第十三話 新たな戦い
お待たせしました。完結のめどが立ったので連載を再開します。第30回くらいを目安にしています。
また、PV600ありがとうございます。
「待って・・・!待って、ください・・・!」
私は走っていた。目の前には私のバッグを持った男。大事な道具を運んでいる最中にひったくりにあったのだ。
「待てと言われて待つ奴があるかボケ!こいつがなんなのかは知らねぇが、金目のもんみてぇだし売って金にしてやる!ボーっとその辺を歩いていたのが運の尽きだったな!」
「待ってください・・・!それは本当に大事なものなんです・・・!」
息が切れてきた。少しずつ距離を離されていく。
・・・ああ、こんなひ弱な私を許してください・・・。
疲れで意識を失いかけたその時、ピタッとひったくりの足が止まる。
「な、なんだ!?急に体が動かなく・・・!?」
ひったくりが動きを止めたその時、物陰から銀髪の男性?が現れる。
「はっ!」
「ぐえっ!」
彼は剣の鞘でひったくりの頭を叩き気絶させる。そして、バッグを持って私の下にやってくる。
「ほら、大丈夫か?このあたりは治安が悪いから・・・。大事なものなら、もっと気を付けるんだぞ」
「あ、はい・・・。ありがとうございます。・・・さっきの足止めも、あなたが?」
私が聞く。さっきの攻撃を見るに彼は剣士。パラライズの魔法を使えるような風体じゃない。それに、魔法ならば魔力で感知できるはずなのだ。なら何かの剣技で・・・と考えていると、彼は困ったような顔をする。
「・・・あぁ、あれはボクじゃない。・・・ほら、いつまでも隠れてないで出てきたらどうだ」
「別に隠れてたわけじゃねぇよ・・・。全く、憑依中のダメージはこっちにも来るってのに全力で殴りやがって・・・」
茂みからさらに一人の男が出てくる。女の子3人と一緒だ。・・・しかし、先ほどの会話で不思議な単語が出てきた。
「・・・憑依?」
これが私・・・オリンピア・シュメールと彼の初めての出会いだった。
――――――
ピスティスでの戦いから数日。俺達は預言者の言っていたあのお方、とやらの情報を集めるため、教国領内を旅していた。
アネッタに案内され、広いピスティス領をぶらぶらと歩き回っては情報を聞きまわっていた。しかし、一向に情報は出てこない。
「・・・まぁ、なんとなくわかってはいたが・・・。あいつら、いた痕跡まで完全に消してやがるな」
「そうね。この世界でそこまでの情報消去が出来るとは思えないし・・・、別次元から来た、ってのは嘘じゃないみたいね」
アネッタが言う。・・・別次元からの侵略者。異世界から来た俺が言うのもなんだが、完全にSFか何かだよなぁ。
「それでぇ、次はどの街に行くのぉ?ピスティスは広いけどぉ、そろそろ回りきったんじゃないかなぁ?」
それを聞いてアネッタが言う。
「ええ。あとは次の街・・・、アレスガルで最後よ。ここはちょっと治安が悪いから、まぁ大丈夫だと思うけど用心しておいてね。・・・特にアンタ」
アネッタがこっちを見る。・・・まぁ、この中で直接戦闘力が一番低いのは俺だけどさ。
そんなたわいもない会話をしていると、突如悲鳴が聞こえる。
「きゃあぁぁぁ!!ひったくりー!」
「女の子の声ね。盗賊に荷物でも盗まれたのかしら。このあたりでは頻発するって聞くけれど・・・」
「助けよう。困ってる人は見逃せない」
「全く、お前ならそう言うと思ったよ。・・・んで、作戦は?」
エリーシャが俺に聞く。・・・まぁ、聞くまでもないが、という顔をしているが。
「俺が泥棒に憑依して足止めする。その間にエリーシャ、殺さない程度に攻撃して盗まれた荷物を取り返してくれ」
「了解だ。アネッタやエミリアだと加減が出来ないだろうしね」
「む、姫はともかくアタシは加減くらいできるぞ。ま、手を滑らせてそのまま首でも飛ばしてしまうかもしれんがね。ヒーッヒ!」
エミリアが笑う。・・・いや、笑い事じゃないんだが。
「俺達は悪人を殺すためにいるんじゃない。もう人は殺したくないんだ」
「・・・そうだな。それじゃ、作戦開始と行くか」
・・・そして、時は先ほどの場面に移る。
――――――
「・・・あー、まぁ、こいつの魔法みたいなもんだ。ほら、パラライズとかで足止めできるだろ?そんな感じ」
剣士の青年が言う。しかし、私はさらに突っ込む。
「いいえ、あの行為に魔力反応はありませんでした。これ私の発明品なんですけど、メガネ型の魔力感知器なんですよ。そこの赤髪の女性の方やシスターさん、あとそこの魔女の子供・・・?には魔力反応はありますけど、あなた達に魔力反応はないんです。だからその言い訳は通用しませんよ。あと、シスターさんがパラライズを使ったってのも言い訳になりませんよ?あのひったくりの人に魔力がかかった反応もありませんから」
「・・・めっちゃ早口だな」
男がドン引きしている。・・・ああ、またやっちゃった。気になることになると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。
「あああすみませんすみません!別に悪いとかそんなんじゃなくて、ちょっと気になるというかなんと言うか!」
私があたふたしていると、男が頭をかきながら言う。
