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第二十一話 過去

「最初に断っておくっスけど、これはウチが体験した白夜の顛末っス。・・・だから、今センパイたちを襲っている白夜とは別のものかもしれない。それだけは言っておくっス」


魔蝕を打ち倒し、一息ついた俺たちはルメルカの持つ白夜の、そして俺の過去の記憶を聞くため、彼女に話をしてもらっている。


「ああ。大丈夫だ。・・・これは、奴らのことを知る以前に俺の、いや、お前の知る俺の記憶を知るために必要なことだ。俺の知らない、この世界での俺の記憶を」


そう、これは俺の記憶を知るための行為なのだ。・・・いや、すでに想像はしていた。アネッタたちからおとぎ話を聞いた時から。この世界のモンスターの記憶を知っている俺のこと。最初は単にゲームの記憶を継承していただけだと思っていた。・・・だが。俺は・・・


「・・・分かったっス。・・・何処から話せば良いっスかね。センパイは何も覚えてない・・・いや、きっとウチらのことはそもそも記憶にないっスから。やっぱり白夜結成の・・・、全ての種族を纏め上げたところからの方がいいっすかね?」


「一ついいかしら。あなたの知るケンゴって、もしかして伝説に残ってる、異世界から来た勇者のことだったりするの?・・・今までのアンタの話を聞く限り、そうとしか思えないんだけど・・・」


アネッタが口を開く。そう。あのおとぎ話に出てくる勇者。あれは間違いなくあのゲームのプレイヤーだ。・・・そして、それに沿った行動をしていた俺という存在。ルメルカは口を開く。


「・・・ウチはあの事件からここまでの記憶がおぼろげっス。だからそのおとぎ話ってのがどういうものかは分からないっスけど、その認識であってると思うっス。センパイは異世界から現れて、その力でこの世界に存在する人々を先導していたっス。そして、この世界を破滅に導く魔皇ヘルロードを撃退したっス。・・・そして、仲間の中から特に親しかったクロノセンパイ、アストセンパイ、ライオットセンパイ、そしてウチを含めた5人を幹部としたこの世界を真に平和に導く組織「白夜」を立ち上げたっス」


ライオット、という名前を聞いた時に、エリーシャがビクッと肩を震わせた。・・・何か聞き覚えのある名前なのだろうか?

それを気にしつつ、俺はルメルカに続きを促す。ルメルカはそんなエリーシャの様子は気付いていない様子で。


「残りのメンバーはウチらについてきたっス。そして、いろんな国や大陸を渡り、いまだ魔皇の影響を受け人々を襲うモンスターたちを退治したっス。その旅はとても順調だったっス。・・・あの魔女が現れるまでは」


ルメルカは視線を落とす。魔女。魔蝕を初めて見た時にも言っていた言葉だ。


「魔女、ってことは女性なのかい?アタシたちを襲っていたのはトパーズとかいう男だった。その魔女も今の白夜のメンバーだとしたら、まだ敵は多いってことになるねぇ」


「そこまではわからないっス。・・・でも、魔蝕を操れるのはきっと、あの魔女の力か、その仲間の力。それは間違いないっス」


「魔女・・・」


「・・・続けるっス。あいつと出会ったのは、白夜の活動が軌道に乗ってきたころ。・・・あれからどのくらい時間がたっているか分からないっスから、具体的な時間は言えないっスけど、あれはビストロ山脈。その中腹あたりだったっス」


