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第十六話 技術都市へ

オリンピアの用意した移動型住居に乗り込み、俺たちは今後を話し合っていた。


「それでこれからどうするんだい?ピスティス側は捜索し終わったが、次はエルピスの方にでも行ってみるかい?」


エミリアが言う。エルピスは様々な人々が集まる交易都市。もしかしたらアイツらの足取りを知っているものがいるかもしれない。


「そうね。エルピスならここから近いし、人込みに紛れられるからもしケンゴの言っていたバトルアーマー乗りたちが追って来ててもそう簡単に手出しは出来ないでしょ」


そんな話をしていると、オリンピアがお茶を持ってくる。


「お待たせしましたー。・・・それで、次はエルピスに向かうんですね?」


「ああ。そのつもりだ。・・・ところで、この車はオリンピアが運転するのか?」


その言葉にオリンピアは首を振る。


「ああいえ、この車は運転手はいらないんですよ。・・・『起動アクティベート・アポロ』」


オリンピアが天井に向かって言葉を紡ぐ。すると、どこからともなく機械音声が流れだす。


『イエス。オリンピア。自動操縦AIアポロ、起動完了しました』


「あらぁ~、家が喋った~」


『ノー。私はこの家そのものではありません。オリンピアの前のマスター・・・いえ、この情報は今は不要ですね。ともかく、私はこのギルドハウスカーの自動操縦プログラム兼マスターの話相手です。以後お見知りおきを』


無機質でありながらも感情が見え隠れするその声を不思議に思っていると、オリンピアがおずおずと切り出す。


「あのー、それでですね、エルピスに行くならちょっと向かいたい都市があるんですけど、いいですか?」


「エルピス領内に?別にいいけど、どこに向かうのかしら」


アネッタが聞くと、オリンピアは続ける。


「はい。先ほどの戦いで私の武器が少し傷ついてしまったので、これからの戦いや彼の力にも耐えられるような素材で武器を作り直そうと思いまして、ウールカで仕入れをしたいな、と。」


ウールカ。確かあそこは技術都市と呼ばれる場所で、ガンナーやオリンピアのようなカラクリ使いが集まる場所だ。技術を結集させる場所であり、情報も多くある場所だ。ついでに情報収集も出来たらいいだろう。俺はその胸をアネッタに伝えると、彼女は分かったわ、と言い、


「それじゃ、次の行き先はウールカに決まりね。それじゃアポロ、だっけ?操縦よろしくね」


『イエス。目的地をウールカに指定。移動を開始します』


その言葉と共に家が動き出す。もっと揺れるかと思ったが中はほぼ揺れもなく、快適だ。


「すごいでしょ!本来はもっと悪路でも快適に進めるように設計されてるので、このくらいの道だったら動いてるのすら感じないくらいなんですよ!・・・まぁ、さっきアポロが言ってた通り、これは私の発明じゃないんですけどね」


オリンピアがはにかむ。前のマスター・・・。気になるが、きっとそれについては何も喋らないだろう。少なくとも、俺がやっていたゲームではこんな乗り物は登場していなかった。

そんな考え事をしていると、急に車が止まる。


「む、どうしたんだ?急停止したように感じたが」


エリーシャが言うと、即座にアポロが返答する。


『エマージェンシー。前方にモンスターの群れを発見。種別は『アングリーパンプキン』。数は20と推定されます』


「アングリーパンプキンか・・・」


「このあたりじゃあまり見ないモンスターね・・・。それに、数が多いわ」


アネッタが言う。そう。奴は季節限定イベントで出てきたモンスター。本来の生息地はもっと森の奥深くとかのはずだ。モンスターを操る預言者とかいうやつは倒したが・・・、アイツが前もって配備していたモンスターが野生化でもしたのだろうか。・・・とにかく、先ずはモンスターを撃退しなくては。


「アングリーパンプキンは炎が弱点だ。アネッタ、頼めるか?」


「ええ、分かったわ」


「ボクたちは出なくてもいいのかい?あいつならボクだって戦ったことがある。数匹ならこっちで受け持つよ」


「そうか、わかった。それじゃ・・・憑依!」


――――――


私とエリーシャは車から降りる。ケンゴの力で魔力の補充は十分。これなら一気に攻めきれる。車の前に出ると、そこには鎌を持ったパンプキンヘッドが無数にいた。20、と言っていたが、確かにそのくらいはいそうだ。


