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第十五話 研究者・オリンピア

800アクセスありがとうございます。

数十分経っただろうか。彼女は満足したのか俺から離れる。


「―――いやー、いいものを見せてもらいました。私の知らないアイテムがこんな近くで見られるなんて、夢みたいです。」


恍惚とした表情で彼女は言う。・・・俺としては数十分も周りの子たちからの視線が痛かったのだが。


「それで、皆さんこれからどうするんですか?」


「あー、そうね。さっき道すがら説明したけど、私達は私の国を襲った敵の正体を突き止めるために旅をしているの。それで、ピスティスの領内を探索していたんだけど・・・」


「ここ以外の全ての町で成果無し。ここでも手掛かりは見つからなさそうだし、ピスティスを出て別の国へ行ってみようか、とね」


エリーシャが言う。・・・そうだ。この国にやってきた預言者。あいつの手掛かりはこの国にはなかった。でも、アイツの口ぶりからこの世界に奴の仲間がいるはずなのだ。俺がこの腕輪をもらいこの世界に来た理由。最初にアネッタと会い、そして彼女の国に訪れた脅威が俺のことを知っていた、これが偶然じゃないとしたら、俺が彼女に出会ったこと、そして、あの預言者とその親玉は俺と無関係ではないはずなのだ。それこそが、俺がこの世界に来た理由。俺が本当にやらなきゃいけないことなんだ。


「そうですか・・・。もっと話していたいんですけど、あまり呼び止めておいてもいけませんね。それじゃ―――」


オリンピアの声を遮るような爆音。それは、この研究所のすぐそばで聞こえた。


「何の音だろう…。皆さんは待っててください。ちょっと見てきますね」


オリンピアはそう言ってひょいひょいと部屋から出ていってしまう。・・・しかし、今の音。少し危険を感じた俺は彼女を追いかけるように走り出す。


「ちょっと、ケンゴ!」


「私達も・・・ってあらぁ~」


後ろでメアたちが何か騒いでいる。まぁ、これだけの荒れた部屋だ。似たような状況を経験しているものでなければ突破は難しいだろう。・・・そう、俺以外は。


――――――


私が外に出ると、巨大なバトルアーマーが周囲を荒らしていた。


「ちょっと、何してるんですか!ここは私の家ですよ!」


「おー出てきた出てきた。おい、こいつが例の女か?」


バトルアーマーの中からチンピラが出てくる。その後ろにはさっき私の荷物をひったくった男。


「ええそうですぜ兄貴!アイツとその仲間が俺をいじめやがったんだ!」


「何を言ってるんですか!あれはあなたが先に私の荷物を盗もうとしたんじゃないですか!」


私が反論するが、兄貴と呼ばれた男が答える。


「そんな細かいことはどうでもいい。お前は俺の子分をコケにした。その報いは受けてもらうぜ」


そう言ってバトルアーマーに戻っていく二人。そして、そのアームが私を襲う。


「きゃぁぁぁぁっ!」


しかし、その攻撃は私に届くことはなかった。


「あ?なんだテメェは」


「え・・・?」


目をあけると、私の部屋にあった剣でアームの攻撃を受け止めている彼の姿があった。


「大丈夫か、オリンピア!」


「え、ええ・・・。でも、ケンゴさん、あなたの方が・・・」


「・・・ああ。実際やばい。でも、これしか方法はなかった、だろ?」


ケンゴさんはそう言って笑う。しかし、少しずつ押されて行っている。


「くっ・・・、やっぱり俺の力じゃ現界か・・・!」


「無駄無駄無駄ァ!このまま二人仲良く押しつぶしてやるぜぇ!」


アームの力が強くなる。・・・このままだと二人ともやられちゃう。それは、させない!


「ケンゴさん!私が合図したらそのまま横に飛んでください!」


「え?・・・ああ、分かった。お前に任せる」


「了解よ!・・・えっと、ここをこうして・・・」


「何やってるか知らねぇがこいつは最新型のバトルアーマー!お前みたいな貧民に壊せる訳ねぇだろ!」


「やってみなきゃわかりませんよ!・・・ケンゴさん!今です!」


「ああ!」


ケンゴさんが飛びのく。そのままアームが私めがけて飛んで・・・すんでのところで止まる。


「何だと・・・!?」


男が驚く。私の背負っていたバックパックから複数のアームが伸び、それがバトルアーマーの攻撃を防いでいるのだ。


「戦闘メカくん一号!久しぶりの戦いだけど、頑張ってね!」


私は腕に直結した導線を操りアームを動かす。そのまま相手のアームを力任せに跳ね飛ばす。


「うおぉっ!?」


相手のバトルアーマーがふらつく。しかし、男は怒ったような声で。


「やりやがったな・・・!だが、これならどうだ・・・!」


男が指をパチンと鳴らす。すると、さらに茂みから多数のメカが出現する。どうやら仲間を忍ばせていたらしい。


「こんな量じゃ・・・」


メカの扱いは私の方が上だと思っていた。でも、この量を相手にするんじゃ・・・


「オリンピア!俺も力を貸す!」


遠くで彼の声が聞こえた。・・・彼の力。・・・憑依の力。それがどういうものか知らないけれど。私は。


「・・・ええ、お願いケンゴさん、力を貸して!」


そう叫んでいた。・・・そして、それと同時に私の体が軽くなっていった。


「憑依完了。・・・さて、全力で強化するけど、これの操り方は分からないんだ。そこは頼んでいいか?」


彼の言葉が聞こえる。私は無言で頷いた。確証はないけど、彼の力を得た時に感じたこの感覚。これなら、この数でも行ける!