「ビストロ山脈って言うとエリーきゅんの・・・」


メアが何かを言おうとしたが、エリーシャの視線を感じ口をつぐむ。・・・先ほどの件と言い、エリーシャも何か、この件に関わっているのだろうか。


「あいつは気配もなくただそこに出現したっス。まるで、センパイが現れた時のように―――」


――――――


「へぇ、アンタらが今この世界を救う勇者様御一行ってわけかい。なるほど、これは面白い組み合わせだ。あの魔皇も倒されるわけだ」


「それ」は、気が付くと目の前にいた。転移魔法や瞬間移動のような感覚はなかった。まるで初めからそこにいたかのように、その女はそこに浮いていた。


「あなた、何者?急に現れるなんてビックリしちゃうわ」


クロノが本を掲げながら言う。その場にいた全員がとっさに武器を構える。・・・それだけ、彼女からは殺気が迸っていたのだ。


「おやおや、武器を構えながら質問とは穏やかじゃない。・・・でもそれでこそだ勇者御一行サマ。そうだね、私の名は■■■■■■■■。でも、アンタらの耳じゃこの言語は聞き取ることが出来ないだろうさ。・・・だから、そうだね。この世界ではサファイア、とでも名乗っておこうか。蒼く輝く一粒の宝石。私にぴったりの名だ」


サファイア、と名乗った女性はそう言って地上へ降りる。その影からは一匹の猫の姿をしたモンスターが出現する。


「宝石なんてお前の柄じゃねぇだろ。お前はどっちかって言うと石こrゴヘァッ!?」


人語を介すモンスターを蹴って大人しくさせる魔女。彼女は続ける。


「うるさいよミラノ。まぁいい。今回アンタらの前に姿を見せたのは、宣戦布告ってやつさ。もうすぐこの次元は我らのヒメの復活のためのコアとなる。それを邪魔するであろうお前たちを始末し、この世界での我らの存在を確立させる。そのためにも消えてもらおうと思ってねぇ」


それを聞いて、ケンゴは一歩前に出る。彼の持つ古代遺物「ソロモン」が光り輝き、一本の槍となる。

ソロモンはあらゆる武器に変化することのできる指輪であり、その力で様々な国を救い、色んな人たちと絆を繋いでいった。


「へぇ、アンタが異世界から来たっていう勇者様か。相手してやりたいのは山々だけどね、こっちにも使命があってね。アンタには少しばかり、ここから消えていてもらうよ」


そう言って魔女は指を鳴らす。すると、そこにいたはずのケンゴが魔女の影に吸い込まれるように消えていく。私達の勇者が、希望が、何の抵抗も出来ずに消えていく。

クロノは自身の能力でケンゴを取り戻そうとする。しかし、どんなに事象を捻じ曲げても彼の消滅は止められない。


「無駄さ。私はこの次元の存在じゃない。その私の能力をこの世界の力で止めることなんて不可能さ」


魔女の影に完全にケンゴが吸い込まれる。その姿を見た仲間たちの動揺が見て取れる。


「勇者を返せ!うおおぉぉぉぉぉぉ!!」


その中の一人、彼に村を救われた少年が魔女に向かって攻撃を仕掛ける。しかし、魔女は身じろぎもせずに。


「勇者がなす術なくやられても向かってくるか。その蛮勇は誉めてやろう。・・・でもね、相手との力量の差は分かってないといけないねぇ」


「ガッ・・・!?」


魔女の影を踏んだ瞬間、彼の動きが止まる。まるで金縛りにあったかのように動かない。


「丁度いい機会だ。お前たちを消すのに私の力、その一端を見せてあげようじゃないか。ミラノ、やりな」


「ケッ、しゃーねぇな。悪いなガキンチョ、恨むなら自分の愚かさを恨むんだな!」


魔女の肩に乗っていたモンスターの足元から、謎の黒い瘴気が出現する。アストが戻れと叫ぶが、彼は身動きが取れない。そして、瘴気は影を通して彼の体にまとわりついた。


「うわぁぁぁ!なんだ、なんだこれ!?痛い、体中が痛い・・・!!」


「これは一体何が起こってるんスか・・・!?」


驚きで動くことが出来ない。そんな中、瘴気に包まれた少年の体が変化を始める。


「ああぁぁ・・・あぁ・・・AAAA!!!」


「これは・・・!?」


「クロノ!お前の能力で彼をすぐに助け出せ!」


「やってるわ!でも、どの方法も確率は0・・・!救う運命はない・・・!」


クロノが本のページを破り捨てる。彼女の能力は本に書いた事象を1%でも確率があることならば現実に起こす能力。しかし、それでも覆せない能力・・・!


