第7話 鍛冶屋の娘 アン
鍛冶屋で暴れる野郎共を成敗!
少女ハンマー事案により、本人よりも周りが衝撃を受け、時が止まっているなか、隆康は用件を再度口にする。
「ここは鍛冶屋でいいのかな?」
少女はハッとなりながら答える。
「え、えぇ。そうよ。えっと・・・あなた大丈夫?頭とか・・・
」
「初対面で頭がおかしいと言われるのは心外だ。」
少女は少し面食らいながらもさらに口を開く。
「そういうんじゃなくて、えっと、とにかくいきなり殴ってしまってごめんなさい。」
「うん。そういう殊勝な態度は関心、関心。」
隆康は一人て満足した風にウンウンと頷いていると、衝撃から回復したボスらしき男1(名前はもう忘れた)が口を挟んでくる。
「いきなり殴ってくるとは暴力鍛冶屋だ。少年への暴行罪だ!衛兵を呼べーー!」
俺は呆れながら男1に向かっていう。
「その発言はお前が被害者みたいな言いぶりだが、ハンマーがとらえたのは俺の頭だぞ。お前らはどう衛兵に説明するんだぃ?」
「う、いや、少年に対する暴行を見て、第3者が現行犯逮捕は可能だ!!」
「その被害者が問題ないっていうのに、お前はその被害者の訴えの権利をかっさらって、声高に被害を訴えるの?」
「うっ、うるせぇ、うるせぇ。とにかく、被害を与えられそうになった。お前もその女とグルで俺たちを騙そうとしたんだ、そうに違いない!お前ら、こいつらまとめて袋叩きにしてしまえ!」
でた、三下の定番のセリフ。人生で一回でもいいから言われて見たいセリフだ。ただし、こちらに余裕乘ある場合に限るが・・・。 今回の件は余裕のある場合だ。男たちより強い女性がふるった一撃で大丈夫な隆康が、その10分の1くらいの男たちの攻撃が効くわけがない。
しかし、隆康は前世のくせで避けてしまう。自衛隊の新隊員教育、陸曹候補生教育において仕込まれた、自衛隊新格闘の成果である。隆康は攻撃はともかくとして、回避などの体さばきには定評があった。
今回も少年に似つかわしくない動きで、男たちの攻撃を避けていく。当たっても効かないのが分かっており、避ける必要もないのであるから、その余裕感が出てしまい、それが男たちの怒りにさらなる油をそそぐ。
ある程度避け続けていると、当事者の一人である少女が声をかけてくる。
「あ、あたしも手伝おうか?」
「あー、いや、いらないかな。あなたが手を出すとこいつら死んでしまうし、鍛冶屋がやれなくなったら意味ないでしょ?」
「そっ、それはそうだけど・・・・・・、ごめんなさい。」
少女は隆康に謝罪の言葉を吐く。うなだれている感じを見るに、本心からの言葉らしい。
「それに大丈夫だよ。そろそろこいつらも体力が切れる頃だから。普段、鍛えてなかったんだね、冒険者のくせに。」
男たちをそうディスるも、男たちはゼーハー言って、こちらの声は聞こえていなかったみたいである。
あとは、ボス一人だけがまだ頑張っている。それでも隆康には一発も攻撃は当たっていない。
「おい、頑張れ。あと少しで当たるかもしれんぞ。そう、そこでもっと鋭く突きをだせ。そうじゃない、蹴りの場合、大技は隙が多い。小技で相手の体勢をくずせ!」
いつの間にか、隆康式ブートキャンプに様変わりしていた。
どうも、こいつらのことを見てると自衛隊のころの後輩隊員たちの指導を思い出す。自分達が新隊員であったころも、よく古参の先輩隊員からシゴかれ、血へどをはかされながらも技術や体力を向上させてもらったものである。
いまの隆康はタカレーンとして少年ではあるけども、この冒険者たちを鍛えてやろうとも思っていた。
そうこうしていると、ボスの一人は力尽き、地面へと崩れ落ちた。 他の仲間たちも起きてこない。体力が戻るまで大人しくしているだろうということで、隆康は鍛冶屋の女性に話しかける。
「さっ、ということで、鍛冶屋について聞きたいんだけど。」
少女はビクッとしてこちらを見る。
「なっ、なにが ということで、なのかは分からないんだけど・・・。ま、助けてくれてありがと。鍛冶屋のことならなんでも聞いて。でも、まだ修行中だから専門的なことは答えられないかも・・・」
申し訳なさそうに少女は言う。
「問題ないよ。あ、自己紹介がまだだったね。私はツアード・ノル・タカレーン。街長のツアード・ノル・マックレーンの次男です。」
「あ、街長様のご子息様でしたか。あたしはアン。鍛冶屋のノイトンの娘。父は、都で開かれる武器展覧会の「至高の十刀」に選ばれるほどの鍛冶士だったのだけど、最近死んでしまったのです。」
