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第六話 次なる道

アクセス200超えました。ありがとうございます。

「あれ、俺は・・・」


気が付くと俺はベッドの上にいた。確か、憑依の実験をしていて・・・


「そうか、俺は倒れたのか・・・」


自分の体力のなさに落ち込む。まぁ、他人の中に入るのだ。自分の体以外の体を動かしたりもするし、そりゃ疲れるのだろう。


「しかし、このベッド狭いな。それになんか柔らかいものが・・・」


掛け布団でよく見えないが、触った感じが柔らかい。こちらの世界の布団はこんなにも柔らかい物なのか・・・。しかし、布団にしては暖かいような・・・


「んっ・・・う・・・?」


「・・・は?」


布団が動く。いや、布団ではない。この赤い髪は・・・


「あ、アネッタ!?お前なんで・・・!?」


「うぅん・・・あれ?ケンゴ・・・っ!?」


アネッタが飛び起きる。どうやらアネッタからしても想定外だったようで、彼女はかなり取り乱している。


「えっ、えっ!?あれ、私ケンゴを背負って宿まで来て、ケンゴを布団に入れて・・・そこで私も寝ちゃってたの!?」


後ずさりするアネッタ。その拍子に倒れていた空き瓶に足を取られる。


「ひゃわぁっ!?」


「危ないっ!」


俺はとっさにクッションになる。倒れてくるアネッタ。


「け、ケンゴ・・・」


「大丈夫か、アネッタ」


「え、あ、うん・・・。」


「ありがとなアネッタ。倒れた俺を宿まで運んでくれたんだろ?助かったよ」


俺は感謝の言葉を口にする。アネッタは顔を真っ赤にしながら言う。


「い、いや!ほら、アンタって結構背も高いし、大きいから私しか運べなかっただけでね、あの、その・・・!」


何故言い訳をする必要があるのだろうか。しかし、この体勢。彼女との距離がとても近い。


「アネッタ・・・。そろそろ、降りてくれないか・・・?」


少し気恥しくなり、声をかける。アネッタははっと我に返ったようで、カエルのように飛び降りる。


「あぁぁぁぁぁごめんケンゴ!大丈夫だった!?」


「ああ、別に・・・」


「おーおーお熱いことで。こっちまで暑くなってきそうだよ」


「・・・へ?」


後ろを振り返る。ドアが開いており、そこからエミリアとエリーシャがこちらを覗いていた。


「あ、アンタ達いつからそこに・・!?」


「そうさのう、姫が坊やのベッドから出てきたあたりからかのう?ヒーッヒッヒ」


「あ、あわわわわ・・・!!」


「・・・ケンゴ、お前は本当に・・・」


エリーシャが冷めた目でこちらを見る。・・・俺が悪いんだろうか。


「とにかく!!皆起きてるんだったら出るわよ!!私準備するから!ケンゴは先出てて!」


「あ、ああ・・・。」


半ば追い出されるように締め出される。・・・俺の荷物はまだ中にあると思うのだが。


――――――


「・・・はぁ・・・。」


落ち着いてきたのか大きなため息をするアネッタ。・・・しかし、アネッタがベッドにいたということはあの感触は・・・、いや、考えるのはよそう。またこじれても面倒なだけだろう。


「それで、行く当てはあるのか?相手がエビルギガースのような巨大なモンスターも操れると分かった以上、このまま突撃するのは得策じゃないと思うんだけど」


エリーシャが言う。確かに、前回がエビルギガースのような巨体なだけで動きの遅いモンスターが相手だったからいいものの、モンスターの中には俺の知識通りのスペックなら非常に面倒な相手が多々存在する。それらが大軍でやってきたら俺の能力と皆の力を合わせても太刀打ちできるかどうか・・・。

と、先の戦闘を思い出しているとき、エミリアが妙なことを言っていたのを思い出す。


「そう言えばエミリア、俺のことを『イレギュラー』って呼んでいたが、あれはどういう事だ?俺が異世界から来たってことと何か関係があるのか?」


「ああ。坊やが異世界から来た・・・いや、坊やがゲームの世界と呼んでいるこのユースティアに来たこと。それ自体は別に問題ではないのさ。お伽話ではあるが、前例がないわけではないからねぇ。ヒーッヒ」


「前例?」


「ボクも小さいころ母に聞かされたことがある。空から降ってきた一人の男が様々な国を回り、種族や人種も関係なしに絆を結び、世界を破滅へ導く巨大なモンスターを撃退した、という話だったかな」


「私もそれ、聞いたことあるわ。・・・あれもこの世界とは別の世界から来た、なんて言われてたわね。こうやって目の前に同じような境遇の奴がいるって思うと不思議な感じ。」