「無駄さ。私の影に捕らわれたものは助けられないってさっき勇者様で実証済みだろ?・・・そして、魔蝕は完全に感染した!」


少年の姿は原形をとどめないほどに変化してしまった。体には鱗のようなものが出来、瞳は赤く変色している。


「こんなの・・・これじゃまるで、彼がモンスターみたいに・・・!」


「まるで、じゃなくてその通りさ。彼は魔蝕に侵され、魔蝕となった。これはこの次元にはない事象だろう?だから、お前たちには対処できない。じゃ、後はそいつに任せるとするか。私はまだやることがあるからね。私たち全員をこの世界に定着させるにはまだ生命エネルギーが必要だ。・・・このあたりで一番近い村はあそこか。とりあえず皆殺しにでもしてくるとしよう!さらばだ諸君!うまく絶滅してくれたまえ!」


その言葉を残して魔女は消える。現れた時と同じく、そこに最初からいなかったかのように。


「消えた・・・」


「一体あれは何なんだ・・・!?今まであんな奴がいたなんて話、聞いたことがないぞ・・・!?」


周囲からどよめきが聞こえる。しかし、その中でも一つ、幹部であるライオット・シグナスが声を上げる。


「ここの一番近くの村・・・?まさかあいつ!俺の村を!」


そう言ってクロノたちの静止の声も聞かず、転移魔法で転移してしまう。彼の腕力と剣捌きは確かに随一だが、あの魔女相手じゃなにがあるか分からない・・・!クロノは数人の仲間にライオットを追わせた。


「くそっ、どいつもこいつも!おい君!大丈夫か!?」


アストが少年だったものに近づく。するとそれは、突如振り返りアストの胸を貫いた。


「がっ・・・!?」


「アスト!」


クロノがとっさに本にアストへの攻撃が急所を外れる、という内容の絵を描いたことで何とか抜け出すアスト。そして、彼の持つ能力を発現させる。


「クッソ、「俺の体はもう再起不能なレベルまでやられちまった」!」


その言葉と同時に彼の体に空いた穴が塞がっていく。彼の能力は自身の言ったことが反対になる能力。彼とクロノの能力は、無敵と言っても過言ではない能力だった。


「グオ、オオォォォォ!!」


少年だったモンスターは叫びながら突撃してくる。そこにはもう、元の彼の面影はなく、ただ私達を攻撃するだけの存在となっていた。


「くそっ、来るな、来るなぁッ!」


「うわぁぁぁぁ!!やめろぉぉぉ!!」


モンスターはクロノたちを通り抜け、仲間たちを攻撃する。クロノも応戦するが、間に合わない。


「このー!アンタが元仲間でも、仲間を傷つけるなら容赦しないっス!」


ルメルカはカプセルから銃を取り出しモンスターを打ち抜く。破邪の力を込めた銃弾だ。普通の魔物ならばこれだけで倒れるはずだ。

彼女の読み通り、モンスターは動きを止め、倒れ伏した。何人かの仲間はやられてしまったようだが、このくらいならばアストの能力で元に戻せる。そう安堵していると、アストが驚いたような声を出す。


「これは・・・」


「どうしたのアスト。ほら、早くあんたの嘘で全員を元に・・・」


クロノが言う。しかし、アストは首を振る。


「・・・ダメだ、俺の能力は嘘が本当になる能力。・・・だが、俺はさっきから「あいつらは死んだ」と能力を使っている。・・・なのに、あいつらは・・・」


言い終わる前。倒したモンスターの体が急に膨張を始める。


「ルメルカ、危ない!」


「わわっ!?」


クロノの能力で急に後ろへとはじき出される。それと同時、モンスターを中心に巨大な爆発が起きる。


「爆発・・・!これで私たちを全員巻き添えにしようって寸法だったのね・・・。もっと早く気づいていれば全員を退避させられたかもしれないのに・・・。アスト、ここはアンタの能力で・・・」


