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第二十三話 砦へ

前回間違えて二十三話分まで投稿してしまったのでこれは分割版です。

続けて二十四話も投稿します。

転移魔法の乱れを感知し、敵の本拠地らしき建物へと向かう俺たち。移動中の車の中で、トパーズの持つアリアル・アーマー。そして、また持ち出すであろう魔蝕の対策を考えていた。


「無差別に拡散する魔蝕も問題だけど、あのアリアル・アーマーの機動力も問題よね。あの時はエリーシャとケンゴの力でなんとか切り抜けたけど・・・」


アネッタが言う。それは俺も危惧していたことだ。あの時はルメルカがやってきたり魔蝕の対応に追われたりしていて考える時間がなかったが。


「相手もあの時は遊びのような感覚だったからな。本来の機動力でもないかもしれない。ボクとケンゴの対応力でも間に合うかどうか・・・」


そう話していると、お茶を作っていたオリンピアが戻ってくる。


「お待たせしましたー。・・・あの、あのアーマーなんですけど、私に任せてもらえませんか?」


お茶を配りながらオリンピアが言う。・・・そういえば昨日、何かを作っていたようだったが、なにか対策を思いついたのだろうか。


「大丈夫なのかいオリンピア。あれは思ってるよりも厄介な代物だと思うけどねぇ」


「大丈夫です。あの戦いの中でデータは取ってありますから。・・・それに、あの方にいくつか情報も貰いましたし」


「あの方?」


俺が聞くと、オリンピアははっとした顔で言う。


「ああ・・・、あの時の親切な人が教えてくれたんですよ」


「親切な人ねぇ。魔蝕のこともそうだけど、色々知ってるみたいだしその人にも協力してもらえれば楽になるかもしれないけれど、それは出来なかったの?」


アネッタが聞くが、オリンピアは首を振る。


「たぶん無理だと思います。・・・あの人は、不思議な人ですし・・・。それに、あの武器を作り終わったら彼女は消えてしまいましたから。連絡手段もありませんし・・・」


不思議な人。オリンピアは詳しく話そうとしないが、いったい何者なんだろう・・・?


『皆さん、敵襲です。アーマー乗りが複数。やはりこちらで合っていたようですね』


アポロの声。アーマー乗りが来ているということは、敵のアジトに近いということ。俺の予測は正しかったようだ。


「皆、行こう!」


車を止め、外に出る。外にはバトルアーマーが10体。預言者と違い、そのものずばりの戦力を持っているのが厄介だ。・・・だが、今の俺たちなら。


「メアさんは魔蝕に備えて俺の体を頼む。オリンピアは・・・」


「大丈夫、戦えます。今回作ったアーマー対策の武器の実践もしたいですし」


「そうか。ならアネッタ、また頼むぞ」


「ええ。ケンゴの能力を一番有効に使えるのは私だから、いっぱい頼ってよ」


アネッタは少しうれしそうに言う。・・・確かに、身体能力を強化するだけのエリーシャやエミリアと違い、様々な魔法を打つことが出来るアネッタは戦いに幅が出る。それに、アネッタとの憑依が一番、しっくりくる気がする。


「エミリアとエリーシャは魔蝕に気を付けてくれ。ルメルカは・・・戦えるか?」


「大丈夫っス。前はちょっとビビって動けなかったっスけど、センパイがいるなら百人力っス!」


カプセルから銃を取り出す。大丈夫。俺には頼もしい仲間がいる。皆となら、どんな困難も乗り越えられる。


「それじゃみんな、気を付けて。・・・憑依!」


アネッタに憑依する。それと同時にバトルアーマーも接敵する。


「トパーズ様の根城には近づけさせねぇぜ!」


「少しでも消耗させてやる!」


アーマー乗りの声が聞こえる。・・・やはりこの先に奴の根城があるようだ。


「アーマーだけを破壊して無力化する。行くぞ!『アイシクルランス』!」


青の魔法陣を生成し、アーマーの腕を狙って攻撃する。狙い通り腕が破壊され、壊れたアーマーは後退していく。


「ボクたちも行くぞ!」


「ああ、坊やだけに任せるのも問題だしね!」


エリーシャとエミリアも攻勢を仕掛ける。アーマーの放つ機銃をエミリアの生成した鎌で弾き、その隙をついてエリーシャが距離を詰め、腕を斬り飛ばす。

ルメルカも二丁の銃でアーマーの武器を破壊し、無力化していく。


「クソっ、やはり強い・・・!」


「このままではトパーズ様に顔向けできん!」


敵に動揺が走っている。このまま一気に無力化する・・・!


「・・・こうなったら、最終手段だ。お前らに負けるくらいなら・・・!」


アーマー乗りの一人がアーマーのパーツから黒い瘴気を吐き出す。・・・やはり持っていたか、魔蝕!