「空から降ってきて巨大なモンスターを倒す・・・」


・・・考えすぎか?いや、今の話だけならば、俺も知っている。それは、『俺がやっていたゲームのストーリーそのもの』だ。・・・それがおとぎ話として残っている?・・・なら、ここは一体・・・


「まぁその話は今はどうでもいいことさ。それよりも、どうして坊やがイレギュラーか、という話だ。」


エミリアが話を戻す。・・・先ほどの話でまだ聞きたいことは山ほどあるが、今は彼女の話を聞くことにしよう。


「先の話に被るかもしれないが、坊やはその憑依の腕輪というこの世界では存在し得ない力の他に、もう一つ能力を持っている。分かるかい?」


「もう一つの能力・・・?」


「そうさ。坊やとしては普通のことかもしれないが、坊やはこの世界のモンスターの性質を全て知っている。アタシが王宮にいた時、オーウェンと預言者が話していたのを聞いたのさ。『もうすぐお前の力が通用しない人間がやってくる。それとアネッタを合わせてはいけない』ってね」


「ちょっと待って。この前も言っていたけど、その預言者、ってのは誰なのよ。私がいた時にはそんな役職の人はいなかったはずだけど・・・」


アネッタが口をはさむ。預言者。確かに俺がゲームをしていた時もそんな役職のジョブはなかったはずだ。一体何者なんだろう、その預言者というのは。


「そうさね、姫が追放されたのとほぼ同時期に宮廷に現れたやつさ。大きなフードを被っていて、声も男なのか、女なのか、判別できないような不思議なやつさ。・・・でも、アタシ含めてだれもが預言者の存在を不思議に思ったことはなかった。そして、奴の予言は必ずと言っていいほど当たった。・・・奴が現れてから、オーウェンはやってくる姫を攻撃するようになった。今まで通り兵士に追い出させればいいものを、ね。」


「その預言者ってやつがその男にアネッタを殺すように予言を出した、ってことか・・・」


「ま、そう考えるのが妥当だろうねぇ。・・・今思うとかなりきな臭いね。なんでアタシはあいつの言う事を聞いていたんだか。」


預言者に、かつてこの地を訪れた『プレイヤー』。・・・俺は単なる異世界転移だと思っていたが、何か大きな事件に巻き込まれたのではないだろうか。・・・そして、そこにこそ俺の目的がある。そんな気がする。


「ま、アタシが分かるのはこれだけさ。あとはあの預言者をとっ捕まえて聞くのが手っ取り早いだろうねぇ。ヒーッヒ」


「そうね・・・。イーゼロッテもその預言者に騙されて行動していたのかもしれない。・・・とにかく国に戻らないと。そして、そのためには・・・」


「ボクたちの力ではまだ不安要素が残る。他に協力してくれそうな人がいればいいのだが・・・」


「俺たちにはまだ回復できる奴がいない。・・・いや、その前に。アネッタ。この世界には『回復魔法』は存在してるよな?」


「え、私?・・・そうね、いないわけじゃないわ。でも、きっとアンタが思ってるほど万能な魔法ではないわよ」


「回復魔法ってのは生命の自己治癒能力を活性化させる呪文ややツボを押すことで回復を早めることがほとんどだ。お前の言うゲームってやつに出てくる傷がみるみる治る、みたいな御伽話のようなものは存在しない」


「そうか・・・。でも、俺の憑依でその力を強化すれば似たようなことが出来るかもしれない。この先強いモンスターが出てきたときやオーウェン、そして預言者ってやつと戦うときにいると頼りになるかもしれない。アネッタやエリーシャにその回副能力持ちの知り合いはいないか?」


「私は駄目ね。いるといえばいるけれど、全異王宮内の人間よ。既に預言者の手先になってると思うわ」


「そうか・・・。エリーシャ、俯いてどうした?」


回復魔法の話をしてからエリーシャは少し動揺しているように感じる。何かあるのだろうか


「・・・いや、何でもないさ。・・・」


「言いたくないなら言わなくていい。回復魔法の使い手がいなくても、俺の憑依の力で何とか悪い局面も切り抜けられるさ」


俺がそう言うと、エリーシャが意を決したように言う。


「・・・知り合いに一人、治癒能力を持つ『シスター』がいる。ここから近くの修道院にいる。会おうと思えばすぐに会えるだろう」


「・・・そうか。でも、いいのか?何か隠したかったようだが・・・」


「いいんだ。それにアイツなら・・・ボクがいるなら喜んで手を貸すだろうさ」


エリーシャは目を泳がせながら言う。・・・何かを隠しているのは確実だが、エリーシャがいいと言っているならば、会ってみてもいいかもしれない。


「それじゃ、次の目的地はその修道院ね。行きましょう!」


まだ見ぬもうひとりの仲間。それを探しに俺は行く。・・・預言者、そいつに会えば俺のここに来た目的が分かるかもしれない。そう、思いながら。

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