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第8話 打開策「地味にコツコツと」

鍛冶屋でなんやかんやします。

隆康はアンに打開策を耳打ちした。


その作戦名は「地味にコツコツと」やっていくである。


良い素材を使って、丁寧に作り上げた物を作ってお客に売る。商売の基本だ。


「まず、良い素材ってのがネックになるんだけど、それは今から取りに行こう!」


「えっ、いまから?もう昼近くだけど、本格的に掘り始めたら夜になっちゃうよ!」


「む、そうか。ならそれは明日朝早くからだな。そして次に丁寧に作品を仕上げるというのはいつも通りやってもらったらいいから。あとはアピールの問題だな。」


そう、代替わりした鍛冶屋で閑古鳥がなく理由は、偉大な先代と比べられて技が劣っていると思われているからだ。そんなことはないと技術で証明するにはいささか時間がかかる。


なので、そこは応急的処置だ。


「街の広場に人を集めて、作品のお披露目をしよう。主に包丁や大工道具からだな。」


アンはそれにたいして首を傾けながら質問してくる。


「どうして包丁や大工道具なの?技術を見せたいなら、武器や防具かと思ったんだけど。」


「それも良いんだが、この寂れた街に武器や防具をよく分かっている人がどんだけいるのかなって思ってさ。包丁なら主婦たちが物の良さを分かってくれるし、大工たちは本来自分で道具を作るほど物にはこだわる人たちだ。本当に良いものならば絶対に飛び付く。

あとは今回のデモンストレーションで在庫の包丁、大工道具類は全部破格の値段で売り切れ。そうすることで、親父とアンの刃物類の差があまりないと教えるんだ。当然、お客には親父とアンの刃物が混ざっていることを教えて、お客に目利きをさせるんだ。そして、実際に使ってもらえ。そうすると、お客たちは最初必死に親父の刃物を買おうとしてくるが、結局はアンの刃物も良いものだと気づくはずだ。」


「大丈夫かなぁ、父の作品と混ぜてしまって。っていうか、なんでタカくんはあたしの作品が良いって言い切れるの?まだ見せてないじゃない。」


能力を覗き見したことはだまっておこう・・・ごめん。


「あのハンマーのキレ、そして、仕事場の様子などから頑張って修行しているのはわかっていた。それに実際に見せてもらって、技術が劣っているようであれば、短期間で強制的に向上させてみせる。」


隆康は悪い笑みをアンに向ける。


アンはぶるぶると震えながらも、気丈に言い返す。


「お手柔らかに頼むわ。まぁ、ということなら、早速作品を見てもらおうかしら。こっちよ!」




鍛冶屋の一角、そこは作品を展示する棚が何段もある。


左手が親父のノルトン作。右手がアンの作品だ。まずは包丁からだな。

包丁の一振りを手に取り、隆康は手近にあった、薪を宙に投げると横一文字にスパッと切り裂いた。

あっという間の出来事にアンは呆然としている。


「うん。いい感じだ。大造級の甲か乙くらいにはなってる。刃物のキレだけで薪も切れるってのは良い宣伝になる。デモンストレーションは俺がやろう。子供でも薪が切れるってな!次は大工道具ね。」


カンナやノミなどメジャーどころの大工道具を見る。こちらは、中造級の乙くらいで、包丁よりは落ちるが良い腕であることに違いはない。


「包丁のほうがアンは得意なのかな?このノミは少し魔法で仕上げをしよう。」


ここで、再び創造力の出番である。『刀剣類を研ぎ澄まし、最高の切れ味にしたい』と頭で念ずると・・・


『切れ味倍増の古代魔法(永続):どんな刃物でも2倍の切れ味となる。一方で錆付きの刃物等のように、切れ味の悪い状態のものも2倍にしてしまうため注意が必要。』


早速切れ味倍増の魔法をかける。


手元からノミへと霞がじわじわと進み、やがて霞が収まると、隆康は『観察』の魔法で手元の品を観てみる。すると、中造級であったノミが神造級の丁にかかっているではないか。さらに隠し能力がついており、自動修繕の機能付きである。

これは売ると家がたつ値段だな。


「ちょっとやり過ぎた。このノミは売ると騒ぎになるかもしれんくらいヤバめな等級になった。ここぞというときに出した方がいい。」


「ちょっと、今の何?なんかボヤーッとした魔法?それが終わったらなんか、雰囲気が変わって恐ろしい武器に見えてきたわ!!」


「たぶん、神造級の丁くらいになってんだもん、そりゃそうだよ。家一軒くらいたつんじゃない、値段的に・・・」


「なんつうものに変えてくれてんのよ・・・。それじゃ売れないじゃない。」

アンは呆れつつ、憤慨して見せる。しかし、それは本気ではないようだ。


「とにかく、ノミは今後、切れ味を倍増させれるから、失敗作もとっておいてくれ。失敗作の日用級でも中造(なかつくり)大造(おおつくり)級にできるからさ」


そうして、アンと隆康の二人は大量の刃物類を名刀に仕上げ、デモンストレーションに向けて準備をしていくのであった。


明日は素材からこだわり、鉱山へ行く予定である。







切れ味倍増の古代魔法 ができるようになりました。


鍛冶屋の努力をバカにしたような魔法のため、弾圧されて途絶えた魔法なのかもしれない。


ということにしておきます。




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