頂きありがとうございます!
「1日空くかも」どころかこんなに空いてしまい申し訳ございません。
毎回毎回後書きを長ったらしく書くとネタが尽きそうなので、PV数が300を突破したというプチ報告をもって後書きに代えさせていただきます。
次回もちょっと空くかもです。