「・・・信じないとは思うけど。俺は他人に憑依することが出来る。その相手は多少だが自由に操ることが出来るんだ。それであの盗人の動きを止めたんだ」
「・・・」
ま、信じられないよな、と彼は続ける。・・・私は目を輝かせていた。
「すすすごい!そんな能力今まで見たことがないです!それに魔力で感知できないってことは魔力で動いてないんですよね!何かの要因、特にアイテムとかで行使してるんですよね、そうですよね!」
私はぴょんぴょんと彼の周りを飛び回る。彼は困った、という顔をしながら服の袖をまくる。そこには見たことのない腕輪が付いていた。
「この腕輪の力で俺は憑依することが出来る。・・・てか、こんな妄言にしか聞こえない事信じるのか?」
「信じます信じますとも!あ、私はオリンピア・シュメールって言います!このあたりで発明をしていて・・・。あっそうだ、この荷物を早く届けないといけないんだった!」
私は配達の途中だったことを思い出す。でも、今この人たちと離れたらもう二度と会えない。そんな予感がしていた。
「うーん、このあたりは治安が悪いしまたさっきみたいな盗人が出ないとも限らないのよね。女の子一人で行かせるのはちょっと危険よ」
赤髪の女性が言う。そして。
「そうだな。俺たちがその配達先まで護衛しよう。特に急いでるわけじゃないしな」
「いいんですか!?」
私が聞く。今までそんな提案をされたのは初めてで。
「ああ。困ったときはお互い様だろ?」
彼は何気なしに言う。・・・その言葉が、とても嬉しかった。
――――――
オリンピアと名乗る女性を警護することになった俺たち。その道中で俺は彼女に聞かれるがままにこれまでのことを話していた。
「異世界からやってきた・・・。ふむふむ、興味深いです・・・!」
彼女は俺の話を否定せず、全て信じていた。アネッタたちと初めて出会った時から思っていたが、この世界の人々は異世界から来たとかいう人に対してうさん臭ささとか感じないんだろうか。・・・まぁ、そっちの方が俺としては楽でいいんだけど。
「それに、アネッタさんがこの国のお姫様だったなんて・・・!とんだご無礼を・・・!」
「あーいいのよ。あんまり姫姫言われて畏まられるのもいい気持ちじゃないし。私のことはアネッタって呼び捨てでいいのよ?」
「いいいいえ、そんな畏れ多いです!・・・でも、さっきの話に出てきたその巨大な鉄蛇、この目で見て見たかったです。別の次元から来た生命体・・・。きっと何かいい新発見があったかもしれないのに・・・」
彼女は研究者のようで、様々な研究をしてきているという。そのため、俺たちの話もすべてが興味深いという。
「あの場は危険だったわ。それに、あんなの調べても面白いことなんてないわ。・・・あれは、存在自体が死の概念そのものみたいだった。生物でも、機械でもない。何か別の大きな存在・・・。そんな感じだったわ」
「ふえー・・・そんな恐ろしい怪物も倒せてしまうなんて、あなた達はすごいんですね!」
彼女は言う。・・・確かに、あの偽骸を倒せたのはすごいことだったと思う。・・・でも、それは。
「あれを倒せたのは全員の力があったからだ。人の力を合わせればどんな困難でも立ち向かえる。俺はそう思ってる」
ちょっとカッコつけすぎたかな、と俺は思った。でも、それが俺の本心だから。
「いいですねぇそう言うの。憧れます。私はほら、見ての通り研究一色であまり人と交流がなくて・・・。そう言う友情、みたいなものに憧れてるんです」
彼女が言う。・・・そうか、この子も一人、なんだな・・・。
「あ、見えました。あそこのおばあちゃんにこの機械を届けるんです」
目の前に小屋が見えてくる。彼女は走ってその家まで行き、声をかける。
「おばあちゃーん!頼まれてた装置、持ってきましたー!」
「おぉありがとうねぇ、いつも助かるよ」
おばあちゃんに機械を渡すオリンピア。その後一言二言話した後、戻ってくる。
「いやー、無事に届けられてよかったです。色々あった衝撃で壊れてないか心配だったけど、何とかなってたみたいです」
「よかったな。ところで、何の機械を渡したんだ?」
俺が聞く。すると彼女の目が光ったように感じた。
「気になります?気になっちゃいますよね!さっきの機械もう一つあるんですけど・・・、これです!」
彼女がバッグから取り出したのは小さな機械。
「かなり小さい機械ね。手のひらに収まるサイズで・・・」
「えぇえぇ。このコンパクトさが大事なんです!ここのボタンを押すことでアームが伸びるんです。このアームは自由に動かすことが出来て、高い所にあるものを取ったり背中をかいたり手の届かない隙間に入っちゃったものを取ったりと多機能なのが売りなんです!」
そう言いながらガチャガチャといろんなアームを出したり戻したりするオリンピア。その目は星のように輝いていた。
「そうです、立ち話もなんですから一度うちの研究室に来ませんか?今回のお礼もしたいですし・・・。」
俺は仲間たちの方を見る。問題はなさそうなので、了承することにした。
「ああ。お邪魔でなかったら」
「邪魔だなんてとんでもない!それに、その腕輪、かなり興味があるんですよ!よーく見せてくださいね!」
こうして俺たちは、彼女の案内で彼女の家に向かうのだった。




