第2話「息子の学校内のトラブルを拡大解釈して喚き散らすモンペ」
おはこんばんにちは、瑞瀨ゆういちでございます<(_ _)>
数ある小説の中からこの小説を選んでくれた上にこの2話まで読んで下さること、本当に感謝しています。
それでは今回もお楽しみいただければ幸いです!
「お、春哉くん起きた!でも春哉っていうのはあんまりらしくないかも…そうだ!ハルくん!ハルくんって呼ぼ!」
私は、監視用の魔水晶から出る映像を見ながら大声で喋る。
そんな感じで春哉くんーーーじゃなくてハルくんは、異世界への転生を果たした。
というわけでハルくんも目覚めたし、無知な諸君にこれから彼が暮らすことになる異世界についての説明でもしましょうか。
異世界と言っても、気象や季節などの現象は地球と何ら変わりはない。実際、あの世界は地球によく似た条件の星だからね。
違うところと言われて真っ先に思いつくのは、モンスターが存在しているという点。
モンスターと言うからには非常に獰猛で、この世界にあまたいる冒険者がモンスターに殺される、なんてのはよくある話。
そして次に文化の違い。
言語はもちろんのこと、モンスターの蔓延る世界に対応するために、地球とは違う進化を遂げている。
モンスターによって街が壊滅することを防ぐため、大都市にはかなり高く頑丈な壁が造られており、モンスターへの対抗勢力である『冒険者ギルド』は人々からの尊敬の対象であり、世界への影響力は非常に大きい。
まあそういうこともあるから、転生者には様々な特典を用意している。
他人の言語を相互変換する能力を付与するから言葉が通じない、なんてことはありえないし、初期装備も最低限モンスターに対抗できるだけ用意してるし、ステータスも最強級にしているし…
あとハルくんには特別に、街外れに木造のワンルームの家を作ったし、異世界にすぐに馴染めるように質素な麻の服をプレゼントしてあげました。他の子には絶対にこんなことしないけどね。
っと、他にも色々言いたいことがあるけど、私が1人長ったらしく語るだけだとつまんないよね。ここからはハルくんの動向とともに見てみようか。
ハルくんは3分くらい家の中で固まった後、やっと自分が異世界に転生したことが分かったらしく、ドアを開けて外に出ていた。
石畳でできている道。並び立つ石造りの建物。彩り豊かとは言えないが、独特の雰囲気が漂う街並み。露店で盛んに商売をしている人々。
中世のヨーロッパ、と言えばピンとくる人もいるだろう。現代の日本とはかけ離れたこの世界は、どうやら少年たちの冒険心をくすぐるらしい。これを何万回も見せられてる私は何も感じないけど。
ハルくんは案の定、緊張とワクワクが入り交じったような顔で街を歩いていた。服装のおかげで悪目立ちはしていないようだ。
何万回も見た景色でも、愛しの彼が歩いていたらすごく絵になるなぁ…なんて、半ば夢見心地な気分で監視を続けていた時、彼のすぐ横を何かが凄まじい速さで通り過ぎた。
そいつにぶつかったらしいハルくんは、その場に尻もちをついてしまった。
「「何!?」」
全く違う場所にいるのに偶然にもハモった私とハルくんは、ハルくんに尻もちをつかせた大罪人の通り過ぎた方向を同時に見る。
私は懸命に探そうとしたが、通り過ぎたのが一瞬で、姿がよく見えなかったことや、人通りが多いのも相まって、それらしい人影を見つけられない。
そして私には、こんなことをするような存在に見当がついていた。それは『スリ』だ。
別に変な話じゃない。特にこの街は、大陸の東部の中心街。人混みに紛れて盗みを行う者がいることなど、容易に想像できる。
しかもハルくんが今持っているものは少しのお金ぐらいで、盗まれたところで大きなリスクになるようなことじゃない。
ただ私は許せなかった。あのちっちゃくて綺麗で可愛いハルくんに尻もちをつかせた、怪我をさせかねないことをした。
それは私が鉄槌を下すのには充分な理由だ。絶対に許さない。あいつ……殺してやる。
その殺意が私の集中力を極限まで高め、私は人混みの中で高速で移動する人影を見つけた。でもーー
「さて、どーしよっかなー…」
今さっき「殺してやる」とか言ったばっかりなのだが、現実はそうもいかない。
私たち転生担当女神はかなり高位の権限を持っており、建築物などを自由に操ったり、やろうと思えば今ハルくんがいる世界のモンスターを皆殺しにすることぐらいは造作もない。
しかし、その強大な力の悪用は、転生担当女神全員が厳守しなければならない規則によって規制されており、破った者には厳罰が課せられる。
「権限の行使によって他者の命を脅かす、または環境を大きく変化させること」もその例外ではなく、私自身ではあの逃げ去ろうとしている大罪人を殺すことはできない。
どうするのがベストなのだろうか…自分では手を下さずにあいつに罰を下す方法…そうか!
「女神No.06306、エルの名において権限行使!対象に印付け!重ねて、監視対象者と私の視界を共有!」
私がそうコマンドを叫ぶと、私から見たスリの人影が青く光る。そしてそんな視界が、ハルくんにも見えているはずだ。
確かに『私自身』はあのクズに手を下せない。だが、その対処をハルくんに委ねることで、その不自由を解決することができる。
私たちの規則では、「監視対象者に非常事態が起きた場合に緊急として権限を行使すること」は許可されている。その上「非常事態」というのは線引きが曖昧で、担当女神のさじ加減で自由に行使することができる。
この方法なら上からのお咎めなしで手を下すことができる。ハルくんにやらせなければいけないのは心苦しいけどね。
ハルくんは、最初は突如青く光った人影に驚いていたが、これが何を表しているかを察したのか、すぐにそこに向かって走り出した。
さっき「転生者には最強級の力が与えられる」と言ったけど、それはハルくんも同じで、普通の人間にはありえないようなスピードで走り抜けている。走っている本人でさえ驚きを隠せないほどに。
驚いた人々が次々と道を開けていくなか、彼はものの数秒程度であのクズにたどり着いた。
「うぇっ!?」
「ふぅ…やっと、捕まえた」
最後まで読んで下さって本当にありがとうございます!
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この小説を読んで下さったみなさんはぜひ、正直な評価を私にください!
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