「・・・ダメだ。能力が効いていない。・・・いや、違う。あいつらは死んでないんだ・・・!」


「それってどういう事っスか・・・」


アストが爆心地を指さす。そこには、爆発に巻き込まれたはずの皆が立っていた。


「なんだ、助かってるじゃないの」


「・・・違う。あれを・・・!」


アストは彼らの周りを見ていた。・・その周りには、さきほどの黒い瘴気が、全員にまとわりついていた。


「まさか・・・!」


「ああ。あの瘴気・・・。あれは感染する!」


その言葉も彼が能力を使って感染しない、という状態にしようとしていたのかもしれない。しかし、彼の言ったとおり、仲間たちの姿がどんどんモンスターの姿へと変化していく。


「この次元の力じゃない・・・。あの魔女が言っていたことはこういう事なのね・・・!私たちの能力を無効化してくる・・・!」


クロノが苦虫を嚙み潰したような顔をする。能力であれを解除することが出来ない。それは、彼女たちにとって初めての経験だった。


「ダメっス、全員モンスターになっていくっス!あいつは魔蝕と言っていた。浸蝕して魔と同化する。それがあの瘴気の力・・・!」


完全に変異した仲間だったものたちが一斉に襲い掛かってくる。ルメルカとクロノはそれを何とかあしらうが、アストが一歩遅れる。


「アスト!アンタどうして・・・」


クロノが言いかけるが、彼の姿を見て顔が青くなる。・・・彼の体にも、黒い瘴気があふれ出ていた。それは、最初に攻撃を食らった箇所。・・・魔蝕は、倒した時だけじゃなく、攻撃を食らったときまで感染するのか・・・!


「クロノ・・・!ルメルカ・・・!分かりかけてきたぜ・・・、こいつの能力の特徴が・・・」


アストが薄れゆく意識の中、二人に語り掛ける。


「アスト、何を・・・」


「確かにこの魔蝕とかいうやつは俺たちの能力は効きにくい。いや、こいつら自体には効かないと言っても過言じゃねぇ」


「・・・」


「だが!こいつらは周囲の魔力や、俺たち生物の魔力を利用して増殖、浸蝕している!ならば、クロノ。お前の持つ能力を使って俺たちの周囲の魔力を消し去れ!そうすれば、こいつらの活動は停止する!」


「魔力を消し去るって・・・、そんなこと、できるっスか・・・!?」


アストの体がどんどん黒く変色していく。もう長くは持たない。それは直感で分かる。


「でもアスト、アンタは・・・!」


「・・・ふ、俺の心配はいい。勇者と一緒に旅をして、この能力のせいで一人だった俺は良い仲間に恵まれた。・・・もう、俺は満足したんだ」


「アストセンパイ・・・!」


ルメルカはその姿をただ茫然と見ていた。そんな彼女に、クロノは語り掛ける。


「・・・ルメルカ。アンタはケンゴを、勇者を助け出して。ここをどうにかできるのは私だけ。・・・そして、今動けるのはアンタだけなのよ」


「クロノセンパイ・・・!あなたは・・・!」


「アストに言われたもん。これを解決するって。私はみんなを救う。今出来るのは、それだけだから。・・・私は大丈夫よ、きっとみんなを救ってあんたと合流する。・・・だから、アンタは先に行って。私の能力に巻き込まれないように」


クロノは真面目な顔で言う。彼女がこの顔をする時を彼女は知っている。・・・自分を犠牲にする覚悟がある時の顔だ。


「ダメっスよクロノセンパイ。センパイまでいなくなったら、ウチは・・・!」


「・・・あなたは一人じゃないわ。きっと、彼は生きてる。彼の力があれば、きっと、大丈夫。・・・だから、ごめんルメルカ。あなたに後を任せるわ」


その言葉と共にルメルカの体が動き出す。クロノの能力で彼を探しに動かしているのだろう。


「センパイ!」


「・・・ルメルカ、あなたは強いわ。・・・だから、きっと。彼を取り戻せる。・・・皆、あなた達の相手はこの私よ!」


クロノの前にさっきまでアストだったモンスターと、大量の仲間だったものたち。

彼女は本に魔力を込め続ける。自身の全ての魔力を、それを超える魔力を込める。


「ごめんね皆。アスト。できれば元の姿に戻してあげたいけど・・・。今、私にできるのは、これだけ。・・・大丈夫。みんなを一人にはさせないから。―――オーバーリミッツ!」