「オリンピア!」


「大丈夫!魔蝕の研究は終わってるから、あれの最適化は済んでます!マナ吸収装置二号くん、出るよ!」


オリンピアがバックパックからあの槍を取り出す。あの後オリンピアは改良を重ね、単体相手ならば一人の力で扱えるレベルの装置を開発していたのだ。発見は難しくても量産は楽、とはよく言ったものだ。


「グオオォォォォ!!どんな小細工もあの方の力ならァァァァァ!!」


アーマーと乗り手が融合し、変化していく。機械と人が混ざり合ったモンスターへと姿を変えた魔蝕が襲い掛かってくる。

しかし、オリンピアは焦らない。


「超振動装置、稼働。アネッタさん、足止めの魔法を!」


「分かったわ。ケンゴ、お願い!『スペクターニードル』!」


魔蝕の足元に氷の棘を生み出し、足を貫く。魔蝕は倒さなければ拡散しない。足に刺さった棘で足を止めることが出来た。


「ありがとうございます!さぁ、周囲のマナごと削り取ります!発射!」


槍を射出する。それは魔蝕に突き刺さり、周囲のマナを取り込みながら振動する。その空間の中心に存在する魔蝕が少しずつ削り取られていく。


「電磁バリア展開、供給も止めます!」


突き刺さった槍が展開し、周囲を覆う膜となる。俺の力がないため因果を歪める力、一瞬で周囲のマナを削り取るだけの威力はないが、こうして外からのマナの入出を防ぐことで、似たようなことが出来る。とオリンピアが言っていた。

その方法は正しいようで、魔蝕の体が拡散することなく消滅していく。


「グオオォォォォォ!!!」


叫び声を上げる魔蝕。・・・しかし、抵抗することもなく、消滅していく。

たぶん奴らの切り札であったのだろう。残っていたアーマーたちは恐怖で逃げていく。・・・魔蝕になった人間は救えないけど、なるべくなら誰も殺したくはない。逃げる相手の方向を見て、目的地が正しいことを確認する。


「あの人たちはやっぱり砦の方へ逃げていくわねぇ~。ケンゴ君の言うとおり、あそこが敵の本拠地絵間違いなさそうね~」


敵がいなくなったのを確認し、元の体に戻った俺を見ながらメアが言う。・・・その通り。奴は、この先にいる。


「このまま一気に向かおう!」


俺達は車に戻り、先へと進む。待っていろトパーズ。そして、その後ろに控えるサファイア。エリーシャの敵であり、もう一人の俺の居所を知る存在。・・・絶対に、全て取り返すんだ。皆の過去を、未来を。


―――――


途中何度かの襲撃をかわしつつ、俺たちは砦の入り口までやって来ていた。


「ここが奴のいるアーケス砦・・・」


跡地というくらいだからもっと荒れているものを想像していたが、どちらかというと研究所のような姿をしている。


「昔見た写真ではもっと崩落していたはずよ。きっと、奴らが拠点として使うために改良したんでしょうね」


アネッタが言う。砦一つを修復し改良するほどの時間、奴らはこの世界にいたことになる。奴らの異次元の技術力ならば、それも可能なのだろう。


「扉は・・・当然だが閉まっているな。ボクの剣じゃ貫けなさそうだ」


「結構分厚そうだしぃ、私の拳でも壊すのは無理かなぁ~?」


扉はゆうに10メートルはあるだろう。厚さもそれなりにあると考えていい。ここはアネッタの火力で焼き切るのがいいか・・・?

そう考えていると、オリンピアが扉の前に立つ。


「こういう扉には大体ロックをかけている装置があるはずです。私がそれを見つけて解錠します。・・・ケンゴさん、私のバックアップを頼んでいいですか?」


彼女は機材を展開しながら言う。俺は頷いて、オリンピアに憑依した。


「力が湧いてきます。これなら全部のスペックを完全に引き出せます。・・・探知開始!」


空間に大量のモニタービジョンが現れ、それらを用いて彼女は何やら操作をする。俺は彼女が作業をしやすいように反応速度や脳のタスク拡張を行う。数分後、彼女が何かを見つけたようで、そのカギを外す。


「見つけました。・・・これで、完了です」


彼女がそう言い機材をしまうと同時に扉が開いて行く。


「すっごい・・・。こんな扉を開けることもできるのね・・・」


アネッタが感心したように言う。オリンピアははにかみ、


「私はこういう技術面でしか活躍できないので・・・。でも、お役に立てるならよかったです」


「こう言っちゃなんだがアタシらは力押しでしか解決できないからねぇ。頭脳がいるってのはそれだけでアドバンテージさね。ヒーッヒ」


「そうねぇ~、あなたのおかげで私たちも消耗しなかったし、魔蝕の対処も出来なかったわぁ。助かるわ~」


皆から褒められ気恥ずかしいのか彼女は頭をかく。


「それもケンゴさんの力あってこそです。・・・本当に、あなたはみんなを繋げる力を持っています」


「そうね、ケンゴには負担をかけてるようで悪いけど・・・。アンタの力、頼りにしてるわ」


「負担なんてどうってことないさ。俺はみんなの力になる。そして、みんなを救えるんだ。それなら、俺はどんな負担だって背負ってみせるさ」


「勇ましいねぇ。ま、そのくらいの気概でいてもらった方が皆の士気も上がるってもんかね。・・・さ、乗りこむよ!敵はもう目の前さ!」


エミリアの号令で俺たちは砦の中へと進む。・・・待っていろトパーズ。お前を倒し、お前たちの目的を打ち壊す。この世界のためにも、皆のためにも。

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