「そうか、それはお父上のご冥福を祈ります。敬語はいりません。今回来たのは、この街の鍛冶屋がうまくいってないと父上、あー、街長が言っていたので、事情を聞きに来たんだ。」
一瞬、アンは畏まりかけたので、やんわり敬語はいらないと釘をさすと、やがて肩の力をぬき、普通に接してくれるようになった。
「そうよ、父ノイトンが死んでから、鍛冶屋の経営は一気に傾いたわ。数ある弟子たちも他に引き抜かれたり、都にもどったりして、ここには誰も残らなかった・・・何人か直弟子はいるんだけど、みんな素材探しのために遠方へ旅に出てるの。だから、いま、私しかこの鍛冶屋を守るものがいないの・・・」
アンはそう言って涙を目尻にためる。しかし、涙は見せたくないのか、向こうをむいてぐいっと手で拭うと、
「改めてごめんなさいね。頭をハンマーで叩いてしまったこと。つい、父の悪口や、この鍛冶屋のことを悪く言われて頭にきちゃって、気づいたらハンマーを振り回してたの・・・」
「いや、問題ないね。俺以外だったら不味かったかもだけど、とにかくあそこで寝転んでるやつらに当たらなくてよかったよ。あの威力は普通の人なら頭が吹っ飛ぶよ。さすが鍛冶屋ということかな?あの力はそう簡単には鍛えられないよ。」
そう誉めると、アンは照れつつも否定する。
「そんなことないよぉ。私は、一度も鎚を振らせてもらってないし、なぜか父も人前では鎚を本気で振ろうとしなかったの・・・」
えー、生まれもっての豪腕ってあるんだなぁ。もう一回魔力で見てみようかな。
女 名前:アン 女 鍛冶屋 修行中 17歳 レベル14 力 34 知力 42 敏捷 20 耐久 121 魔力 132
・・・
お、続きがある。
隠し能力:剛腕、天賦の鎚打ち、観察眼
あ、隠し能力とかあるんだ? じっくり視ようとしないと見えないのかな?
天賦の鎚打ちは鍛冶を志すものの憧れなんじゃないだろうか?
だから、アンの父親のノイトンも隠してたのかもな。普通に人より優れているとやっかみをうけるし、良い意味でも引く手あまたとなるだろう。 そのせいか。
あと、いつの間にかレベルも見えたぞ。さっきの男どもは見えなかったけど、見るからに弱そうで、レベルをまったく気にしてなかったもんな・・・。見る気がない場合も見えないってことなんだなぁ。 魔法って意外と奥が深いんだなぁ。
一人で難しそうな顔をして思いにふけっていると、気づけばアンが不安そうな顔をして待っていた。
「あー、ごめんごめん。ちょっと考え事してた。突然だけど、アン、君はやはり鍛冶屋の才能があると思うんだ。でないと、あんな強力なこうげ・・・じゃない、鎚打ちができるわけないし、そもそも女の子ではあのハンマーを振り回せないと思う。あのハンマーは親父さんの?」
「そうかなぁ?才能があれば嬉しいんだけど。このハンマーはそのとおり父親のものよ。このハンマーだけは弟子たちにも渡さなかったわ。」
「うん、その判断は正しいよ。観察すると、そのハンマーは非常に稀少な部類に入る、おそらく神造級の名品だよ」
武器や装備品等の等級は主にその稀少性に由来し、天神造、神造、大造、中造、普造、日用という6等級に別れており、その等級内にも甲乙丙丁の4ランクに分かれている。
天神造は神代の名工が作り上げたと言われる刀剣が有名で、この世に数点位しかないらしい。神造級が実質この世の頂点と言っても過言ではない。大造級は名人と言われる鍛冶士が到達できるレベルの作品で、中造級は腕利きの一握りが到達し、普造級が普通の鍛冶士レベルである。最後の日用はほぼ素人レベルの出来のことをいう。
おっと、脱線し過ぎた。
「えー、それはないよ、タカくん。あ、タカくんって呼んじゃった。いい? そんなすごいハンマーだなんて聞いてないし。あの父さんが大事そうにしてたのを見たことないわ。」
「まぁ、信じるも信じないも、アン次第だよ。それとね、今日ここに来たのは、この街の鍛冶屋を立て直し、人をガッボリ呼んで街を活性化させようと思ってさ。」
「えっと・・・、立て直しってたとえば何をすればいいのかしら?」
隆康はその方法について、アンに耳打ちすると、アンはびっくりしてこの小さな少年の顔をマジマジと見るのであった。
成敗後は道端に野郎共をほっぽって、新たな魔法を発動。そして、打開策を示します。