「エリーシャ、行くわよ。そっちは憑依がかかってないんだから、無理しないでよね」


「問題ないさ。ケンゴ。アネッタは姫なんだからあまり無茶はさせるなよ?」


「ああ、分かってる。・・・行くぞ!」


ケンゴのその言葉と同時に私たちはモンスターに向かって駆けだす。走りながら私は魔法陣を描き出す。


「先ずは数を減らすわ!『ファイアストーム』!!」


ケンゴの強化が乗った攻撃がアングリーパンプキンを焼き払う。巨大な炎の竜巻に巻き込まれたアングリーパンプキンは消滅し、それだけで数は半分以上減った。


「こっちも負けてられないな。おい!お前らの相手はこのボクだ!はっ!」


向こうでエリーシャが3匹ほどモンスターを引き付けて戦っている。初めて戦っていた時もそうだが、エリーシャの剣技は目を見張るものがある。アングリーパンプキンの触手攻撃を身のこなしだけでかわし、鎌での攻撃を剣で受け流し、その勢いでモンスターの顔面に突きを繰り出し打ち倒す。


「・・・おっと、見とれてる場合じゃないよね」


エリーシャから視線を外し、自身に向かって飛んできていた触手をかわす。そのまま触手攻撃の場所に仕掛けていた爆炎魔法を起爆する。

爆炎に巻き込まれたモンスターはそのまま消滅する。


「後は6体くらいね。それじゃ、最後にもう一発!」


私は魔法陣を生み出す。残っていたアングリーパンプキンが一斉に襲い掛かってくるが、ケンゴの強化が乗っている私の詠唱の方が早い。


「固まってくれるとは好都合ね!『ブラストフォース』!」


前方に配置した魔法陣から火炎弾を大量に発射する。それらすべてがモンスターに直撃し、消滅する。それと同時にエリーシャの方に行っていたモンスターもすべて斬り伏せ終わったようで、エリーシャが戻ってくる。


「エリーシャ、そっちも無事に終わったようね」


「ああ。あの程度の相手、もっといても問題なかったさ。・・・さ、戻ろうかアネッタ。それとケンゴ。さっさと憑依を解除しろ。お前が憑依していいのはバトルの時だけだからな」


「はいはい、分かってるよ」


そう言ってケンゴが私の中から離れていく。・・・不思議な感覚だけど、最近はもう慣れてしまった自分がいる。・・・それに、ケンゴがいるときの安心感が、私にとってとても幸せで。


「ほらアネッタ。ボーっとしてると置いてくぞ」


「・・・あ、今行くわ!」


ふと浮かんだその感情を振り払って、私は車に戻っていく。


―――――


「・・・さて、トラブルはありましたが再出発しましょう!やっぱり皆さんがいると心強いです。モンスターが出た時はいつも苦労してましたから・・・」


オリンピアが言う。確かに、平時でもこのあたりはそこそこなモンスターが出現する。一人では大変だったのかもしれない。


「ま、これからはアタシらがいるんだ。大船に乗ったつもりでいればいいさ。ヒーッヒ」


「ええ。でも、私だって戦えますから、足手まといにはなりませんよ!」


オリンピアもやる気十分だ。・・・しかし、初めてここに飛ばされたとき・・・、いや、飛ばされる前から。俺は一人だった。でも、今ではこれだけの仲間がいる。・・・この仲間を、もう失いたくない。いや、仲間だけじゃない。もう誰も、失わない。

・・・それが、俺の心の誓いとなっていた。


「それじゃ、ウールカに向かって出発しますよ!」


『ルートを再検索。ウールカに向けて出発します』


再び車が動き出す。目指すは技術都市ウールカ。そこで奴らの情報が分かればいいのだが・・・。

期待と不安が混じりながらも、俺たちは目的地へと向かっていく。着実に、一歩前へ。

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