本から大量の魔法陣が生み出される。本来ならばマナを吐き出し魔法を紡ぐその魔法陣は、周囲のマナを、魔蝕を、全て吸い込んでいく。


「私の全部、この力に捧げるわ。・・・だから、もう誰も傷つかない。これ以上、感染も広げない!」


クロノの体が薄くなる。自身の体を、魂を、魔力に変換する。


「・・・あぁ、皆。今、あなた達の元へ行くわ・・・。」


魔蝕が全て魔法陣の中へと消えると同時に、彼女の持つ本がどさり、と地面に落ちる。


そこには、誰も残っていなかった。


――――――


「―――以上が、ウチの知り得る全てっス。ウチはそのあと、センパイを探して、探して・・・。その中で、この記憶を心の奥深くに封印していたっス。全て、センパイを探し出すために・・・」


彼女の話が終わる。・・・彼女の言う仲間たちの、特殊な能力。それがあってさえ倒すのに決死の覚悟がいる魔蝕。あの時は敵が無機物だったり、元々敵だったものだから攻撃できていた。・・・でも、彼女と同じ立場だったらどうだろうか。アネッタたちが、俺の前に立ちふさがったら。

・・・俺は、戦えないだろう。


「・・・ところで、さっきの話に出てきたライオットって、もしかして・・・」


アネッタが言うと、エリーシャが怒りの表情をあらわにしながら言う。


「・・・ライオット・シグナスは、ボクの、父だ。・・・数年前、突如村を襲った大規模な魔法の爆発。そして、襲ってくるモンスター。まだ小さかったボクは逃げることしかできなかった。・・・そして、父は。ボクの目の前で死んだ。ボクが弱かったから。ボクが女で、剣も振るえないような子供だったから。あいつは・・・ボクを庇って、死んだんだ。父も、母も。村の皆も。あの時は原因も分からなかったし、逃げるだけで精一杯だった」


エリーシャがぽつぽつと語る。彼女の過去。それと俺の過去。それらは繋がっていた。


「・・・でも、やっと分かった。あの時ボクの村を襲って、皆を殺した犯人が。・・・サファイア。魔女。ボクはそいつを倒すために、剣の腕を磨いた。女だと思われると軽く見られると思って男の姿をして、剣の修業に励んだ。・・・全ては、この時のためだったんだ」


エリーシャは爪が食い込むほどに指に力を込める。俺は、とっさに彼女の手を取っていた。


「・・・なんだよ、急に・・・」


「エリーシャ。怒りに身を任せちゃダメだ。お前は・・・」


「お前に何が分かる!ボクの苦しみが!怒りが!それをぶつけられる相手を見つけたんだ、ボクは一人でだってそいつを・・・!」


「違う!」


俺の一喝で、エリーシャが止まる。


「一人で抱え込まないでくれ。俺達は仲間だ。仲間の敵は、俺たちの敵だ。・・・きっと、魔女は強大な力を持っている。でも、俺たちの力を合わせれば勝つことは出来るはずだ。・・・だから、一人で、だなんて言わないでくれ」


「ケンゴ・・・お前・・・」


「それに、これはきっと、俺の問題でもある。・・・その勇者は、きっと俺なんだろう。・・・いや、今の俺じゃないかもしれない。・・・でも。俺があの時、魔女を止められていれば。こんなことにはならなかったと思うんだ。・・・だから。俺も。いや、俺たちが、皆の敵を取るんだ。そして、この世界を救うんだ」


「・・・」


魔蝕だろうが、アリアル・アーマーだろうが、もう関係ない。今白夜と名乗る彼らは、俺の仲間たちの過去を奪った。いや、この世界の皆の未来をも奪おうとしている。・・・俺はゲームの主人公じゃない。みんなを纏める力はないかもしれないし、その勇者の持つ能力だってない。

・・・でも。これがきっと、俺の使命。この世界にやってきた、俺の。存在理由なんだ。

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