「何してるか知らねぇが・・・、この数相手じゃお前に勝ち目はねぇんだよ!」


男の合図でメカが一斉に私を襲う。しかし、それらすべてをアームで受け流す。普段なら感覚の制限で動かせていないアームまで動かせる。まるで腕が4本になったような感覚。これが彼の能力、強化。その未知の感覚で高揚しながらも、私は冷静に攻撃を捌いて行く。


「くそっ、何やってるんだ!たかが女一人に何をてこずっている!」


男が焦ったように攻撃を急かす。・・・でも、それが命取り。


「ブレードアーム!」


アームの一部を剣に変形させ敵の攻撃の隙をついて相手のメカのアームを破壊する。このタイプのメカは胴体に人を乗せてるから攻撃手段を潰すだけでどうにかしようとした。・・・私の発明は人を救うものであって殺すものじゃないからね


「くっ・・・!うわぁぁぁぁあ!!」


私の攻撃を見て手下と思われるロボットが逃げ出していく。私は男の乗っているメカに剣の切っ先を向けて言う。


「さぁ、残るはあなた一人です。負けを認めてここから離れてください。私はそこの人に道具を盗まれそうになっただけですから、あなた達がこれ以上襲ってこないならこちらから手出しはしません」


「ぐっ・・・!俺を舐めんじゃねぇぇぇぇ!!」


私の忠告を無視して男は突っ込んでくる。・・・このメカの搭乗口はさっき見た。なら、狙うは一つ。


「忠告はしましたからね!あと、かがんでいた方がいいですよ!」


私とメカがすれ違う。メカの上半分が吹き飛び、男のいるコックピットが丸見えになる。・・・普段ならこれだけの出力は出せないけど、彼の力でこんな芸当も無理せずできる。・・・改めて、彼の持つ力に興味を持った。


「ひ、ひえぇぇ・・・!覚えてろよ!」


残ったメカの下半身部分で逃げ出す男。・・・とりあえずはこれで大丈夫だろう。


「ケンゴさん、ありがとうございます。あなたの力でどうにか対処できました…。」


それと同時に私から力が抜けていく感じがして、余剰に操っていたアームが制御を失ってうなだれる。そして、物陰から彼が姿を見せる。


「いや、俺だけの力じゃないよ。オリンピアのメカを操る力が優れていたから俺の強化が生きたんだ。オリンピアの手柄だよ」


彼は笑う。・・・その笑顔が、私には眩しかった。


―――――


「しかし、さっきの男…。あのままだとまたやってきそうだな」


後からやってきたアネッタたちと合流して今後の話をしている時、俺はふと思ってオリンピアに言う。


「そうですね・・・。この場所がバレている以上、何度も襲われるかもしれません」


「私が城に戻ってその男のいる組織を調べてきてもいいけど・・・」


アネッタが提案するが、彼女が首を振る。


「いえ、そこまで迷惑はかけられません。・・・でも、一つだけ迷惑をかけたいんですけど・・・」


「?どういうことだ?」


エリーシャが疑問を投げかける。すると、彼女が恥ずかしそうに言う。


「私も仲間に入れてください。彼には二度も助けられましたし・・・、それに、私の発明をあなた達にも使ってもらいたいんです」


「え・・・」


彼女の提案は驚きのものだった。俺は言う。


「ついて来るって・・・、この家はどうするんだ?お前が離れてる間にあいつらに荒らされでもしたら・・・」


「ああ、それは大丈夫です。・・・それに、これがあればきっと皆さんは楽になりますから」


彼女がそう言ってリモコンを散りだすスイッチを入れる。すると、小屋だったものが変形を始め、巨大な車、キャンピングカーのようなものに変形する。


「うわ・・・すっごい・・・」


アネッタが絶句する。他の皆も同じように口を開けていた。オリンピアは続ける。


「私のこの家、こうやって移動できるんです。いつもはこうやって一つの場所で暮らすんですけど、貴重な道具とかを取りに行くときとかにこの形態で家ごと移動したりするんです。どうです?どこまでも歩きってのも大変でしょう?」


そう言って目を輝かせるオリンピア。エミリアがやれやれと言った顔で俺に言う。


「どうする坊や、彼女は完全についてくる気満々だぞ。アタシは別に構わないけど、お前さんはどうなんだい」


「・・・オリンピア。俺たちの冒険は何があるか分からない。危険なことも他kす案あると思う。…それでもいいんだな?」


「ええ!末永くよろしくしたいですよ、こんな体験めったにできませんし!」


彼女の意志は固いようだ。・・・まぁ、元々あの男たちの追撃から逃がすために別の場所にいてもらうつもりだったのだが。


「・・・なら、よろしく頼む。俺たちに力を貸してくれ」


「・・・はい!よろしくお願いします!」


こうして、発明家オリンピアを仲間に加えた俺たちは彼女の移動基地を使い新天地を目指すこととなった。


――――――


「・・・それで、むざむざ戻ってきたってことか」


「は、はぁ・・・。ですが、あの女、とんでもない力で・・・」


とある部屋。さきほどバトルアーマーに乗っていた男が黒ずくめの男と会話していた。


「使えないやつだ。せっかく『ヒメ』の加護を持つバトルアーマーまで貸してやったのに負けるとはな。」


「め、面目ねぇ・・・」


「・・・だが、その女の傍にいたという男。やはり奴があのガーネットの言っていたイレギュラーで間違いないようだな」


男は預言者ガーネットの姿を思い浮かべる。ピスティスという国ごと動かしヒメの復活を達しようとしていた我が同士。・・・だが、奴はイレギュラーに敗れた。・・・しかし、俺は違う。と彼は心に思う。


「・・・イレギュラー。次はこのトパーズが相手だ…。あいつのようにはいかないぜ、俺はな・・・」

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